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進化する自治を構想する 07「多様性を否定する大阪府議会」

市民と行政と選挙の距離感

 堀内たかおさんの府議会議員選挙のお話、8回までを聞きました。お話を聞いて痛感するのは、普通の市民が被選挙権という権利を行使することが、つまり、普通の市民が議会に立ち行政をチェックするために議員となることがいかに困難であるか、ということです。
 堀内さんは、カジノの住民投票条例のための署名運動から始まり、カジノ反対の声を集めたその先で、府議会選挙でカジノに反対する候補者がなく、カジノに反対する人にとって受け皿=投票先がないことを知り、立候補締め切りの1週間前に立候補を決めたわけです。彼が言っていたように、カジノに反対することと、議員立候補することの間にはすごい距離感がある、と。これは、堀内さんが実際の選挙活動を通じて、さまざまな苦労をし、選挙戦を闘った実感としての言葉であり、この言葉の重みを感じます。

多様性を求める社会とは真逆の議会構成

 ucoでは「進化する自治を構想する」というテーマで、市民が行政にもっと関与できる範囲や、関与する度合いを深めていくためには、どのようなことが必要か、を考えていこうとしているわけです。地方自治、地方議会は国会とは異なり、生活に密接した問題についての施策や条例について提案がされ、そのことについての是非を議論する場として議会があるわけです。しかしその議会が、国政のように政党間の勢力争いや、駆け引きの場と化し、一般市民が蚊帳の外に置かれている構図ができあがっています。戦前・戦後や昭和の時代は、そういう流れやある種の必然性もあったのかもしれません。しかし、多様性を社会の根幹としようとしている現代において、地方議会が政党政治のような偏った構成でよいわけがありません。
 でも現実は、一市民が議員として当選し、議会に立とうとすると大きな壁がある。地方自治体の中には、多くの市民が立候補し、市民議員が誕生している議会も出始めていますが、まだまだ少数派です。

少数意見を排除する大阪府議会条例

 「堀内たかおの府議会ウォッチ」のタイトル通り、9月21日から大阪府議会の定例会が開催されます。先ほど政党所属の議員ばかりで議会構成が偏っているという話をしましたが、現在の府議会構成は次のとおりです。議会は政党所属ではなく会派によって構成されています。

  • 大阪維新の会大阪府議会議員団  53人

  • 公明党大阪府議会議員団  14人

  • 自由民主党大阪府議会議員団 7人

  • 民主ネット大阪府議会議員団 2人

  • 日本共産党大阪府議会議員団 1人

  • 大阪なにわの和 1人

  • (無所属) 1人

 大阪維新の会が過半数となっており、議会の過半数と知事が同じ政党に所属するという、地方自治体としては、いびつな状態が続いています。国勢とは異なり、地方自治体は二元代表制を取っており、本来知事は政党には所属せず、政党との関係も是々非々であるべき存在です。一方、議員は、行政の提案する施策や条例について、市民生活や自治体の未来にとって良いかどうかをチェックする役割として存在するものです。しかし大阪府では、チェックすべき議員に対し、知事が同じ政党の党首という関係となり、機能停止状態となっています。事実、大阪府の昨年の議案のうち、議会の議決を通さず知事が決定するという、知事の専決処分によるものが8割に上っています。議会に諮っても過半数でもって賛成多数になるので、条例として専決処分できないもの以外は、すべて専決処分で済ませるという、議会軽視の状況をつくっているわけです。
 しかも、大阪府の独自の議会条例として、5人以上の会派でなければ本会議での質問ができないということを決めており、議会内でも、少数意見は聞くこともしない、という状況を作り出しています。現在の議会構成で言えば、大阪維新の会、公明党、自由民主党の議員しか質問権はありません。少数の権利を奪う議会条例そのものが差別的であり、多様性を否定するものです。

 このような現在の府議会について、市民がどのように行政の施策や議会のあり方についてチェックし、そのことを広く知らせることができるのかは大きな課題です。さて、いよいよ議会が始まるわけですが、次回以降、現在の府の行政が抱える課題や議会の課題について、堀内さんとともにアイデアを出しながら、考えていこうと思います。

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