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登らない

森も山も好きなのだけど、
若い頃に熱中した武道で腰を傷めて以来は
椅子に2時間、も飛行機も下り坂も
低反発のマットもジョギングも避けて生きている。
慣れればさして不都合はない。

いや、椅子は困るか。忘れてただけだった。
映画もモゾモゾした。だから後ろの壁際。
耐久時間ギリギリです。
そんな訳で座らないで済む職業を選んだ。
重い商品を扱わない、販売員とは。

整形外科、惣菜屋、眼鏡、腕時計、アクセサリー、
靴修理、自転車店、ビジネスホテルフロント、
カフェ、蕎麦屋、あと何やったかな。
飲食とサービス業、大きな商品(自転車)は
体力面がキツかった。

現在、小さなスーパー。
大まかな分担がなく色々やらされる。
結果ビールをミネラルウォーターを陳列もする。
ヨイショ、どころじゃない。どるぁあになる。
バナナの箱入り、卵ケースもダメージ半端ではない。
話が違うよと当初思った。

が 今は亡き祖父母の食料品店を思い出す。
卵やら豆腐やらオロナミンCやら。と駄菓子。
洗剤にハエ叩き、主に水回り系の生活雑貨も少々。
入り口には郷愁掻き立てるアイスの入ったケース。
レトロなデザインで何とかアイス、と書かれてるやつ
天井には大きなプロペラが回り風を送ってくる。
奥がレジのある居間になってて
人が来たチャイムが鳴るとハイハーイと
九州特有の呑気さで祖母が引き戸を開ける。
店の土間に犬がいた時も
猿や九官鳥が居間のカゴにいた時もある。
視線を向けると食器洗いスポンジが下がってたり
ゴチャゴチャと狭い空間を埋め尽くす。

今と同じオロナミンCの茶瓶に
小さな畑で育てた花々を差していて
それが何と何個もあり
蝶の蛹が付いてたこともある。
あら可哀想だほっといてやって。祖母の返事だ。

祖父は養蜂もやっていた。近所に人気だった。
木酢も売ってた。
バス停前の小屋の中に本棚を作って貸本屋を始めたり
家の風呂場のタイルも貼ったという。
口数少ないタイプだけど、色んな事をする人だった。
道路拡張の工事が入るまでは
祖母と何十人も宿泊する旅館を営んでいたから、
敷地縮小に伴う商店運営などお茶の子だったらしい。
養蜂技術を広める指導も行った。
戦争の時代の食糧難を冷え切った無感情で生き抜き
裕福でもなかった祖父母を非常に尊敬している。


弁当パンを陳列するのは好きだ。
同じ角度に揃え整列させる。
客が崩し抜き去っていく。また均して餌を仕掛ける。
下から新しいのを取ってく人もいる。
袋なら膨らみを持たせ偏りを均して均して、
一番上のこれで構わないやを誘う。
廃棄する商品を袋の中に見るのは悲しい。
廃棄品は会社のもの。
怪しい弄り方をすればクビになる。
視線のピントを合わせない様にしてる。

肉や魚の日はあまり好きではない、が嫌いでもない。
野菜果物はもっと退屈だ。作業に面白みがない。
この辺は、嫌でも買うからだろうか。
弁当パンあたりは選ぶ楽しさがある。
綺麗に並べると取り上げてみたくなる。多分それ。

荷下ろしでそこそこ体力はついたので
再び体を傷めないうちに卒業したいが、
弁当屋にも行ってみた。
パソコン教室へも潜入してみた。
が、他の仕事を面白いと感じない。

もう諦めて有休使って
好きな小石拾いでも行こうと思ってる。

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