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地元企業の人材不足を業務効率化でカバーしたい~糸魚川市の既存産業のDX化をめざした取り組み~

新潟県糸魚川市では、2020年から「糸魚川産業創造プラットフォーム」を立ち上げ、官民連携で企業のネットワークづくりと相互研鑽の場を設けています。

その中で実施しているUdemy Business(以下、Udemy)を取り入れた市内企業のDX化推進、およびDX人材育成に関する取り組みについて、糸魚川市役所の中田さんと、糸魚川商工会議所の猪又さんに詳しく伺いました。

「若手人材の採用が難しい…」糸魚川市の課題と現状

猪又:人口減少は全国各地で課題となっていますが、糸魚川市は特に若い人の人手不足が深刻です。
市内には学校が高校までしかなく、進学すると子どもたちは外に出てしまい、なかなか戻ってきません。

また、産業に占める建設業の割合は全国平均9%のところ、糸魚川市は18%と高いのも特徴の一つです。
製造業も盛んですが、総じて働く場の選択肢が少ないこと、若い人たちが入社したがらない傾向が近年強まっていることが課題です。
人材採用が難しい現状の中で、今いる少ない人員でいかに生産性を上げるかが多くの企業がめざす姿となっています。

「糸魚川産業創造プラットフォーム」の目的

猪又:2020年、糸魚川商工会議所は糸魚川市と連携し、市内企業の発展と交流を目的として「糸魚川産業創造プラットフォーム」を立ち上げました。
「日本一の心地よさ」をコンセプトに掲げ、様々な企業が集まって魅力を引き出し合い、協働する場です。

その中にある「生産性向上研究会」という組織では、市内の企業同士で従業員一人ひとりがどうすれば心地よく働きながら生産性を高められるかを議論し、横展開しています。
人口4万人ほどの小規模な地域だからこそ、市内企業が手を取り合って一つの課題に取り組む団結力があるのが糸魚川市の特徴です。

中田:糸魚川市としては、「雇用・就労環境の整備」と「既存産業の振興」という2つの側面から支援策を展開しています。
雇用・就労環境の整備」の面では、就活フェアの開催やインターンシップの実施、多様な働き方の推進などを実施しています。

そして「既存産業の振興」では、「産業創造プラットフォーム」のバックアップと、新規事業への補助金、そして少子高齢化による人材不足をカバーする様々な施策に取り組んでいます。

企業の垣根を越えて学び合う場を提供

猪又:先ほどもお伝えした通り、糸魚川市の企業はどこも人手不足です。
「生産性向上研究会」では、そういった現状をDXで打破しようとする企業の支援をしています。

「DX化を進めないといけない」と思っている経営者は多いものの、職場に合わない・関係ないと思っていたり、よくわからなくて敬遠していたりする人も多いです。
そういう企業も含めて、多くの方が取り組めるようにしたいと思い、会社のDXの方向性をしっかり導き出す土台の部分から取り組んでいます。

DXを推進するには社内の仕組みづくりが不可欠ですから、DX人材育成を目的にUdemyを活用しています。
研究会は現在8社にご参加いただいていますが、製造・建設・サービス・農業・運輸などの多種多様な企業が共通の課題に向けて学び合っています。

一見、接点のなさそうな業種でも、お互いに見てみると新たな発見・気づき・共通項があります。
そんな企業同士が様々なテーマで話し合うのは、とても面白いですよ。

糸魚川市の企業全体のDX化をめざしてUdemyを導入

中田:コロナ禍で、全国的にデジタル化が進展しました。

糸魚川市もその波に乗り遅れないよう、DXをいち早く取り入れる中小企業を市として支援したいということで、令和3年度の糸魚川市の重点施策事業として、市内企業のDX推進に向けた動きを本格的に開始することになりました。

ちょうど同時期にUdemyの実証研究があることを知り、その内容と市の事業がめざす姿が合致していたので手を挙げたのがきっかけですね。

猪又:そのタイミングでのUdemyとの出会いは、まさに渡りに船でしたね。
DX人材を育てるうえで、専門分野はIT系のコンサルを入れるにしても、組織内での意識づけや体制づくりはやはり必要不可欠です。

そもそもDXって何だろうというところから理解して、「自社だったらこれができる」と考えるきっかけを得られる環境が欲しいと思っていました。
それで中田さんからUdemyについて聞いたとき、「ぜひ協力させてください」と言いました。

中田:「産業創造プラットフォーム」の生産性向上研究会の動きを軸にして、Udemyを市内企業に普及させ、DX人材育成を横展開していきたい。
結果として、糸魚川市全体のDX化の底上げをめざしたいというのがUdemy導入の理由でした。

昨年度は実証研究でしたが、今年度は有償での導入で、すでにお問い合わせもいただいています。
今年度も現場で役立つ学びの場をぜひ提供したいと思います。

経営者のDXに対する意識改革にUdemyが役立っている

中田:昨年度の受講者は、経営者の方が半分を占めていました。
残りは経理などのバックオフィスの社員さんが多かったです。

特にこちらから経営者向けにおすすめしたわけではないのですが、DX推進は経営者の意識改革が必須です。
会社を動かす人たちが旗振り役にならなければ何も進まないと思いますので、受講者に経営者が多かったのは結果として良かったと考えています。

猪又:企業によって課題は様々ですが、そもそもDXとは何なのかを知りたい方から、すでにデジタル化に取り組んでいて「社内システムを効率化したい」と考えて受講している方もいました。

昨年度は2ヶ月間だけの取り組みでしたが、アンケートでは通年を希望する声も聞かれています。
また、これまでの研修は業務時間を圧迫する悩みがあったけれども、Udemyならスキマ時間で学習できる点も大変好評でした。

中田:昨年度の受講者アンケートでは、以下のような声がありました。

・エクセルの関数やショートカットキーで業務効率化が図れた
・伝票・検収・入力作業を簡素化できそう
・顧客情報管理やお客様へのプレゼンテーション能力の向上がはかれそう
・今まで経営に関する情報をグラフ化してこなかったが、今後は会社の現状を見える化したい

かなり実務にお役立ていただいているようで、私たちも大変嬉しく思っています。

糸魚川市の今後のDX推進について

中田:糸魚川市としては、引き続きDXを自社の中で推進する人材を育てるための支援策として、Udemyを活用していきたいと思います。
また、昨年度から実施しているDX推進補助金、自社で取り組むDX化に向けた事業への補助も継続していきたいですね。

昨年度初めてDX推進補助金を実施しましたが、今年度は昨年度より多くの企業から応募をいただいています。
市内でも企業のDX推進の意識が高まっていると感じます。
より多くの方にDX化に取り組んでいただけるよう、今後も施策を拡充していきます。

猪又:DXは世間で注目を集めているものの、本当の意味でDXを実現するには多くのステップが必要です。
スタートのところでしっかりDXを理解し、社内の意識改革を行い、DX化の目的にあわせた組織づくり、デジタライゼーションという流れは、一朝一夕では進みません。

DXはあくまでも手段で、目的ではない。何のためにDXをするのか、現状の課題をまず明らかにし、地に足をつけて一つずつ解決し、着実にステップアップしていく企業をこれからも増やしていきたいと思います。

※こちらの記事は2022年12月に発刊した行政DX通信vol.5に掲載された記事になります。