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「週刊少年キング」(少年画報社)の発行部数と休刊の理由ー最後の編集長のインタビューより

「サンデー」(小学館)と「マガジン」(講談社)が日本で「初めての少年向け週刊誌」として創刊したのが、1959(昭和34)年3月17日。

2誌に次いで創刊したのは、「ジャンプ」(集英社)でも「チャンピオン」(秋田書店)でもありません。

少年画報社の「キング」です。

創刊は1963(昭和38)年7月8日でした。

休刊は1982(昭和57)年4月。

「キング」の発行部数と休刊の理由について書いていきます。

「週刊少年キング」の発行部数は約60万部

「キング」の発行部数は、正式には発表されていません。

部数を知ろうと思ったら、少年画報社の社員から聞くしかありません。

別冊宝島288「70年代マンガ大百科」に、「キング」最後の編集長の戸田利吉郎さんのインタビューが載っています。

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1996(平成8)年に発売した本ですが、Amazonのマーケットプレイスで古本が購入できます。私は500円ほどで手に入れました。

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戸田編集長の証言は、「部数好き」の私には興味津々です!

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「チャンピオン」との競争について語っている場面で、両誌の部数について言及しています。

「74年頃、両誌の部数は45万部くらいで拮抗していました」

翌75年に、両誌が最高の発行部数となります。

「(チャンピオンが)いちばんいったのが220万部。たしか瞬間的に「ジャンプ」を抜きました。(中略)(キングは)60万部にあと一歩という感じ。」

「チャンピオン」も発行部数を公表していませんが、この時期に250万部を発行したと、いろいろな媒体で書かれています。

「チャンピオン」の現在の発行部数については、こちらをご参考ください。

とまれ、「キング」の最高部数は、1975年の「60万部にあと一歩」ということが、編集長の言葉からわかりました。

「60万部にあと一歩」を支えたヒット作

これだけの部数が売れるには、もちろんヒット作があります。

小池一夫さんや「タッチ」(小学館)のあだち充さんが週刊誌に初登場するなど、「キング」デビューの有名作家もでてきます。

ここでは、「キング」の代表的な連載作品をピックアップします。

望月三起也さんの「ワイルド7」は10年続きました!

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梶原一騎さんと永島慎二さんのコンビで大ヒットした「柔道一直線」も「キング」の作品です!

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ちなみに、「柔道一直線」は全8巻がAmazonのKindle Unlimitedで無料で読めます!

↓ ↓ ↓ 無料で読みたい方は、こちらの記事をご覧ください ↓ ↓ ↓

もうひとつあげると、梶原一騎×辻なおきコンビの「ジャイアント台風」です。

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「ジャイアント台風」も全12巻がKindle Unlimitedで無料で読めます。上記の記事をご覧ください。

休刊の理由

令和の現在も刊行が続いて50周年を超えた「チャンピオン」と、20年もたずに休刊となった「キング」。

60万部ちかくまでいった雑誌の部数が急落するのは、あっという間でした。

それは、編集長の交代による誌面の刷新が理由です。

60万部で好調な雑誌の編集長を交代した、少年画報社の経営陣の想いが「別冊宝島」書かれています。

「経営者感覚としては『2年前まで同じ部数だったライバル誌が、今では常時180万部になっているのに、どうしてうちのは増えないんだ? その差は何なんだ!?」

経営者としては、「チャンピオン」と同じぐらい売れないとおかしい、編集方針が悪いのだ、と思ったのでしょう。

私も出版社にいたのでわかりますが、編集長が変わると、誌面はまったく別のものになります。

漫画雑誌の編集長が変わると、連載作品を一新させます。

人気作品以外は連載を止め、新しい作品の連載をスタートするのです。

ただそれが、「キング」の場合は極端だったようです。

「それまで雑誌を60万部近くまで持ってきたマンガを、片っ端から全部切ったんですね。とにかく終わらせた。終えたけれども、次の用意が充分にできていたわけではなくて、(後略)」

全部切ってもいいのです。ただ条件があり、新しい連載作品に読者がついてくるならです。

「キング」はどうだったのか… 

「なんとか作品を集めなければということで、とくに青年誌で描いている方をドンドンいれたわけです。だから読者がいちばんまごついたと思いますよ。」

まごついたのは読者だけではありませんでした。社内もです。

「同じ社内の僕らが見てても、『どうなっちゃうんだろう?』という感じでしたから」

この結果、一年間で20万部ぐらい落ちたのです。

もちろん、ここから立て直しを図ります。

新連載にヒット作が続きます!

1977(昭和52)年には、アニメ化にもなった松本零士さんの「銀河鉄道999」。

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漫画家のバイブルと言われる、藤子不二雄Aさんの「まんが道」などです。

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これらのヒット作で単行本(コミックス)では儲かっていたといいます。

ただ「キング」の発行部数は22万部ほどまで落ち込み、雑誌単体では赤字でした。

「週刊誌を維持していくのに、発行部数30万部でギリギリだったのかな? 普通の週刊誌だと20万部あれば保てると思いますけど、少年誌の場合どうしても値段が安いわりにページ数が多いですから、大変なんですよ。」

「キング」の休刊の理由は、部数が減ったことによる赤字です。

1963(昭和38)年7月に創刊し、19年目の1982(昭和57)年4月に休刊となりました。

まとめ

2021(令和3)年の現在、当時とは出版社の収支計算の方法も変わっていますが、30万部を割っている週刊少年漫画誌もあります。

日本雑誌協会が公表している発行部数です(2021年4~6月)。

「週刊少年サンデー」小学館   196,667部
「週刊少年マガジン」講談社      518,333部
「週刊少年ジャンプ」集英社   1,404,167部

「サンデー」以外はまだまだ安泰だな、とは思わないでください。

三誌の10年前の部数です(2011年4~6月)。

「週刊少年サンデー」小学館   605,000部
「週刊少年マガジン」講談社   1,491,500部
「週刊少年ジャンプ」集英社   2,825,000部

サンデーはこの10年間で-68%、マガジンは-65%、ジャンプも-51%。

10年間で、部数が半減しているのです…


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