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【インフレーション宇宙論(佐藤勝彦)】うえこーの書評#86

宇宙論に関する一般書はたくさん読んできて大概のことは知っている状態だが、毎度知らないことも少しあるので、読んでいて面白い。

インフレーションなしのビッグバンにはモノポールができてしますという問題があるらしい。しかし、インフレーションを採用するとその問題は解決される。

 モノポールについて考えると、実は宇宙のはじまりには実際に、多くのモノポールができていたと考えてもよいのです。そこへインフレーションが起きて、たとえばモノポールを含むわずかな空間が1000億光年の彼方に押しやられたとします。すると、1000億光年の彼方には、確かにモノポールは存在することになるます。しかし、そんな場所と、われわれの知る宇宙には、確かにモノポールは存在することになります。しかし、そんな場所と、われわれの知る宇宙には、直接の因果関係がありません。(...)つまり、存在はしているても観測できないという矛盾が解決されます。(p.65)

また、佐藤勝彦さんの人間原理に関する考えが述べてある。おそらくこれはほとんどの物理学者に共通する考えだろう。(細谷曉夫さんも『数理科学』の記事で一般的な「人間原理」には否定的な意見だった。)

私は、究極の物理法則ができたとき、その方程式の中には数値はないはずだと思っています。そして、究極の理論がない現段階において、人間原理を認めるようなことは言うのは時期尚早ではないかと思います。ちょっとした物理定数を、何でも人間原理で説明しようとすることは、科学の研究を放棄することにもつながりかねません。(p.182)

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