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【見えないものを探す旅(安田登)】うえこーの書評#98

 ワキが演ずる旅人が道中にシテが演ずるっ様々なこの世ならざる者との対話が進められる。能楽の基本的なフォーマットだ。

 著者自身、ワキ方の能楽者として活動する中、旅の途中で様々な思いが出てくるらしく、それらをまとめたのがこのエッセイ集である。

 当たり前ながら著者は現代の人である。しかし、彼の旅は能の時代の旅ではないかという気がしてくる。そこには、見えないものを感じとる心が存在する。

ただのトンボや蝶だと思うこともできるし、平家と源氏とみることもできる。むろん後者の方が人生は楽しいし、それこそが能の旅だと私は思う。
 古典を読む人や、謡を知り、能をよく観ている人ならば、私と同じことに気づく素地はすでにある。あとはゆったりと古事に思いを馳せるだけでいい。
 旅はその姿を変えるはずだ。(p.23)

 同じ風景でもその地に関する知識があるかないかで見え方は大きく変わる。私も気づけるような人間になりたい。

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