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リクルートの財務諸表を勝手に分析してみた。

こんにちは、ゆうだいです。前回のnoteで誰でも財務諸表が読めるようになるためのポイントをお伝えしました。

その中で11個の分析指標をご紹介しました。なので今回はその分析指標を使いながら、実際の財務諸表を分析していきたいなと思います。

分析させてもらう企業は、いま僕が働いているリクルートホールディングス(以下RHD)です。早速これらの指標を使いながら、丸裸にさせてもらいます。笑

まず、収益性を見る3つの指標からです。

(※)左の数字が2016年度・右が2017年度の数字です。

企業のその1年で投下した全資本をどれだけ効率的に運用できたかを見るROA。9%10%という数値になっていますね。目安としておおよそ5%以上であれば優良と言われていますが、あくまでもこの全資本には負債も含まれているので、数値が5%以上だからと言って一概に「良い」とは言い難いということもあります…。

次に、その投下した全資本のうち自己資本での投資効率はどうだったのかを見るROEです。ここはよく株式投資の際や株主が注視する指標でもありますね。見ると19%18%で1%の減少となっています。ROEは当期純利益の値を株主資本の値で割るので、減少したということは前年比の自己資本の増加率よりも当期純利益の増加率の方が低かった、ということになりますね。ちなみにこの指標は10-20%であれば優良と言われています。

そして最後が企業の経常的な利益率を見る経常利益率。企業の実力を測る指標です。これも10%9%で1%の減少。業界にもよりますが10%以上が優良と言われています。

と、いうことで収益性についてはROEと経常利益率が1%と大幅ではありませんが減少していることから、収益性が下がっているということが分かりました。では次の損益分岐点の分析でなぜ収益性が下がっているのか?を紐解いていきます。

まず「売上高=費用」の値を示す損益分岐点売上高(単位:百万円)ですが、約1兆5700億円と1兆7700億円で約2000億円の増加(コスト増)となっています。特にその中でも、上記の表にある通り固定費が約1000億円増加し、変動費率が1%減少していることから、「固定費率の増加」が収益性が下がった要因だと考えられます。

そして、売上高が損益分岐点売上高に対してどれくらいバッファーを持っているかを見る安全余裕率ですが、19%18%となっています。ここは20%以上であれば優良だと言われていますが、上述の通り固定費率の増加により20%に近い数値ではあるものの、下降気味になっているようですね…


ここまでは収益性と損益分岐点といった、RHDの1年間の「利益をあげる」という行為に対する分析をしてきましたが、ここからはRHDの「お財布にあるお金」の状態を安全性分析を通して見ていきたいと思います。

まず企業の短期的(1年以下)な支払い能力を見る、流動比率とそれを補完する当座比率ですが、167%172%:流動比率で145%160%:当座比率となっています。流動比率は基本的に150%以上であれば健全で、当座比率は100%以上であれば健全と言われています。両指標ともその水上はかなり大きく上回っていますね!ですので、例えば数ヶ月単位のプロジェクトなどで弊社とお取引させて頂いているお客様は「RHD(グループ会社含め)はきちんとうちに支払える能力はある。取引してOKだ。」と認識頂いて良いかと思います。

この流動・当座比率、そしてこの後に述べる固定長期適合率では、信用取引の可否を判断するための材料として、与信管理に活用されることになります。では実際に長期的(1年以上)な支払い能力を見る固定長期適合率はどうでしょうか。

見てみると74%72%です。ここは100%以下であれば健全と言われているので、低ければ低いほどその会社の長期的な支払い能力が高いと言えるので、銀行からの長期借入などの際によく見られる指標ですね。RHDは水準より約30%低い数値でかつ、前年比で2%減少していることからも非常に健全であると言えそうですね。

そして次に自己資本比率です。これは返済義務のある負債に比べて、どれだけ返済義務のない自己の資本によって事業を行えているかを見る指標なので、比率が高いほど安全性が高いと言えます。見ると50%53%で総資本の半数近くを自社で保有していることになります。40%以上であれば優良企業(いわゆる倒産しにくい)と言われています。

最後に上記の図には載っていませんが、返済能力を見る負債比率も見ましょう。計算するとこれは2016年度が98%で2017年度が88%という数値でした。100%を下回り、数値が低ければ低いほど返済力は高いので前年比で10%返済力が上がった、と言えますね。すごい。


安全性については、短期も長期も支払い能力は高く、負債の返済力も健全と言えそうですね。日頃ご利用頂いている、またはお取引させて頂いているお客様や借入元の金融機関から見ると、非常に優良企業と言えそうですね(自分で自社のことを言うのもあれですが…)。

最後に生産性です。見てみると4300万円から4800万円となっています。つまり一人当たり500万円ほど生産性を上げていることになりますね。また経営者目線で言うと「従業員」というリソースの効率性が改善できた、とも言えます。ただし、この指標を見る際には業界平均や競合他社と比較することになります。RHDでは対象比較上場企業として、①楽天②Yahoo!Japan③電通④エムスリー(※)をあげています。今回は楽天の従業員1人当たりの売上高を見たところ2017年度が6400万円でした。(ということは、うちと1600万円の差が…汗

(※)楽天含め、上記4社が全く同じ事業領域の競合かと言うと、そうとは言い難い(RHD全社的に競合関係というよりは、各グループ会社が展開する事業領域として競合認知されているというニュアンス)のであくまでも比較対象として参考にするくらいで良いかと個人的には思っています。。決して現実逃避ではなく…笑


改めてここまでをまとめると、

■収益性は比較的水準通りの数値ではある(ROEは高いので株主にとっては魅力であると言えそう)けど、損益分岐点分析から固定費率の増加による収益性の低下が前年比で見られた。

■ただしRHDの支払い能力(短期も長期も)はかなり高いので、お客様や金融機関からの信用度は高いと言ってよい数値である。自己資本比率も比較的い高い中で、事業を行えているので安定性は非常に良いと言える。つまり、お財布の状態はGood

従業員の生産性は前年比で改善されている。ただし収益性が下降気味にあり、買収や採用人数の増加により社員数が増加すればもちろん1人当たりの売上高(生産性)も低下する可能性が大。さらに競合比較をすると、生産性が低いとも言える。


といった感じでしょうか。RHD社は皆さんご存知の通り、数多くのグループ会社から構成されているため、可能であればその各社ごとの数字が見れたら本望なのですが、IR情報の中にもおおまかな数字のみでした…

とはいえ上記のような示唆が事実として確認できたのも意義は大きいはずなので、今後の会社の成長に寄与していきながらも客観的にこうして見ていきたいなと思います!


【参考】

リクルートホールディングス:IR情報

■決算短信

■決算説明資料

#財務諸表分析 #リクルート

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