酒場とコミュニティ 03「地獄谷コミュニティ」
大阪市福島区にある昭和時代のスナック街で、行ったら帰ってこられなくなることから通称が「地獄谷」と呼ばれているエリアがあります。その地獄谷で「地獄谷冥土バー」の店主をしている横田です。
今回、前回と収録しているのはその「地獄谷」と呼ばれるエリアの「地獄谷冥土BAR」というお店からです。
第1回地獄谷音楽祭
山口さんは、冥土BARを設計して地獄谷に関わっていますが、趣味として音楽演奏をしています。一方で地獄谷での有名店「ゆるり」のマスターはカントリーバンドを持ってまして、その2人が中心となって、コロナ前から、地獄谷音楽祭を開催したいと思っていたらしく、コロナは相変わらず猛威を振るっていて5類になっただけなのですが、もうええやろー、ということで、勝手に2人で近隣説明を含め、音楽祭の開催を11月3日で予定をすすめています。
住んでいる方々に配慮して、昼から夕方からの開催にして、アコースティック演奏だけにしたいそうです。そもそもふたりともアコースティックバンドなのですがw。
地獄谷の中心部にちょっとした30㎡くらいの空き空間があるのですが、それを山口さんが勝手に「地獄谷お祭り広場」と呼んでいて、そこにミニステージを作って演奏会をする感じだそうです。私は総合司会を務めることになったようです。
地域と独自イベント
地獄谷のイベントしては、ずっとハロウィンイベントをしていたんですが、コロナで中断していたこともあり、今年も各店舗の独自参加というかたちになりました。単発でイベントを行うのは気合だけでできるのですが、ずっと継続した年中行事にするのは難しいですよね。
ハロウィンイベントも地獄谷全体でのスタンプラリーまではいかないにしても、これまでと同じように仮装したお客様に何かサービスするというのは変わらないんですが、地獄谷のお店が一丸となって楽しめるイベントというものを、毎年確実に行っていくというのはいろんな困難が伴うわけです。
アーケードのある野田新橋筋商店街で繋がっているJR野田側とのコラボも実施したこともありましたが、JR野田側の参加店舗が少なかったこともあり継続はできませんでした。
ただ、JR野田側のお店のひとつイタリアンバールミーオのマスターが地獄谷に「天ぷら渉(わたる)」という新店舗を出されたので、新たに仕切り直しして話ができるかもしれませんね。
一方で野田阪神駅の西側のお店は「裏野田」のポスターがあるように、声を掛ければ参加してくれるのではないかなとも思っています。
地域イベントに仕立てていくには、労力と愛情と熱量とちょっとだけお金が必要です。それだけに、「ゆるり」のマスターと山口さんが「第1回地獄谷音楽祭」と名付けているところに意志と熱量を垣間見ることができます。
地獄谷コミュニティという薄層の連携
コロナは様々なことをイニシャライズする破壊力がありました。お店によって違いがありますが、明らかにコロナで客層が変わった店舗も多いんです。
単になんとなく顔なじみの飲み友達が、なんとなく来なくなったよねー、と言っても、電話番号を交換をしているわけでもなく、どこにお住まいの方か住所も知らないという緩いコミュニティ、薄層の連携ですから、当然といえば当然なんですが、この緩さがまた気持ちいいのかもしれません。そしてそれはうつろいやすいものでもあるわけです。
毎晩、ちょっと一杯地獄谷に飲みに出かけることが習慣づいていた方も、コロナで家飲みをすることに目覚めたと思うんですよね。家でも飲めることもわかったし、お金を使わないとお金が貯まることに気付いたのかもしれません。まぁそういう幸せに気がつくのも人生ですし、この地獄谷コミュニティに参加するのもまた人生だと思っています。
ただそういういろんな形での重層した文化やコミュニティが渾然一体となっているのが、都市の文化の特徴なので、薄層ながら私たちは楽しく連携していきたいと思っています。