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進化する自治を構想する 16「区150年の歩みから未来を描く」


UCO講座 本渡章の「古地図でたどる大阪の歴史」~「区」150年の歩み

 本渡章さんは、古地図の研究家。2021年に発行された「古地図でたどる大阪24区の履歴書」は、大阪の各区の街歩きのガイドとしても良書であるが、4つの区が誕生した1879年(明治12)から13区、15区、22区と、時代と共に発展する大阪の産業、都市の発展、人々の生活を振り返るきっかけを提供してくれる。各区に残る史跡が、150年にわたる大阪の発展とともにあり、また発展や安泰を望む人々の思いが伝わってくる。
 これまでの講座内容は、特集記事として掲載中
 https://ucosaka.com/category/special/ku150/
 番組のトークでは、2020年が区150年としているが、正確には2019年が区の誕生150年。

 この講座を始めたきっかけは、ucoが大阪の自治のあり方を、市民の視点から考え直してみようというテーマを設定したことと関係している。大阪がどのように発展してきたのか、さまざまな文化圏が各区に根差すことになった始まりであったり、その区のアイデンティティの成り立ちなどを考えるうえで、区の歴史を顧みることは必然でもあったといえる。
 そうしたことから、本渡章さんに講座を担当いただく依頼をし、ucoのスタート時点から連続講座として取り組んでいる。

 区の誕生時、最も発展が見込まれたのが、西区。現在のなし区エリアだけでなく、現在の港区までを含む広大な埋め立て地を有していた。大阪が発展していく上で重要な課題が、外国船を受け入れるための近代港の開設である。1889年(明治22)に大阪市が誕生するが、それ以前からも大型船が入港できる近代港の必要性が説かれているものの、実際に起工するのが、1897年(明治30)。当時の市の年間予算の20数倍という膨大な費用をもって行われ、その竣工は1928年(昭和3)、30年間を費やした大事業であった。港の発達とともに、産業と人口のベクトルは西へと向かい、港区、大正区、此花区の誕生へと繋がっていく。
 この区の発展の流れは、UCO講座「大阪の未来を構想する」の流れと併せて聞くと、大阪が大都市へと発展していく、そのダイナミックな流れがよくわかる。
 これまで、区の誕生から、西区、港区、大正区とたどってきて、次回の講座は此花区を予定している。近年USJ(ユニバーサルスタジオズジャパン)により、多くの観光客を誘客し、現在、国、大阪府市を揺るがしている万博予定地、IRカジノ予定地である夢洲の地元でもある此花区。ここは、大阪における近代重工業の発祥ともいうべき大阪鉄工所跡や、安治川の下を通行する日本初の沈埋トンネルが今も稼働していたりする、大阪の工業の集積地でもあった。そうした現在の此花区を、歴史的視点から過去、現在を繋いで俯瞰してみたい。
 
 今後少子化、人口減少が進む中で、合区の話が出てくると思う。各区の文化的背景や、アイデンティティを含め、どういう合区のあり方がふさわしいのかを考えていく上で、区の成り立ちやその背景をおさらいすることは重要だと考える。
 最初に紹介した本渡氏の書籍のあとがきに、こういう一文がある。
 「本書の第一章で述べた右回りの区の歴史の矢印は、すでに街を一周し、いまは新たな回転軸が生れようとしているところでしょう。それは従来とは違う発想と力で回るのかもしれないと思います。大阪の区の動向には、これからも目が離せません。本書が多くの読者の目に触れ、大阪の行方、さらには都市の未来に思いを巡らす材料にしていただければ何よりうれしいです。」
 まさにこの言葉通り、ucoの本講座も、この思いを同じくし、大阪の未来を新しい発想で、未来に向けたビジョンを描くきっかけとしたい。

UCO講座 本渡章の「古地図でたどる大阪の歴史」~「区」150年の歩み
https://ucosaka.com/category/special/ku150/


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