もしかして、おれのこと好きだったのかも

あなたは映画『佐々木、イン、マイマイン』をご存知だろうか？昨年の暮れ頃から劇場公開されたこの映画は上映館数が少ないにも関わらず、心をグサグサ刺された人々の山が築かれたと言われている青春映画だ。

ちなみに話の内容はこちら。

【ストーリー】
石井悠二は、俳優になるために上京したものの、鳴かず飛ばずの日々を送っていた。 別れた彼女のユキとの同棲生活も未だに続き、彼女との終わりも受け入れられない。
そんなある日、高校の同級生・多田と再会した悠二 は、高校時代に絶対的な存在だった “佐々木”との日々を思い起こす。 常に周りを巻き込みながら、爆発的な生命力で周囲を魅了していく佐々木。だが佐々木の身に降りかかる“ある出来事”をきっかけに、保たれていた友情がしだいに崩れはじめる——。
そして現在。 後輩に誘われ、ある舞台に出演することになった悠二だったが、稽古が進むにつれ、舞台の内容が過去と現在とにリンクし始め、加速していく。
そんな矢先、数年ぶりに佐々木から着信が入る。悠二の脳内に鳴り響いたのは、「佐々木コール」だった。
※公式サイトより転載

映画の内容はお察しのとおり、現状に行き詰まりを感じながら生活している主人公が、佐々木という友人にまつわる高校時代の記憶と現在に触れることで、人生の一歩を踏み出そうとする。という素晴らしい青春映画である。

しかし、私はこの映画の素晴らしさについて語りたいわけではない。むしろそんなことはどうだっていい。佐々木のことなど、もはやどうだっていいのだ。私がとてつもなく関心を寄せているのはただ1つ、あるシーンについてである。それは「クラスの女子が、無言で隣の席の男子から消しゴムを借りる」という場面だ。

諸君、どうか落ち着いてほしい。そして冷静かつ曇りなき眼でこのシーンを観てほしい。この難問に対して向き合うこと自体に大きな傷を伴うこともあるだろう。むしろ答えなんて知りたくないと思う人だっているだろう。しかしながら、地球の青さを見るには宇宙へ飛び出すしかないのだ。だからあえて問おうと思う。女子が消しゴムを借りてくるという行為。果たして、これは脈アリなのか？と。

無論、このような難題を他人にばかり押しつける下劣な私ではない。まずは私が率先して向き合うことで範を示そうと思う。私の学生時代に特定の女子が私の消しゴムをなぜか毎回借りてきたことは、ある。ここで「あるのかよ...」と絶望感を味わった方には大変申し訳ない。だが偽りを良しとしない性分の私だ。ここは素直に「ある」と言わせていただく。

まず、小学生時代のMちゃん。そして中学生時代のYちゃん。もちろん彼女たちとの関係はお付き合いするという高みにまで発展することは全くなかった。でも、もしかしたら、おれのこと好きだったのかも。

そして、この『佐々木、イン、マイマイン』はそんなモヤモヤ気分へのアフターケアもバッチリなのである。なんと消しゴムを借りるのが脈アリだったのかどうかがきちんと描かれているのだ！その光景を観た私の驚きを何と喩えよう。それは一瞬スクリーンがホワイトアウトしたのかと思ったほどだ。ちなみにそのシーンはかなりの終盤なので、是非とも結果はあなた自身の曇りなき眼で確かめてみてほしい。

もしも、そんなのは貴様の自意識過剰が招いた取るに足らぬ妄想だと一笑する人がいたとしよう。それならば私は水滸伝よろしく梁山泊にでも立て篭もり、徹底抗戦も辞さぬ所存だ。

了

映画『佐々木、イン、マイマイン』公式サイト