伊藤詩織さんの『ブラックボックス』に登場する捜査員A氏の行動何が問題か

伊藤詩織さんの裁判ウォッチクラスターに、またまた興味深く、衝撃的なニュースが飛び込んできました。この裁判を一躍有名にした「山口敬之氏への逮捕状握り潰し事件」の真相かも知れない_そんな投稿です。

所轄署である高輪警察署の刑事が暴走して出た逮捕状だった?法令を無視して、詩織さんに忖度した捜査だった?

捜査に属人性なし。

これから紹介する下記ツィートは年頭に国民の多くが非難した元黒川検事長の定年延長問題に対する、山尾志桜里衆議院議員が国会で発した名演説です。Twitterでも見ることができます。

この場合、「検察」を「警察」に入れ替えるとわかりやすいと思います。

伊藤詩織さんの告発本『ブラックボックス』では、A氏は捜査の担当を外されても詩織さんに連絡してきます。(以下、ブラックボックスをBB、捜査員A氏をA刑事と表記します)私的に連絡してくるのが問題なんです。

A刑事の私的連絡

もしも詩織さんに伝えたいことがあっても、担当が変わったのなら、新しく担当になった刑事に情報を引き継ぐのが慣例で、A刑事は個人的行動をとったことになります。つまり、山口敬之氏に対する捜査に私情が介入したととっても良いと思います。

三枝玄太郎氏の告発は、その疑惑をさらに高めるものになってきました。(しかし、詩織さんを擁護している名だたるジャーナリストたちは『BB』の内容になんの疑義も持たないのでしょうか?これも謎の1つです)

詩織さんの性被害の訴えをA刑事は盛んに「証拠がない」ことで逮捕を渋っています。(ここも時系列がわかりにくい)しかし何故か唐突に逮捕に踏み切りろうとします。そこで刑事部長から止められるのです。

もしも、逮捕の構成要件である十分な証拠が揃わずに勢いで逮捕してしまったら、人権問題になります。

警察官に不当逮捕されたら国家賠償法に基づき、国(東京都)に損害賠償請求することができます。逆に訴えた犯人を警察がまともに捜査せず逮捕してもらえない場合もできます。

国家賠償法とは

第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
○2 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

警視庁の警察官、刑事は東京都の職員ですから、公務員です。なので不当逮捕事件は国賠(国家賠償)事件になります。司法の場に、司法警察員が法廷に引きずり出され、審判を受けるのです。これはかなり恥ずかしい。事件を担当した刑事らはもう出世の道は閉ざされますし、下手すれば依願退職の道が待っています。

国賠は原告が負けるケースが多いと聞きます。裁判官も公務員ですから、何らかの忖度があるのかもしれませんが、勝ったケースもあります。

「誤認逮捕、国と県に賠償命令 捜査」下野新聞

真相は組織防衛だった?

刑事部長が逮捕を止めさせたのは、所轄の刑事を守るためであって、政権への忖度ではなかったかもしれませんし、十分な証拠無くして詩織さんの証言だけで逮捕してしまうことへの山口氏の人権に配慮したことであったのかもしれません。

三枝氏のいう通り、高輪署の暴走で証拠不十分なまま、逮捕状が執行されたのであれば、警視庁刑事部長であった中村格氏が警察組織を守るために逮捕を中止した可能性を考慮してこの事件の全体像を見た方が良いでしょう。

つまり詩織さんの告訴が不当なものであった可能性です。

控訴審(続審)で山口氏側はA刑事を証人に呼びたい、としているようです。私が傍聴したケースではないですが、警察官が民事裁判で証人として出廷することはあります。

警察幹部が組織防衛のために山口氏の逮捕を見送り、現場の刑事を庇うために内部事情を明らかにしていないのであれば、『BB』で「性被害であったのに逮捕状を握り潰された」と主張して世に名を馳せる事に成功した詩織さんは警察の沈黙を政治利用したことになります。

今や伊藤詩織さんの影響力は世界に波及しています。A刑事はその起点である「山口敬之氏の逮捕に踏み切った(が、未遂となった)」ことの事実経過を良心に沿って包み隠さず証言していただきたいものです。その責任、義務があります。

『犯罪捜査規範』とは何か

『犯罪捜査規範』とは、警察官が犯罪を捜査するときの心構えのようなもので、法的な拘束力はないものの、誠実に遵守することが求められます。

三枝氏のツィートを事実と前提とすると、そこには『犯罪捜査規範』を守らず、捜査に私情を介入させて、詩織さんの願望の走狗になっていた刑事たちの姿が浮かび上がります。

(『犯罪捜査規範』=適切な捜査の為のお手本帳、ガイドブック、ハンドブックと言えば分りやすいかと思われますが、少しカジュアルすぎる比喩かもしれません)

