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『モネと怪盗ルパン』
絵を描いたことがなくても「印象派クロード・モネ」くらいは、みんな知ってると思うな。モネさんは気に入った景色があると、長くそこに滞在して、角度や時刻、季節、つまり光を変えてさまざまな絵を描いています。「ルーアン大聖堂」なんかが好例です。
そしてノルマンディーの「エトルタ(当時は小さな漁村だったらしい)」の奇勝奇岩もそうとう気にいったようで、たくさんの作品があります。
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で、その奇勝奇岩。海に向かって右にアモンの門、左にアヴェルの門(モーパッサンは象の鼻と名づけたらしい)と、めちゃとんがった針岩があります。
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門ってなによ、と思うだろうけど、奥行きのない、薄っぺらなトンネルとでも言うのかな、絵や写真を見てくださいな。
どちらの門も崖の上に歩いて登れます、笑っちゃうくらいカンタンです。そして、真ん中に足元にエトルタのビーチをはさんで(アモンからアヴェルの門/象の鼻を、アヴェルの門/象の鼻からアモンを、というように)互いに見通すことができます。
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アヴェルの門/象の鼻と針岩は微妙な位置関係にあって、アモンの高台からだとアヴェル/象の鼻も針岩も見ることできるけど、針岩はエトルタのビーチからは(アヴェル/象の鼻に近づくにつれて)見えなくなるからおもしろい。
つまりは絵のなかのアヴェルの門/象の鼻と針岩の位置関係を見れば、モネが(それ以外の画家も)エトルタのどこからその絵を描いたか、がわかります。
モネはアモンの門も、アヴェルの門/象の鼻(と針岩ありなし)もいくつも描いているのでなおさら、気になってしかたありません。とうとうホンモノを見たくて出かけてしまいました。
そんなわけで、このような話ができるわけ。
フランスの北海岸ノルマンディー。海の向こうは大英帝国。真っ白に輝く大きく高い崖のつらなりの中に、自然にできたとは思えない、エトルタの不思議な造形。モネが夢中になったのもよくわかります。
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行ってびっくり。なんと怪盗ルパンの「奇巌城」の舞台がここだと! 象の鼻の隣の針岩がそれ、あのとんがり岩がルパンのお宝の隠し場所、つまりはあの針岩が「奇巌城」なのです。えええ!
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しかも。エトルタの町にルパンの原作者モーリス・ルブランの屋敷があって、屋敷のなかがルパンの謎解きストーリーそのものだと。うわあ、まいった、訪れないわけにはいきません。
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大昔。田舎を持たない東京生まれの少年は、夏休みはどこにも行けず、学校のプールで遊ぶしかない。お泳ぎ疲れて、着替えて廊下に出るや、やかんに入ったあっつい麦茶を飲まされた。
家に帰ってもあっつい麦茶を飲まされた、なぜだろう? 少しはぬるくなった麦茶を横に、「海底二万哩(マイル)」「十五少年漂流記」「巌窟王」そして「怪盗ルパン/奇厳城」を、ハラハラドキドキ、読んだもんです。
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まさか、その少年、大人になってホンモノの奇厳城を訪ねるとは思いもしない。それもクロード・モネから始まるとは知る由もない。
あ、あっつい麦茶が飲みたくなってきたぞ。
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