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この金融政策が日本経済を救う(高橋洋一)【書評#161】

財政政策より金融政策の方が大事だということがこの本で述べられている。

高橋洋一さんの考えは、アベノミクスの異次元の金融緩和前の前から一貫している。実際、アベノミクスによって株価が上昇し、失業率も低下したので金融政策の重要性はたしかなようだ。

高橋洋一さんは数学科出身でもあり、文章が論理的でわかりやすい。

 結論からいいますと、現在日本を含む世界中の先進国が採用している変動相場制のもとでは、公共投資や減税などの財政政策は効きません。なぜなら、赤字国債の発行による公共投資→長期金利の上昇→円高→輸出減少・輸入増加という形で、公共投資の効果が、海外に流出してしまうからです。 p.10

 そもそも金融政策の目的が何かといえば、これはもう本当に単純で、物価を安定させることです。別の言い方をすると、インフレにも、デフレにも、ならないようにするわけですね。 p.16

変動為替相場制のもとでは、財政政策よりも金融政策の効果のほうが大きく、理論的には財政政策の効果はないとされています。 これは、一九九九年にノーベル経済学賞を受賞したロバート・マンデルと、ジョン・マーカス•フレミングの「マンデル・フレミング理論」によるもので、公共投資の効果が輸出減少・輸入増加という形で海外に流出してしまうというのがその理由です。(...) ただし、財政政策が効果を発揮するケースもあります。それには、十分に金融緩和がなされているという条件があります。つまり、ちゃんと金融政策が機能していれば、財政政策も意味をもつわけです。この理由を簡単に説明すれば、財政政策により生じた円高を金融政策によって円安にして打ち消すことが可能だからです。 pp.32-33

 (一九二九年の世界)大恐慌は、ルーズベルト大統領(当時)のニューディール政策によるダム建設などの大規模公共投資や、究極の公共支出である戦争によって、ようやく脱出できた、と高校で習った人もいるでしょう。 しかし、歴史教科書はどんどん書きかえられつつあります。最近の大恐慌研究は、大恐慌からの脱出は、金融政策がカギであったことを明らかにしています。近いうちに、大恐慌の記述は、完全に書きかえられるでしょう。 p.44

(バーナンキの「大恐慌論文集」によれば、)世界大恐慌は金本位制によって発生し、伝播したと書かれていました。さらに、こうした世界大恐慌と金本位制の本質的かつ密接な関係は、米国学会では論争が終了し、すでに研究者間で共有されている標準的な理解になっていたこともわかったのです。 pp.49-50

それを知らない日本が金融政策をおざなりにした。

 現在の金融政策は、国民生活の向上のために使うということで、理論付けられています。その一つは、「最適金融政策」です。ちょっと難しい言い方になりますが、最適金融政策とは、経済に発生するショックに対して、経済厚生(国民の満足度)を最大化する政策を表しています(いいかえれば、経済厚生の損失を最小化する政策、となります)。 この経済厚生の最大化とは、理論的には代表的な個人の効用関数(満足の度合いを定量的に表すための数学モデル)を考えて、それを最大化させる、ということです。 p.62

名目金利がゼロでも、金融政策でインフレにすれば、実質金利がマイナスになって、不況から脱出できるというものです。つまり、流動性の罠に陥り、もう名目金利が引き下げられなくても、マネーの量的拡大をすれば「いつかはインフレになる」と民間が予想します。それを利用することで、需要を創出することができるわけです。 p.70

 モノの価格とマネーの関係は単純です。 世の中のモノが増えればその価格が下がり、逆に、世の中のマネーが増えればその価値は下がります(モノの価格が上がります)。 これは、ワルラスの法則として知られています。世の中全体でみると、貨幣部門と非貨幣部門(消費財、資産、労働)は均衡していますが、貨幣部門が超過供給になれば、非貨幣部門はその分だけ超過需要になるわけです。 p.110

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