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ユニクロでかわいいお姉さんに告白されそうになった。


あたいはよくユニクロに行く。

あたいの服の7割くらいをユニクロが占めている。

それくらいよく行く。


これは2年くらい前の出来事。

その日も近所のコンビニへ行くような感覚でふらっとユニクロへ入った。


あ、このデニム、気になってたやつだ!


自分のサイズを手に取り、試着してみる。


お、いい感じじゃん。


うん、めっちゃいい!


かっけぇ!


サイズもキツすぎず緩すぎず、履き心地もすごく良い!



これは買いだわ。


あまりにあたいの理想を超えてきたため、購入を即決。

ボトムスのシルエットにはあたいなりの理想があるし、ぴったりなサイズに出会うのも、良い履き心地のものに出会うのも結構難しい。

こんなに早く決まることはなかなか無いから嬉しかった。


あたいはいいものに出会った嬉しさを隠しきれないまま試着室を出て、他の商品も見て回った。

多分、にやにやしていたと思う。


スウェットね…ほしいけど、あんまり似合わないんだよな。

あ、Tシャツ。いや、この前買った。

靴下…靴下はいいや。いっぱい持ってる。

へー、こんなバッグ売ってるんだ…。


色んなことを頭の中で口にしながら、店内をぐるっと一周した。

デニム以外に欲しいものはなかった。

よし、一通り見たしそろそろお会計しよう。


あたいはデニムが一本だけ入ったカゴを持ってレジへ向かった。


かわいいお姉さんが担当してくれた。


おそらくヨーロッパの血が混ざっているであろう、美しいお姉さんだった。


小柄で、ポニーテールで、とてもかわいらしい人だった。


「こちら1点で、3990円になります。」



「あ、はい。」


お姉さんに見惚れながら、5000円札を出す。


「お願いします。」


「5000円、お預かり致します。」



「5000円のお預かりでしたので、1010円のお返しと、こちらレシートでございます。」


あたいは1010円とレシートを財布にしまう。


「少々お待ちください。」


財布にお金をしまいおわり手持ち無沙汰になったあたいをみて、お姉さんは手早く、でも丁寧に、デニムを畳んでいく。


ぱたん。


ぱたん。


そこで、お姉さんの手が止まった。


どうしたんだろう。


あたいが「???」となっていると、


お姉さんの顔がみるみる赤くなっていく。


え?なに?

どうした?

あ、お会計ミスった?

いや、でも合ってるよな…。



すると、お姉さんが口を開いた。



「あ、あの…」



「はい。」



お姉さんは何やら恥ずかしそうにもじもじしている。



え?なんなの??


急に。


さっきまで普通にレジしてたじゃない。


「…なんですか?」


そう聞いてみても、お姉さんはまだ何か言うのを躊躇っている。

口をぱくぱくしている。

どうしたもんか。

早く言ってほしい。

なんだ?

…連絡先交換したいとか?

あ、連絡先交換したいんだ!

いやそんなことかよ、早く言えよ〜。

参っちゃうなぁ。

お姉さんシフト何時まで?

ははっ、ついにあたいにもモテ期到来か〜。

死にたくなったとき死ななくてよかった〜。

やっぱり生きてりゃいいこともあるもんだね。


「あ、あの…!」



お、なんだい?



「あの、えっと…」



うん。



「…………




…チャック開いてます…。」



は。



え。



あ。



開いてる。



チャック、開いてる。



なんと、あたいは試着室を出た時からずっとズボンのチャックが開いたままだったのだ。


しっかり開いてた。


それはそれは開いてた。


開いてるけどパンツは見えてない、みたいなのじゃなくて、


開いてるしパンツも見えてた。



「え!!すいません…!!」


急いでチャックを上げるあたい。


赤面するお姉さん。


この恥ずかしさたるや…。


連絡先交換したいわけなかった。


こんなチャック全開のやつと、


連絡先交換したいわけなかった。


チャック全開でにやにやしながらユニクロ内をジロジロ舐めるように見て回るやつと、



連絡先交換したいわけなかった。


こんなことなら、死にたくなったとき死んどいたほうがよかったかなぁ。


「お待たせ致しました。こちら、商品でございます…。」


お姉さんは赤面しながらあたいに商品を渡し、


あたいも赤面しながらお姉さんから商品を受けとった。


お姉さん、言いづらかっただろうに教えてくれてありがとう。

他のお客さんに聞こえないように小声で言ってくれてありがとう。

あぁ、お姉さんにかっこ悪いところを見られてしまった。

ていうか試着室出てからずっと開いてたってことは、多分色んな人に見られたよな…。

いやでも、お姉さんのおかげでこれ以上たくさんの人に見られずに済んだ。


あたいは恥ずかしさと情けなさとお姉さんへの感謝の気持ちと、

「お姉さんかわいいな、あたいと連絡先交換したいのかな?」

なんてアホみたいに考えていた自分の滑稽さで、

思い切りパニックになっていた。


お姉さんから商品を受け取るとき、

「ああ、あの、あの!!ありがとうございました?!?!?!」

とバカデカボイスで伝えた。


お姉さんは恥ずかしそうにぺこりと会釈し、

「ありがとうございましたー。」

と言った。



お姉さん、きっとあたいのことを思って伝えてくれたんだよね。


ありがとう。


でも、もう二度とこの店舗にくることはないと思います。


今までお世話になりました。


本当にありがとう。


そして、「このお姉さん、あたいと連絡先交換したいのかな?!」とか、とんだ勘違いをしてしまって、本当にすみませんでした。

場をわきまえます。



チャックは開けたら閉める。

チャックは、開けたら、閉める。


そう心の中で唱えながら、あたいは店をあとにした。



みなさまも試着室を出る際は、忘れずにチャックのご確認を。

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