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小説を書く時の変な習慣

 小説を書く時、作中の舞台を予め決めてから書くことが多いのだけど、いざ執筆に入る前に、その話の舞台となる場所の映像をYouTubeで見る習慣がある。

 一時間程度の街歩きの動画を見て、その地の雰囲気を画面越しに感じて、作品のインスピレーションを高めていく。

 この作業を経ることで、登場人物がどんな町でどんなふうに生活しているのかを、立体的に捉えることができる。

 曖昧でぼやけていた町のイメージがくっきりと浮かび上がり、それが物語を考えるのに大きく貢献してくれるのだ。

 街歩きの動画は、まるで実際に自分が歩いているみたいに、色々な情報をリアルにもたらしてくれる。
 通りにはどんな人が歩いていて、どんな店が建っていて、交通量はどれくらいで……とか。
 もちろん、匂いは分からないが。

 そういったことを常に観察しながら見ているわけではないけど、このような文字では想像しづらい視覚的な情報が、物語を想像するヒントとなっているのだと思う。確実に。

 実際、先月に投稿したニューヨークの私立探偵の話は、執筆に入る前に、マンハッタンを一時間程度歩く動画をYouTubeで視聴し、作品の参考にしている。

 ストーリー的には、私立探偵である主人公が、ある行方不明者を探すために、雨が降る午後の街に繰り出すというもの。

 これを書くためには、行ったことのないニューヨークの街の映像を視聴することは不可欠だと思った。
 なので自分は作中と同じ時間帯、同じ天候のマンハッタンを歩く動画を観たわけだけど、この段階を省略していたら、作品は完成しなかっただろうと思う。

 そして作品の風景描写に必要な、詳細な情報がありありと得ることができた。
 例えば、クラクションが常時鳴り響いていることとか、ニューヨーカーは意外と傘をさす人が多いこととか(勝手にアメリカ人はあまり傘をささないものという偏見を持っていた)。

 それからこの作業は、読書をする時にも役立ってくれる。

 以前から続編を待ち望んでいた、ある好きなミステリー小説のシリーズがあるのだけど、その作品の舞台は八王子で、自分は八王子という街が具体的にどんな街なのか知らなかった。

 だからYouTubeで八王子を歩く動画を何本か見た上で、読書を始めることにした。
 せっかく好きな作品なのだから、この手順を踏まないと、もったいないと思ったのだ。
 実際、その作品は八王子の街を歩くシーンが多く描かれていて、読んでいる最中に情景を鮮明にイメージすることができたので、この作業はかなり有意義だったと実感することになる。

 普段は、読書でここまでのことをすることはあまりない。
 多分、その作品をより理解したい、体感したいという気持ちが強く働いて、そのような結果に行き着いたのだろう。
 それだけ、その作品が持つパワーが強かった。
 ただあくまでも、この作業は基本的に小説を書く時に適用されるわけだけど。

 そして作品の舞台となる街歩きの動画を見ることは、作品作りに行き詰まった時の、有効な打開策の一つになるかもしれない。

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