【書評】サステナブル資本主義

流行のSDGsや日本人の所得向上策について書いてあるとのことで飛びついて読んでみました。

サステナブル資本主義

本全体の感触は、研究者、外資金融、スタートアップ投資家としての筆者のキャリア感が良く出ていて、海外から見た日本という視点と、資本主義の成り立ちからその欠点を補ってサステナブルな未来への指針を示す良本。

個人的に気になったのは以下のような点でした。

1、資本主義の成り立ちから見る現在地

昔欧米圏に旅行すると年配の人たちが別荘持って優雅に暮らしててあれは何なんだろうと思って聞いてみると、株だよとか投資だよとか答えが返ってきて(まるで金持ち父さんのよう)、投資とはすごいな、働かなくてもいいのか、と純粋に思ったことがあります。(残念ながらその後の人生は働き尽くしですが…。)

本書では改めて、なぜ資本家が裕福になり、労働者と格差が拡がるのかについて、簡単に整理されていてわかりやすかったです。

資本主義の成り立ちとして、事業家、労働者、資本家の順に出てきた。
事業家は事業の拡大のために労働者を雇う必要があり、そのニーズに応えるべく資本家が現れた。
資本家による資本は、金融市場において、将来の価値を含めて価値づけを行うバリュエーションや、企業の合併・合理化によって価値を高めることができる。
一方、金融市場で高まった会社の価値は、労働者には還元されず、資本家にしか還元されないため、労働者と資本家の格差が延々と拡がっていく。

2、バランスシートに乗らない地球の資産

筆者によれば、これまでの資本主義では、バランスシートに乗ってこない地球上の自然や天然資源を過剰に利用し、なおかつ短期的な利益獲得を目指してきた結果、いわゆる「地球に優しくない」状況が生じているという(公共経済学における外部不経済が生じている)。

このため、地球を守るためには、地球に優しくない資本主義的活動を止める必要があり、消費者一人一人が地球に優しい企業を選ぶことが必要だという。

3、消費者が選ぶ資本主義

(1)本書では、『投資家マインドを持った消費者』と名付けられていますが、

要は、上で述べたように、消費者が賢く企業を選択し、資本主義を望ましい方向に持っていくことが大事であり、

消費者による選択が「5%」あれば、世の中を変えるには十分だという。

アーリーアダプターという言葉があるように、最初にとりあえず買ってみる、とりあえずサービスを始めてみる、といったマインドは市場を変えるのに確かに重要だと思います。

(2)また本書では、最後に日本政府への提言が記載されています。

日本政府に今や求められているのは資金よりも、消費者のマインドを変えるビジョンの提示であり、アメリカや中国のようなトップダウンの体制を持たないにせよ、日本もしっかりと政府がコミットすることは大切だと思います。

また、何事もやってみようの精神が大事なので、たまには石橋が壊れるまで議論するのではなく、多少のリスクは承知で、規制緩和を進めることも大切ではないでしょうか。

4、最後に

本書は資本主義の欠点についてわかりやすく書いてあり、また、多少くどい程度までに、消費者の選択の重要性を説いています。

普段、安かろう便利かろうでつい手を伸ばしてしまっている食品、製品、サービスを実際に買うときに、一瞬立ち止まって、自らの『選択』が自分の心に正直かどうか考えてみるのも良いかもしれません。

本当の価値は『お金』にあるのではなく、『自分らしさ』にあると思うから。

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