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ワクチン接種率が高い国ではCOVID-19の死者が減るのか?

新型コロナウイルスワクチンの期待される効果

新型コロナウイルスワクチンの期待される効果は、厚生労働省のサイトでは、以下の通り記載されています。主な期待される効果は「発症予防」「重症化予防」ということです。

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出典:https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0011.html

ちなみに、感染そのものを予防する効果については「実証が難しい」、集団免疫効果については「大規模な接種後まで分からない」とし、すぐに期待できる効果としては主張されていません。

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出典:https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000680224.pdf

以上、ワクチンの期待される効果を確認する目的で記載しました。期待できることは、発症予防と重症化予防(入院・死亡)ということですので、ワクチン接種が進んだ国・地域ではCOVID-19による死者は減少すると予想されます。これを実際のデータで検証していくことにします。

ワクチン接種が進んだ国では死者は減っているのか?

Johns Hopkins Universityのサイトには、国・地域別のワクチン接種率のデータがあります。ここから、ワクチン完全接種済の人口に対する割合(%)を横軸に、過去7日間の人口100万人あたりのCOVID-19による死者数を縦軸にとってグラフにプロットします。

ワクチン完全接種済の人口に対する割合(%)が最も高い25カ国と最も低い25カ国を比較することにします。(対応する死者数のデータがない国・地域は省略しました)この2つのグループに分けた理由は、このグループ間で顕著な差が現れるのではないかと考えたからです。(他に有効なグルーピングができるかは継続して考えます。)

データにアクセスしたのが、8月3日(太平洋時間)です。そのため、過去7日間とは、国によっては1-2日程度ずれがある可能性がありますが、7/28-8/3のデータとなります。過去7日間のデータのみ抽出した理由は、ワクチン導入前や最新ではない死者の影響を除くためです。

データソースは以下です。
ワクチン接種率:Johns Hopkins University https://coronavirus.jhu.edu/vaccines/international#race-to-vaccine-world
人口100万人あたりのCOVID-19による死者数:Worldometer https://www.worldometers.info/coronavirus/#main_table

本分析はかなり粗く、個々の国の固有の状況を考慮していない、ワクチン導入の時期がばらばらなデータを一緒に扱っている、ワクチンの種類を考慮していないなどの欠点もあります。しかし、このようなざっくりした分析により全体像が見えることを期待しています。

結果は以下の通りとなりました。

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グラフ上の直線は、線形近似を行ったときの回帰曲線で、R2は相関係数です。相関係数が1に近いほど相関が強いという意味ですが、R2=0.0091であり、「ほとんど相関がない」という結果になりました。本来は、接種率が高いほど死者が減るので、右下がりの直線となることを期待していましたが、実際は、回帰曲線の傾きがわずかに負の値となったものの、接種率が高いほど死者が低くなるという相関も見いだせません。

どちらのグループも100万人あたりの死者は10人以下となっています。しかし、接種率が最も高い25の国・地域には、死者が飛び抜けて高い「チリ」「セイシェル」というアウトライアーが存在します。両国ともワクチン接種率65-70%程度で、過去1週間のCOVID-19の死者が群を抜いて上がっています。ワクチンの接種率を高めれば死者が減るということはどう見ても主張するのは難しいと考えます。ワクチンが重症化予防という期待された効果を果たしていないということです。

ちなみに、以下のグラフではワクチン完全接種済の人口に対する割合(%)を横軸に、過去7日間の人口100万人あたりのCOVID-19陽性者数を縦軸にとりました。もともとワクチンに感染予防効果は期待していないのであくまで参考となりますが、接種率が高い国ほど陽性者数が多いという結果となりました。このときの相関係数は0.29で「弱い相関」となります。

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どのように説明すればよいのか?

上記からは、接種率が高まっても特段死者が減るわけではなく、陽性者に至ってはむしろ増える傾向があると言えます。説明を考えてみました。

まず、接種率が最も低い国はアフリカ・中東・アジアの途上国が多いです。データの精度が悪いか、収集されていないのではないかとも思いましたが、Johns Hopkins Universityの「COVID-19 Dashboard」でいくつかの国をチェックした限りでは昨年からデータは上がってきており、特段データの不備が確認されませんでした。たとえば、以下はマラウイ共和国のデータの例です。

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出典:https://gisanddata.maps.arcgis.com/apps/dashboards/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6

他に、納得のいく説明は思いつきませんでした。

そのため、仮の結論としては、接種率が最も高い25カ国と最も低い25カ国のデータを見る限り、ワクチン接種率を上げても必ずしも死亡者を減らすことができないと言えます。それでは、ワクチンは本当に接種した方がよいのでしょうか、再考する価値はあるのではないでしょうか。

8/5のニュースでは、WHOは「依然として接種が進んでいない発展途上国への公平供給」「全ての国のワクチン接種率を少なくとも10%に引き上げる」と主張しているようですが、上記で挙げた接種率が低い国々はCOVID-19による死亡率がもともと低く、本当にワクチンが必要かどうかを評価すべきであるという結論になります。

前述の通り、本分析はかなり粗い分析であり、これで全てがわかるとも思えません。しかしワクチンが期待された通りに機能していないことは観察できます。個々の国や地域の事例からわかることも見ていきたいと考えています。




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