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【ゾウの時間 ネズミの時間(本川達雄)】うえこーの書評#80

  この本は、中公新書の中で最も売れたものの一つだろう。以前から読もうと思っていたが、今回やっと読むことができた。

 物理専攻者として、相対性理論の帰結である、時間が絶対的なものではなく相対的なものであるというのは常識だ。しかし、生物学の研究でも時間というのは相対的なものであるらしい。

 生物か感じる時間は体重の1/4乗に比例する。つまりサイズが大きくなればなるほど感じる時間は増え、小さいほど時間は短い。しかし、一生のうちで心臓が心拍する回数は約5億回で一定らしい。それと、心拍が細胞の代謝などにも関わることから、体のリズムはそれぞれ異なっていても寿命は体感としては全ての生物で変わらない可能性がある。セミやカブトムシなど寿命が短い動物はどうしてもかわいそうに思ってしまうが、実際は人間が平均寿命まで生きたくらいの感覚を持っているのかもしれない。

 ほかにも、生物のサイズという観点から様々な考察が続く。その考察があまりにも物理学者のそれで、(実際、レイノルズ数や流体の法則など物理学の考えが散見される)私の想像していた生物学の研究とは違ったが、馴染みのある論理構成で読みやすかった。

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