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[読書] 水平思考の世界

「枯れた技術の水平思考」という言葉がある。任天堂でファミコン以前のおもちゃや、ゲームウォッチ、ゲームボーイなどの開発をリードした故・横井軍平さんの言葉だ。「枯れた技術」= 広く使われメリット・デメリットが広くしられた技術を、視点をずらし全く違う用途で使いあたらしい製品を生み出すという意味だ。
例えば、電卓の普及で進化した液晶や半導体の技術を利用して、電卓とは全く違う手持ちのゲーム機(ゲームウォッチ)を作ったことなどだ。
以降、任天堂は最新技術ではなく、すでに広まった技術を使いファミコン、ゲームボーイ、NintendoDSなどヒット商品を生み出す。それらの製品にはもっと高性能のライバル機種がいたのにも関わらず圧倒的な成功を果たした。

長年「枯れた技術の水平思考」という言葉をずっと知っていながら、思考法である「水平思考」をちゃんと学んでなかったので読むことにしました。

垂直思考

水平思考と真逆に当たるのが垂直思考。視点をずらさずに同じ場所で深く掘り続けること。もちろん大切な思考法の一つ。それに対し水平思考は、同じ場所ではなく全く新しい場所でやり直すことだ。
垂直思考が物事を改善するのに対し、水平思考は時に大発見をもたらすことがある。例えばアインシュタインは実験をまったくせずに、既存の情報をあたらしい方法でまとめ相対性理論を作り上げた。
垂直思考は「~が不可欠だ」と考えることが多いので発想という点では限界があるが、水平思考は自由にアイディアを考えることができる。

支配的なアイディア

水平思考を考える上で、垂直思考以外に知っておかなければいけないことが「支配的なアイディア」だ。
垂直思考であれ、水平思考であれ、一つのアイディアの重要性が増すと周りのアイディアをくみ取って巨大化することがある。そうすればそのアイディアに対しそれに従うか背くかの二極化につながる。そうすればそのアイディアは新しいものはでなくなってしまう。

水平思考の原則

水平思考の原則は以下のようになる

1.支配的アイディアを認識すること
2.さまざまなものの見方を探し求めること
 ・言葉や名前がつくと見方が固定される
 ・視覚的イメージでものを考える
3.垂直思考の強い支配から抜け出すこと
 ・垂直思考は新しいアイディアを積極的に妨げるもの
 ・垂直思考は物事を分類しつづける → 分類され記号化され硬直化されたものは新しいアイディアの妨害になる
 ・新しいアイディアは論理的に矛盾しているように見える
4.偶然の機会を活用すること
 ・ 遊びの重要性
 ・気になるものはなんでも試してみる
 ・セレンディピティ
    ・何か探しているときに、偶然になにか別の有益なものを見つけてしまうこと
 ・いつでも偶然を活かせる状態にすること

1.支配的アイディアを認識する

先ほどの通り、影響下にいてはいけないということ。

2.さまざまなものの見方を探し求めること
3.垂直思考の強い支配から抜け出すこと

言葉や名前を付けると見方が固定するというのはなるほどと思いました。いろいろな思考法はむしろ名前をつけたり記号化して分類し続けるもの。しかし記号化せずに視覚で考えるということは難しい(本書では簡単なトレーニングの章がある)。

本書ではないが、将棋の藤井聡太棋士が頭の中に将棋盤がないと語っていたことを思い出した。囲碁でも将棋でも頭の中に盤をもち、頭の中でシミュレーションしながら考えるものだと思ったが、多くの棋士とは違い藤井棋士はそう考えていないそうだ。頭のなかの盤というのは一見視覚のイメージだが実は言葉と同じで記号なのかもしれない。と、すると藤井棋士は彼にしか分からない視覚的なイメージで勝負の進行を読んでるのかも、、、。これは僕の想像だけど、本書の内容と近いかもしれないと思いました。

新しいアイディアは論理的に矛盾してみえる。というのもそうだと感じました。だから多くの新しいアイディアは他の論理的な考えにつぶされてしまうのだろう。

4.偶然の機会を活用すること

これも凄い考え方だと思いました。偶然を活用することを思考法の中で組み込んでいるなんであまりきかない。

これも本書ではないけど、グノーシアというゲームの開発者のインタビューを読んだとき。物語のイベントをつくるとき、それに関わる登場人物をあえてサイコロで決めるという話がありました。

普通はこのキャラクターとこのキャラクターでかけあいをすると書きやすいんだけれど、そういう安牌を狙わずに、サイコロによるランダム性を利用して、ランダムなキャラクター同士だとどうなるんだという流れで、意外性を生み出す。

これも偶然を活用した水平思考的な発想だったようです。

あんまり大声では言えないですが、仕事でもプロジェクトを組むときに参加メンバーの一人か二人をくじで決めてもいいかもしないと思いました。

また、以下も重要
 ・ ~が不可欠という考えをすてる
 ・ それまでに得た成果のすべてを捨て去る

その他

他には垂直思考は詐欺に活用されるというのも面白かった。

高い確実性 = 慣れ(経験)によってもたらされ、その動機によって修正される一つの思考経路を著しく簡略化したもの

と、いう法則があります。

詐欺は動機を修正することにより人を操作するそうです。たとえば「必ず儲かるはずだ」という動機があれば、思考経路を詐欺師の思う方向に操作する。など

他にもいろいろ考えてもみなかったような考え方がありました。
ロジカルシンキングは上手くやるには向いていますが、イノベーション的な新しい発想が必要なときは、水平思考で考えてみるのも良いかもしれません。


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