見出し画像

自分との関わりの中で考えを深める NO4

本シリーズでは、道徳科の授業で子どもが「自分との関わりの中で考えてくれない」「いつも他人事になってしまっている」という悩みが少しでも解消される方法を紹介していきます。
前回号、「自分との関わりで考えを深める発問①」について投稿させて頂きました。合わせてお読みいただけると幸いです↓

子どもの真意を引き出す問い返し

 前回号では、自分との関わりで考えさせる際に、すべきでない発問と、効果的な発問について投稿させて頂きました。
 今回は、教師の発問に対して子どもが答えた後の問い返しについて述べていきます。

(1)教科書教材の構造

多くの道徳科の教科書は、主人公が最初は失敗してしまうが、何かをきっかけで変容し、お話の最後には心を入れ替えて成功するというストーリーになっています。
つまり、主人公の変容が描かれているのです。
例えば・・・
①公園で遊んでいた主人公が、隣の家のガラスを割り逃げてしまう。しかし、最後はきちんと謝ることができる。

②親切しようか迷っていたが、ある人の行動を見て、「やっぱり親切っていいな」と思い、次からは積極的に行動する。

③最初は異なる考えの他者を憎らしく思っていたが、最後は考え方を変え接することで、互いの関係性が良くなった。  など

多くの教材の内容が、前半と後半の主人公の変容(または、周りの他者の変容)が描かれているのである。

そして、多くの教材の場合、変容後に道徳的価値(よさ)が含まれています。
*中心発問が、後半部分になるのもそれが要因の一つである。

(2)子どもの本音

教師は、教材に描かれている後半の価値(よさ)に気づかせたいと願っています。
だからこそ、中心発問で「主人公は、どうして親切をできたんだろう」や「最初はできなかったことができるようになったんだろう」と尋ね、ねらいとする価値に迫ろうとしてしまいます。
ここで、もう一度、自分自身に問いかけて欲しいことがあります。
それは・・・

子どもの本音を引き出せているか?

子どもは教師から「どうしてできるようになったんだろう」と問われると、建前上「親切をすると相手のためになるし、自分も気持ちいから」や「最初はめんどくさいと思っていたけど、それが前向きになった」と答えるでしょう。
しかし、その言葉は子どもが価値を理解し、本音で答えた言葉でしょうか。
もしかしたら、「それが理想な答えだから」「先生はその答えを望んでいるから」と無意識に表面的な言葉を並べているだけかもしれません。

(3)主人公の迷っている気持ちを問い返す

では、どうしたらいいのでしょう。
私は、主人公が変容する直前の迷いや葛藤を問うことが、子どもの共感を強め、自分との関わりで考えを深めるポイントだと考えています。
例えば・・・

【教材「絵葉書と切手」(規則の尊重)の場合】
教師:なぜ、最後のお母さんは黙っているのだろう。
子ども:怒っているんだと思う。
子ども:自分の子どもが横入りをしたから怒ったと思う。

一旦、お母さんの気持ちを考えさせる。
そして、次のように問う。

教師:でも横入りしたい気持ちはわかるよね。
教師:もし、主人公が一番にバスに乗ることができたら、どんないいことがありますか。
子ども:自分もお母さんも席に座れる。
子ども:楽ができる。
子ども:だから、一番に乗った方が得をする。

上記のように、子どもの本音が出てくるのです。
*子どもの世界では、「早い者勝ち」「早い人が得をする」という文化が根付いていることを理解しておかなければなりません。
そうすれば、主人公の行為に共感することができます。
その上で、ねらいとする価値に迫るために中心発問で次のように問うのです。

教師:楽や得よりも、お母さんがしたかったことは何でしょう。
子ども:バスに乗る人のみんなのことを考えること
子ども:みんなが「早い者勝ち」をするとケガをしてしまうから、安全を大切にしたかった。

このように、ただ単に、理想とする行為だけに共感させるのではなく、「どうしよう」「迷う」と葛藤する心情や、「わかっていてもできない」という人間理解を表出させることで、それを乗り越えた深い価値に自分との関わりで考えを深めることができるのだと思います。

*私のnoteでは、2週間に一度、「道徳科の授業づくり」について書いております。興味のある方はフォローして頂けると幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?