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大阪市議会議員定数大幅削減の暴挙

 大阪市議会は9日の本会議で、議員提出議案第15号「大阪市会議員定数及び各選挙区選出数に関する条例の一部を改正する条例案」を可決した。本市会の最大「目玉」であり、多くの人が傍聴に訪れた。市役所前や周辺には、議員定数削減に反対する市民が抗議の声を上げていた。
 大阪維新の会の高見議員が議員定数11削減の趣旨を説明したあと、2人の反対討論が行われた。無所属の武議員は、議員定数削減により多様な市民の声が届きにくくなり、議会のチェック機能も弱まる。定数問題は住民自治や住民参加という「都市内分権」の議論とセットでやるべきだ、と鋭く指摘した。次に共産党の山中議員が反対討論に立ち、議員定数は住民自治を保障する民主主義の根幹だ。二元代表制のもとで、議会は市長をはじめとした執行機関をチェックする役割があり、「身を切る改革」と称して定数を減らせばいいというものではない。これまで議員定数問題は会派間で時間をかけて議論してきたが、今回少数会派は無視され、公の議論もほとんどない。なぜ拙速に定数削減を決定するのか、と厳しく指摘した。
 ただちに起立による採決が行われ、維新・公明・自民などの賛成多数で条例改正案は可決された。傍聴席からは抗議の声が上がった。成立した条例は、市会議員定数が81から70に削減され、北・西淀川・東淀川・東成・生野・旭・城東・住之江・住吉・東住吉・平野の議員数を各1減というものだ。条例附則2で「各選挙区選出数については、令和7年の国勢調査により官報で告示された人口に基づき、所要の見直しを行うものとする」としている。自民が当初の条例案を法令違反だと主張し、維新がそれを附則として取り入れた。それで自民も条例案改正の共同提案者に名をつらねている。
この附則が象徴するように、拙速極まりない議員定数削減である。読売新聞10日朝刊によると、維新は当初7年の国勢調査の結果を踏まえて取り組む方針だった。衆院選が取りざたされる中、「『身を切る改革』をやった方が党に得策」(幹部)とし、今議会での実現に踏み切ったという。まさに大阪市民ではなく、維新のための拙速な定数削減であることを示している。
朝日新聞13日社説も「削減ありきでよいのか」と問題を投げかける。自治体の首長と地方議会は、自治を支える「車の両輪」である。議員定数を一方的に削減するだけでは、そのバランスが崩れ、多様な住民の意思をくみ取り、首長をチェックする議会の機能が衰えかねない。少数派の声が議会に届きにくくなることは見過ごせないと、大阪の議員数削減に警鐘を鳴らす。
傍聴者に配布される「大阪市会」にも、市会と市長は、独立・対等の立場で「車の両輪」のような関係にあり、互いに協力・けん制しあうことで調和と均衡を図りながら、よりよい施設の実現につとめていますと書かれている。これまで以上に、大阪市会が執行機関の「追認機関」になることが懸念される。市議会を厳しくチェックしていきたい。

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