はっと

 明日死ぬなら何をしますか。
 食べたかったあれを食べる？
 行きたかったあそこへ行く？
 会いたかったあの人に会う？
 出来なかったあれやこれをする
 明日一日じゃ短すぎる？

 じゃあ一週間後に死ぬなら？
 二種間後でもいい。一ヶ月後でも。
 ある程度、まとまった時間があるとして。
 そしたら、何をする？

 私は気付いてしまった。私は、そうなったらたぶん、特に何もしない。いつも通りに過ごす。私が死んでも世界は続いていくし遺された者には生活がある。だったら私のためにお金を使いたくない。それに何より。何より。私は今、十二分に幸せだ。私の生活水準では贅沢は出来ない。食べた事のないような高いお肉は食べられない。ブランド品を買い漁れない。絶景を見て贅の限りを尽くしたホテルに泊まれない。お金が余るほどあれば出来ることが出来ない。だけど私は、そんなことに興味がない。贅沢をして。至福の時間は無限じゃない。死ぬまで遊べるほどの金があっても死ぬ。自分が死ななくてもたぶん周りは死ぬ。周りが死ななくても変化していく。欲求なんか尽きない。尽きないなら、最初から抱かない方がいい

 それより私は、有る幸せに目を向けたい。家族が欲しかった。私の、家族が。それは手に入れた。もう欲しいものはない。読みたい漫画。遊びたいゲーム。食べたいお菓子。そこそこある。だけどそれは日々の中で完結していく。したいことは何かと聞かれても出てこないはずだ。だってもう、満足している

 今日ふとした瞬間に気付いた。こんな簡単なことに気付かなかった。たぶん、気付いていた。気付いていたけど、人から問われるから答えを見つけようと躍起になっていた。出るわけがない

 明日私が死ぬとして。私は今日を繰り返す。私は今の、何気ない生活がとても好きだ。幸せだ