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相続揉めはなぜ起きる?〜家督相続と現民法

 相続が発生した場合、家族で争いになる「争族」の話をよく聞かれると思います。相続の現場に長年いて痛切に感じるのは、現在の親世代(80代〜90代)とその子世代(40代〜50代)の権利意識の差が余りにも大きいのが相続揉めの要因なのかなと強く感じます。

 家督を継ぐ嫡男、嫡子が全てを相続する戦前の家制度を重視する旧民法の世界と違い、現代の民法は平等の権利が原則だと感じます。

ただし未だ現状、親世代はその親また祖父母の代からの教えが染み込まれ、財産(「家」制度の継承を含む)は嫡子が引き継ぐのが当然との考えが強いのです。これは親世代が影響を受けたその祖父母や父母が明治から大正の生まれで、家制度の存続の考え方にどっぷりと影響を受けているからです。

何代も悠久の河の流れの様に綿々と続いてきた家制度の意識

 小さい頃、母親が家を訪ねた来客に私の事を紹介する時「この子が惣領の長男の〇〇です。」と言っているのを当時は意味が良くわかりませんでした。が、その言葉に鮮明な記憶があります。(惣領という言葉は今じゃ殆ど聞かれなくなりましたね。跡継ぎの事です。しかもうちは分家なのに)

 ですので遺言の作成のサポートをしているときに財産の相続配分をお聞きすると、お父さん、お母さんたちは当たり前のように「そんなの全部、長男に決まっている。嫁にくれた(⁈)長女や二女にはあげなくていい!」などと平然とおっしゃる方が少なくありません。

ところが相続する側の子供たちは小学生の頃より平等意識、権利意識を学校🏫教育で叩き込まれています。男女の差別、国籍や人種の違いで人の権利に差はない差別はあってはならない(当たり前ですよね)との意識です。

ただし家族や子供の役割によって財産の配分に差があってもいいと個人的には感じます。例えば事業を承継するお子さんや親の介護を献身的した子供さんに対して、手厚く相続させるお気持ちは十二分に理解できます。

立場や役割はそれぞれ違いますよね

こういったご家族の父母が、遺言書を残さず、子供たちでの遺産分割協議となると大変なケースが生じる事があります。平等の権利意識が強い声の大きい子供さんがいると混乱を極めてしまう事も。必要な事業財産や不動産が、跡継ぎに渡るのが滞る事態も。
財産の分割は平等では無く(その役割に応じた)公平さを重視すべきではないかと感じます。

このようなケースが想定される親御さんは、やはり親の気持ちを遺言書として遺すのが望ましいのではと実感しております。


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