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エスカレーターとそれにまつわる特許の話

エスカレーターについての特許を調べてみた!

皆様、私たちの生活の中で特許技術とどれだけ接しているのでしょうか。

日々エスカレーター無しの生活は考えられないほど、今では身近な存在のエスカレーターですが、その一基にどれほどの技術がつまっているのでしょうか?

今回は特許とエスカレーターについての記事になります。


そもそも特許取得ってどうするの?

特許権は特許法に基づき発明を保護するための権利です。
そして特許出願における基礎知識は以下の3点です。

  1. 技術的思想の創作である「発明」が保護の対象。発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち、高度なものをさす。

  2. 権利の対象となる発明の実施(生産、使用、販売など)を独占でき、無断で発明を使用した権利侵害者などの第三者に対して差し止めや損害賠償を請求できる。

  3. 権利期間は、出願から20年。

(特許庁WEBサイトより引用

年間して平均約30万件ほどの発明が特許出願されております。

(経済産業省特許庁 特許行政年次報告書2021年版 第1部第1章 国内外の出願・登録状況と審査・審判の現状より引用

それは今まで誰も開発したことのない発明であり、容易には開発することのできない発明である必要があります。
さらに出願の早い順で受理されていくので、少しでも早く特許庁に申請することが重要になります。

また出願がなされた後に、様式のチェック(方式審査)と、特許審査官による審査(実体審査)が行われ、審査を通過したもの(登録できない理由がなかったもの)のみが特許査定を受けることができます。

なお審査請求をしてから、審査官からの何らかの通知が行われるまでの平均期間は、約10か月となっています。
さらに原則として出願日から1年6ヶ月経過後、出願内容が一般に公開されます。

そして下図の特許出願の流れを見ていただいても分かる通り、様々な行程を経てやっと特許権として世の中に認められるのです。

(日本弁理士会WEBサイトより引用

エスカレーターに関する特許について

特許庁によると、実は世の中にエスカレーターに関する特許が約1200件ほどあり、大体の技術がエスカレーターの開発会社やメンテナンス会社、ベルトなどの部品を提供している会社、清掃会社によるものがほとんどです。

その中で、筆者が面白いと感じたいくつかの特許を紹介いたします。
大まかに、利用者へ安全な条項のための注意喚起、エスカレーターの清掃器具関連、メンテナンスや効率の良い乗降のためのシステムと技術(管理)の3分野に分けてみました。

【注意喚起】

【清掃】

【管理】

ここ数年のエスカレーターに関する特許を調べていると、カメラを活用して利用者を分析し、利用者に対する注意喚起をアナウンスするような内容が多いように感じました。
上の表にもありますように、特に利用者に対する注意喚起のアナウンスをする技術に応用されている傾向にあります。

企業側がこのような発明を行っているという事は、エスカレーター事故が継続的に起きていることの表れかと思いました。

また、エスカレーターは定期的にメンテナンスをしなければなりません。
さらにその作業は手作業で行うため、迅速に効率よく作業を進めていくための新しい検査方法や、掃除のしやすいモップなどの、メンテナンス面での発明も多くありました。

昨今の衛生意識の向上により、手すりの消毒に関する開発も見られました。

ちなみに、特許庁のサイトを調べる中で、最も古いエスカレーターに関する技術は1971年のエスカレーター手すりに関するものでした。

さらに、最も多くエスカレーターに関する発明を出願しているのは、なんと日立グループで413件でした。エスカレーターに関する特許のほぼ3分の1の数になります。
次いで三菱電機グループの257件でした。(2022年5月現在)

利用者の安全のために様々な種類の発明がされていることに驚くと同時に、それぞれの技術者がもっとよい発明はできないかと、日夜研究開発を繰り返していることが垣間見れますね。

特許権に付随する困ったこと

特許庁のサイトを拝見すると、たくさんの技術が並び、その文言も大変複雑なものが多い印象を受けました。
またその特許権の及ぶ範囲については、基本的には文章で表現されており、図は明記されていますがモノクロであるため、どうしてもその線引きがあいまいになってしまいやすいです。

そして、特許における文章上の分かりにくさを逆手に取り、真似をされてしまう可能性はどの特許権についても大いにあり得る話です。

弁理士のように特許権に詳しい方々にお話を聞くと、特許違反として取締るのは非常に困難をきわめるものだと言えます。例えば、1m置きにしるしを表示することが特許であるなら、1.1m置きにすれば特許違反としてはなりづらいのです。

ただこの場合、必ずしも「違反していない」とも言い切れません。

実際特許権により守られている発明の範囲と、誰でも使える発明の範囲の境界があいまいである発明も多くある中で、裁判により特許権で守られている発明について、他人が使っているかどうかを判断してもらう必要があります。

したがって、当事者間で話がまとまらない場合、特許権により守られている発明の範囲に入るか否かは、裁判所の判断にゆだねられるのです。

実はゆうどうマークは特許技術なのです!

さて、特許に関する弊社のお話を少しだけさせいただければと思います。
弊社のゆうどうマークですが、特許を取得していることはご存知でしたか?(特許第4989862号および特許第4989863号)

正しい手順を踏んで、正しく受理され、現在弊社の持つ特許権として存在しています。
特許の概要としては「全長に複数の方向表示マーク(と注意文字や広告)を表面に備えた、エスカレーターの転倒防止用手すりベルト」というもの(※かっこ内は第4989863号)。

「エスカレーターの手すりに乗降時の方向や速度感がわかりやすいゆうどうマークという複数の丸や四角などのしるしを備えたもので、それに加えて広告等をしるしの間にプリントしてもその広告効果は落ちず安全面も担保されるもの」といった内容です。

安全面はもちろんのこと、広告収益に関しても訴求することのできる技術となっております。

UDエスカレーターの思い

私たちは、これからの日本の産業の発展のためにも、世の中で活躍している様々な特許技術や製品が正しい知識で守られ、有効活用されることを願っております。

もちろんそれは「ゆうどうマーク」も一緒であり、日本中のエスカレーターにこのマークが拡大され人々の安全に寄り添っていきたい一心であります。

トーマス・エジソンの残した言葉にこのようなものがあります。

ほとんどすべての人間は、もうこれ以上アイデアを考えるのは不可能だというところまで行きつき、そこでやる気をなくしてしまう。
勝負はそこからだというのに。

何よりも、エスカレーター事故をゼロにするために、弊社も日々検証を繰り返し、様々なアイデアを社会へ発信していく所存です。

最後までお読みいただきありがとうございました。


【参考文献】
経済産業省特許庁特許情報プラットフォーム J-Plat Pat / J-PlatPat [JPP] (inpit.go.jp)

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