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「クララとお日さま」英語版

カズオイシグロの「クララとお日さま」
舞台は近未来。ティーンエージャーの友達用のAIクララが、彼女を選んだ、病気がちのジョジーのために奮闘する、という「心温まる」お話。
いつものカズオイシグロの文章は「高雅な美文」その文章の美しさは、英語に堪能ではないわたしですらうっとりするくらいなのですが、そのぶん、文章は難解で、いつも読むのには本当に苦労します。
しかし、「クララとお日さま」はシンプルで平易な英語。主人公はティーンエージャーだし、この小説でカズオイシグロは、イギリスが誇る文芸ジャンル「ヤングアダルト向け小説」(ローティーン向けの小説)に挑戦したのか?と思いました。
遺伝子組み換えで優秀化する上流階級と、武装してコミュニティーを作る下層階級、といった分断された社会背景をさらりと置きながら、そこは深入りせず、そんな社会の中で、AIのクララが一番純粋で素朴で心優しい、そのことを通して、どんどん進化していく社会の中での「人間とは何か」について、さりげなく力みなく問いかけています。
ヤングアダルト向け小説としてはスピード感なくてまったりしすぎている気がするけど、イギリスの成熟したミドルティーンにはこれが受けるのかなぁ、と思いました。
ほとんどなにも起こらない小説なので、大人が読んだ方がその「優しい価値」がわかるかもしれませんね。
ぜひ。

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