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放浪No.28 この地の温かさを知る

何となく感じたアウェー感は確信へと変わっていった。
確かに飛び込みだが、あからさまな常連贔屓ってあるんだなーとアルバイトらしきお兄さんや店員を眺めていた。
そんな気分がオーラと口調に表れてしまっていたのか、ビールのおかわりを頼んだあたりで状況が一変した。いや、させたのか?笑

「焼き物が遅くなってごめんねー」
「ジョッキが空になってたの、気付かなくてごめんねー」
ってな具合で露骨なご機嫌取りなのか、皮肉めいた対応なのか…余計に気分が悪くなってしまった。

様子見の注文程度で良かったーなどと考えながら、出揃った焼き物とビールを早々にたいらげ、お会計を済ませて店を後にした。

すっげー不完全燃焼…って気持ちで、再度マップで居酒屋を探す。

旅の恥は掻き捨てではないが、虫の居所の悪い開き直りの所謂イケイケ状態で次の居酒屋へと向かう。
目的地周辺でナビを見ながらお店を探すも見当たらず、不審者のように路地を出たり入ったりしていた。
ようやくナビが示すお店を見つけて建物へ入り「この雰囲気じゃ分かりにくいなー」などと考えながら階段を上がっていく。
暖簾を眺め、ふっと一息入れて「こんばんは、一人ですがお邪魔してもよろしいですか?」とお店に足を踏み入れた。
常連さんのお二人と店員さんのお二人の全員がキョトンとした顔でこちらを見つめ、少し時が止まったような感覚に陥った。
「あ、どうぞどうぞぉ」とショートカットに眼鏡をかけたママさんに迎え入れてもらい、カウンターへと導かれる。
ビールを頼み、メニューを眺めていると「お通し、こんな感じだけど好き嫌いはない?大丈夫?」と出てきたものに驚いた。
ご飯とお味噌汁が付いたら、もう定食じゃん!って感じのお通しに「ばっちりです!好みです!」とママさんに返事をする。

お通しをつまみながらビールを飲んでいると、常連さんに声をかけてもらいお話をするタイミングができた。
「なあ兄ちゃん、よくこんなババアのやってる店に入ろうとしたね、しかもこんな分っかりにっくーいとこ!笑」
って一言目にビールを吹きそうになりながら「え?え?笑」って答えるのが精いっぱい。
ママさんも「ほんと、そうだよぉ!来てくれてありがとうねぇ」って皆で爆笑しながら楽しいお酒を飲む。

それから俺が今自転車であてのない旅をしている話題になり「テレビで見たり話で聞いたりはするけど、実際に会ったのは初めてー!」と色々な話をさせてもらった。

お互いお酒も進み、時間もいい頃合いになってきたところで
「なあ兄ちゃん、こんなババアんとこじゃなくてさ、どっか違うとこで飲み直さねーか?笑」と声をかけてもらった俺は迷いなく即、快諾した。

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