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血肉

 サーフィンの体験をしてみる。波に揺らされ、ぶつかり、立つこともままならず、自然を前に、非力さを身につまさられる。いっしょにいった人は割とコツを掴めてきているようで、それもまた悔しい。人一倍不器用で、逆境に弱く、好奇心だけで、何も身についていないような自分。いっちょまえなこんがり日焼けだけ指摘される。

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 歳を重ねると、体が思うように動かなくなる。30代の自分ですらそれを実感するが、高齢になればなおさらである。目が霞み、耳が聞こえなくなり、歩くのも一苦労の彼ら彼女らの中にも、リハビリや、体を動かすことに意欲的な人も一定数いる。逆境も、好奇心も、乗りこなしてこその、動物であると、皺に埋もれた笑顔や、腰の曲がった背中が語っている。

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 病気をもっていると、心が思うように動かなくなる。健康を知るほどそれを実感するが、常態化するとそれに気づかない。仕事がままならなくなり、生活に張りがなくなり、生きるのも一苦労な彼ら彼女らの中では、意味や限界を考えて苦しくなる。後進も、無力感も、抱えてこその、人生であると、優しすぎる笑顔や、怯えたようなような視線に語れるようになりたい。

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 誤って車のフロントをこする。躁状態で使ったクレジットカードの請求にびびる。同居人と折り合いが合わず、退去することになる。辛苦の中、打開のための行動が、何もかも裏目にでているようで、それもまた悔しい。転職に悩み、貯金のなさに困窮し、友人と楽しく笑った帰りに泣き、将来に憂い、生きる喜びを見出させずにいる自分。いつかは、失敗も、絶望感も、歩みを強くする肉になると、誰かを支える骨になると、笑って語れるようになるために、いっちょまえに鼻息だけ荒くする。

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