より引用

引用⑴【この規則の目的】
第一条 この規則は、警察官が犯罪の捜査を行うに当つて守るべき心構え、捜査の方法、手続その他捜査に関し必要な事項を定めることを目的とする。
引用⑵【捜査の基本】
第二条 捜査は、事案の真相を明らかにして事件を解決するとの強固な信念をもつて迅速適確に行わなければならない。
2 捜査を行うに当つては、個人の基本的人権を尊重し、かつ、公正誠実に捜査の権限を行使しなければならない。

引用⑶【法令等の厳守】
第三条 捜査を行うに当たつては、警察法(昭和二十九年法律第百六十二号)、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号。以下「刑訴法」という。)その他の法令及び規則を厳守し、個人の自由及び権利を不当に侵害することのないように注意しなければならない。

引用⑷【合理捜査】
第四条 捜査を行うに当たつては、証拠によつて事案を明らかにしなければならない。
2 捜査を行うに当たつては、先入観にとらわれず根拠に基づかない推測を排除し被疑者その他の関係者の供述を過信することなく基礎的捜査を徹底し、物的証拠を始めとするあらゆる証拠の発見収集に努めるとともに、鑑識施設及び資料を十分に活用して、捜査を合理的に進めるようにしなければならない。
引用⑸【告訴事件および告発事件の捜査】
第六十七条 告訴または告発があつた事件については、特にすみやかに捜査を行うように努めるとともに、次に掲げる事項に注意しなければならない。
一 ぶ告、中傷を目的とする虚偽または著しい誇張によるものでないかどうか。
二 当該事件の犯罪事実以外の犯罪がないかどうか。

A刑事は『犯罪捜査規範』を遵守したのか

引用(4)の合理捜査の規範で守るべきものとして「先入観にとらわれず根拠に基づかない推測を排除し被疑者その他の関係者の供述を過信することなく基礎的捜査を徹底」とあります。

「この人好きだから、あいつ逮捕しちゃえ」「あの人気に入らないから、手練手管で警察に逮捕させよう」なんて世の中になったら困ります。「隣人とトラブルになって相手が悪いのに運悪く警官が隣人と知り合いなのでこっちが逮捕された」こんな世の中どう思います?

引用(5)の1は、ぶ告、中傷を目的とする虚偽または著しい誇張によるものでないかどうか、に注意して捜査を進めよ、と言うことなのですが、A刑事、これにも背いた事になります。(ぶ告とは嘘の被害で相手に損害を与えるために告訴する行為を言う。)

三枝氏のツィートはまさに引用(5)のケースが当てはまりますね。あくまでもそれが事実であれば、の場合ですが。まさに、山口氏は伊藤詩織さんを虚偽告訴罪で訴えています。

すると三枝氏の告発は真相に近いのでは...

高輪署犯罪捜査の落ち度は

A刑事らの捜査手法は犯罪捜査規範から外れた私情で動き、証拠不十分で出るはずのない逮捕状が出てしまった。(あり得ない話ですが)それを察知した警視庁の上層部が逮捕中止を発動した。のであれば、これは高輪署の落ち度でありましょう。

『BB』を読み返しますと、詩織さんの訴える被害事実を裏付ける証拠はあまりにも少ない。事件当夜、詩織さんが自ら飲んでいたという飲食店従業員の証言もあり、山口氏が最初から犯意を持って詩織さんと飲食して事件を起こしたとは考えにくい側面もあります。

三枝氏曰く「あれ事件じゃないし」

もしも犯罪事実がなく、個人の私的制裁行為が山口氏への甚大な社会的制裁に繋がっているケースとなると、もはや山口氏の名誉回復は回収・収拾がつかなくなっており、推定無罪、民事は個人の紛争解決であるのに、刑事事件である性被害の加害者扱いしてきたマスコミの大反省と謝罪は前代未聞の規模になるのではないでしょうか。

キーマンA刑事

逮捕容疑について今、A刑事は何を思っているか。「犯罪捜査規範」を守って捜査しましたかと聞かれて「いいえ」と答えたら、『BB』の詩織さんの訴えた性被害の真実相当性が一気に瓦解します。A刑事らは詩織さんに操られていたのか?

今、詩織さんの活動には支援金が集められています。『BB』も「真実はここにある」と帯がつけられています。今も売れ続けています。

証人尋問の実現が強く望まれます。

(了)


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