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「また訪れたい」は「帰りたい」の気持ちと似ているbyミスミアヤカ

短歌を始めて今年で10年。その10年の間、何度も「ああでもないこうでもない」と頭を抱える瞬間がありました。詠みたいテーマ、音、風景…。何を考えてもぴんと来ずに手を止めてしまうことが何度もあります。大好きな音楽を聴いていても尊敬する歌人の著書を手に取っても歌詞や内容があまり入ってきません。スランプというよりも解像度の悪い海をぼんやりと見ているような感覚です。進むこともできず戻ることもしない、ただ時が流れて夜が過ぎるのを待つだけ。詠みたい歌ってなんだろう、なんで詠みたいって思うんだっけ?今にも雨が降り出しそうな暗雲が頭上にかかり、時が経てば経つほどに座り込んでしまいそうになります。

そんな気持ちの時にでも唯一、ここなら行ける、訪れたいと思える場所があります。

小松島市に店を構えるcafe/shop MINATOHEさんです。 MINATOHEのマスターとの出会いのきっかけや珈琲の美味しさを語り始めたらとてもとても長くなりそうなので今回は割愛…。

MINATOHEは私にとって心を自分にとっての正しい位置に戻してくれる場所です。どんなに心がざわついたときも、マスターが珈琲を入れる丁寧な所作を眺めれば心の波は平行を取り戻してくれます。ドリップをする際のコーヒー豆の膨らみを眺めると気持ちのざわつきや不安な感情を少し忘れることができます。もう何度も見ているはずなのに毎回新鮮な気持ちにさせられるのです。

「一歩を踏み出すとあとはスルスルと進んでいけるものよ」。
これはいつの日かマスターからもらった言葉なのですが、何かに迷ったり立ちすくんだりしたときにはいつも思い出しています。家でも職場でもないMINATOHEのことを想うと、「あそこは私の心の帰る場所だな」と改めて思えるのです。

季節の移り変わり。不安定な気候。世間の風向き。それらが私の体と心を不安定にさせて「何も読めない、書けない」と思ってしまう頻度が多かった3月でした。しかし、今回のnoteを書くにあたり「また訪れたい場所」というテーマに決めた時、まっさきにMINATOHEのことが浮かびました。その時からまたことばが浮かび、手を動かすことができました。マスターにこのことを話したら誇らしげに笑ってくれるかなぁと思いながら、コーヒーカップの温もりや柔らかな灯りの記憶を呼びます。

マスターと私の出会いの思い出話は、いつかまた。

ミスミアヤカ

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