ダンス・イン・ザ・ファーム(中村明珍)【書評#140】

もともとバンドマンだった著者が周防大島に移住し、そこでの経験や思考をまとめた本。

著者の中村さんはある特定の仕事をしているわけではない。僧侶をしたり農家をしたり、ラジオパーソナリティをしたり、フェスを開催したり、島の施設の当直をしたり……。中村さん自身、親や知人から職業を聴かれても上手く答えれられないらしい。こう生き方も選択肢の一つとしてある社会はとても豊かだ。中村さんは現在の百姓だと思う。何か一つの職業をしなければならないと思っている方はこのような生き方もあることをまずは知ってもらいたい。

田舎はスローライフとも言われ、穏やかな生活があるイメージがある。しかし、本の中では断水や島の子どもの行方不明事件、コロナ禍などさまざまな困難が中村さんに迫ってくる。この話はフィクションではないので、全てが万事解決することはない。中村さんがいろいろな出来事に悩み、そして明快な解決がなされないまま日々を過ごしていく。特段特別なことはないがそれが「生活をする」ということだろう。

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