見出し画像

動画の台本を信じろ②

ここは動画の台本の墓場......ゆっくり解説動画の台本を供養します。試合を見たり動画見たりするの面が倒くさい人はここで文字を見て何となく試合内容を想像してみてください。

【サウサンプトン対ニューカッスルの台本】

皆さん、こんにちは。
上原力也を信じろです。

    
今日はプレミアリーグ第8節、サウサンプトンフットボールクラブ対ニューカッスルユナイテッドの、試合後レビューをしていきます。
この試合の見どころは、
「ポジショナルプレーにおけるオーバーロード戦術」と
「現代におけるファイブバックの生存戦略」でございました。
本動画では
・フォーメーションの紹介
・サウサンプトンの戦術から学ぶ「ポジショナルプレーにおけるオーバーロード戦略」
・ニューカッスルの戦術から学ぶ「現代におけるファイブバックの生存戦略」
・まとめ
の四本だてでお送りいたします。


・フォーメーションの紹介

サウサンプトンは4422。
インサイドハーフを配置する形の442で後述する戦術のためのフォーメーションとなっていました。
ニューカッスルは532。カウンター狙いのシステムでした。
どちらも非保持の守備戦術に特徴のあるチームなので、どちらが主導権を持つのか?という部分が興味深いものでしたが、
ニューカッスルがサウサンプトンンの戦術を「拒否する」ことで試合はサウサンプトンが保持し、ニューカッスルが引いて守る、というものになりました。

それでは、本題のそれぞれの戦術について話していきましょう。


・サウサンプトンの戦術

図2

サウサンプトンの戦術は非保持時に特徴があります。それは
「可能な限りサイドへボールを誘導し、ボールサイドで密集してボールを奪取する」というものです。
このオーバーロード戦術では、ボールサイドのサイドバックが高い位置まで上がり、
最終ラインはスライドして3バック化します。出しどころをなくした相手チームにロングボールを蹴らせ、
最終ラインで跳ね返してセカンドボールを回収、その後ショートカウンターをするか、作り出したアイソレーションを使って前進するかを選択します。
J2では栃木がこの戦術を採用していますね。

最初のゴールシーンなどは奪いきってショートカウンター、アダムスのミドルシュートがきっかけとなってという形でしたし、
81分のアームストロングのスーパーなゴールも、セカンドボールに強いからこそ実現したものです。

フォーメーションでインサイドハーフを置く理由は、中央やハーフスペースへのコースを切り、サイドへ誘導するという目的を遂行するためのものとなっています。
チーム全体でスライドし、密集し、広がるという独特のトランジションがある中で、ポジショナルプレーの原則である「数的優位性」と「位置的優位性」を守り、
レーンかぶりなどで渋滞せずに密集できていました。巷では「人海戦術は時代遅れ」との声もありますが、秩序と目的のあるオーバーロードは効果的です。
それをこの試合では学べると思います。

この戦術の対策はきっちりあって、それは必然的に空く逆サイドの空間を自由に使われてしまう、という点です。
お互いに密集してアイソレーション勝負をする、将棋の角換わり腰掛銀の先後同型のような試合になりがちです。
アイソレーション勝負という点では、今季は我らがスパーズが大勝していますね。
他にも対策はあるのですが、ミラーマッチに持ち込めただけで「作戦勝ち」といえるのではないかな、と信じろは思います。

密集し狭いエリアでプレーする時間が長い特性上、サウサンプトンは試合中ダイレクトプレーにこだわっていました。
速攻は41分、遅攻は55分40秒あたりが代表例で、ダイレクトプレーを最大限生かしてニューカッスルのブロックを崩していたので、
ダイレクトプレーはサウサンプトンのチーム哲学の一つなのではないかなと、信じろは思います。
ニューカッスル側が保持することを拒否した中で、きちんとした哲学をもってビルドアップをし、サウサンプトンらしい遅い攻めができていたのは「流石」の一言でした。


・ニューカッスルの戦術

図3

図4

フォーメーションから察せられるように、ニューカッスルはカウンターを企図した守備戦術をとっていました。
しかし、ただ低く構えて待つだけでなく、きちんとした「生存戦略」がそこにはありました。
・待機時はトリプルボランチで中央のコースを絞り、サイドバックにはウイングバックが強くいく。
・バックパスをスイッチとして、中盤と前線の選手5人で出しどころを塞ぐプレッシングをする。その時は5人の最終ラインでリスク管理をする。
・数少ない前線でのボール保持時はウイングバックも含めて相手陣内に人数をかける。
・狙いどころのスペースを繰り返し狙う。
といった規律がきちんと整備されていたようにおもいます。

システムの都合上、ネガティブトランジションで無理をせねばならず、
前線と中盤がプレッシングをするときは大きなスペースを与えてしまうので、そこをサウサンプトンに突かれており明確な欠点だったなと思います。
しかし空間を与えるという点以上に五人の「壁」は非常に硬く、また、攻撃面でも人数を割いて厚みのあるものを繰り返しおこなっていました。
バランスの悪さという欠点を補うだけの「局面整備」がニューカッスルにはできていました。

この試合は2対0でサウサンプトンの勝利に終わりました。

結果以上に「現代フットボールで必要なものとはなにか」について学べる試合だったと思います。

図5


それは、フォーメーション、選手の個性から作られる戦術を土台に
・局面の整備化
・目的の共有
・対応力の向上
という三つの柱によって「ゲームモデル」を作っているのをサウサンプトンは試合の中で見せてくれたんじゃないかなと、信じろは思います。

最新だの、古いだのといった、戦術の表面をなぞっただけの議論は、これから先どんどん「古いもの」となっていくことでしょう。


ご視聴、ありがとうございました。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?