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足るを知るイノベーション

イノベーションには「新しく加える」と「置き換える」の2つの側面があるように思います。
このうち、今からの時代にマッチしより求められるのは②「置き換える」の要素が強いイノベーションなのではないか?というのが今回のテーマです。

物質的な必要がすでに充足されている社会では、新しい欲望をかき立てることは難しくなっていきます。ましてや環境負荷をオントップで載せるような新規開発は、正当化するのが難しくなるでしょう。

むしろこれからは同じだけの満足・同じだけの効果を、いかに少ないインパクト(投入の消費や、廃棄の発生)で生み出しうるかを追い求めるイノベーションの方が支持され、必要とされるのではないでしょうか。

イノベーションには加える要素が強いもの(①)と、置き換える要素が強いもの(②)がある。
すでに基本的ニーズが満たされた状況では、満足・効用を変えずに環境へのインパクトを減らす
②のイノベーションの方が求められる

ものづくりの分野でいえば、バージン素材の使用を減らすような再生技術の開発・導入や、環境負荷の小さい生産方法・製品の開発・切り替えが、その方向性にあたるものです。
PET製品のケミカルリサイクルを実現した日本環境設計や、藻から食品・燃料を生み出すユーグレナ、微生物の発酵作用により繊維をつくるスパイバーなど、実際に置き換える技術を基盤にした企業が出てきています。

また、リペアやリメイクにより長期使用を促していくSaaS化も、新しく作るを置き換えるイノベーションの一種といえそうです。
「本当にそれが必要ですか?」と問いかけ、修理や二次流通に積極的に取り組むパタゴニアの振る舞いはこちらに近いと感じます。

そう考えると、置き換えるイノベーションの領域として、プロダクトデザインやエンジニアリングだけではなく、ビジネスモデルやマーケティングでもできることが多くありそうです。

新しいイノベーションの種を見つけたとき、それが加える要素が強いのか、置き換える要素が強いのか、リードする方は一呼吸おいて考えてみてもらえたらなぁと思います。
優秀なリーダーが優れた人材や資金などのリソースを集め、加えるイノベーションにオールインしていくと、とんでもないインパクトを生み出せてしまうかもしれません。
どれだけ経済的利得が大きそうでも、将来世代を損なうようなイノベーションは踏みとどまる勇気と倫理を発揮する方が一人でも増えるよう願っています。


置き換えるイノベーションが積み重なって実現するのは、気持ちよく「足るを知る」ことができる社会だと思っています。

持続的な社会のあり方として、社会的ニーズを満たしつつ、環境制約を超えないように経済活動を収めるドーナツ経済モデルが提唱されています。
「足るを知る」はドーナツ経済に近づくためのOSとなる価値観です。

野放図に拡張を目指すよりも、バランスを取りながら隘路に落ち着けていく舵取りのほうが難しいことは間違いありません。
イノベーションを起こせてしまうような優秀なリーダーには、きっと取り組みがいのあるチャレンジではないかと思いますがいかがでしょうか?

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