自動車のメカニズム(タイヤの基礎編)
【はじめに】
ごくごく一般的なタイヤの話をします。
ここに載っている話はタイヤメーカー各社のHPでも確認できるくらいの情報です。
タイヤについては詳細編で詳しく説明するので、その基礎知識としてまとめます。
【タイヤの種類】
乗用車で使われるタイヤは主に以下の?つです。
・サマータイヤ
・テンパータイヤ
・スタッドレスタイヤ
・オールシーズンタイヤ
〈サマータイヤ〉
いわゆる普通のタイヤです。
バイアスタイヤとの対比でラジアルタイヤとも呼ばれます。
名前の通り夏の路面に対応したもので、雪上性能は期待できません。
〈テンパータイヤ〉
テンパーというのはtemporary=一時的な、間に合わせのという意味です。
スペアタイヤとして使われます。
最近の車は重量軽減のためにスペアタイヤを装備せず、パンク修理キットが装備されることが多いので、目にする機会は激減していると思います。
通常装着しているタイヤが使えなくなった時の代用のため、普通に使うには快適性や性能が低いですが、代用が使えなくなっていては困るため非常に頑丈に出来ています。
ラジアルタイヤと対比してバイアス構造を持っています。
昔は、テンパータイヤではない普通のラジアルタイヤがスペアタイヤとして装備されている例もありましたし、テンパータイヤにアルミホイールを履かせて少しでも軽量化する例もありました。
〈スタッドレスタイヤ〉
スタッドレスタイヤは冬用のタイヤです。
スタッドレスタイヤについては下記のノートにまとめてますので見てみてください。
〈オールシーズンタイヤ〉
オールシーズンタイヤはサマータイヤとスタッドレスタイヤの中間の性能を求めたものです。
中間の性能を持たせることで、雪や氷にもある程度の性能を発揮し、ドライ性能やウェット性能もある程度こなします。
ゴムの特性やトレッドパターンを工夫して両立するように出来ていますが、路面にあった性能という意味ではサマー・スタッドレス双方にはかないません。
【タイヤ側面の記載内容】
タイヤの側面(サイドウォールといいます)にはさまざまな情報が書き込まれています。
・スリップサイン
・サイズ
・ロードインデックス
・速度記号
・製造時期等
【スリップサイン】
タイヤを管理する際に最も重要なマークです。
写真のように△マークがあり、この頂点の延長線上のタイヤの円周面(トレッドといいます)の部分の溝が浅くなっています。
浅くなっている部分が表面と繋がっていると、タイヤが削れ過ぎていて寿命を迎えていることを示します。
【タイヤのサイズ】
タイヤのサイズは「195/65R15」のように表記されます。
最初の195はタイヤの幅を指し、単位はmmです。
65は扁平率(へんぺいりつ)です。
扁平率は高さ÷幅を百分率で表したものになります。
例の場合は65%となり、タイヤの高さは
195mm × 0.4 = 78mm
という計算になります。
扁平というのは「平たいこと」という意味で、扁平率は「どれだけ平たいか?」という指標です。
しかし計算式の上では数字が大きいほど扁平からは遠ざかり、正方形に近づきます。
最後のR15はホイールサイズ(直径)を示していて、例の場合は15インチという意味になります。
タイヤの外径(直径)はホイールサイズとタイヤの高さ(x2)を足すことで計算できます。
例の場合は15インチ→381mm + 78mm x 2 = 537mmということになります。
【ロードインデックスと負荷能力】
タイヤの性能のうちどれだけの負荷に耐えうるのかを表したものです。
タイヤを購入する際にはほとんど意識しないものですが、車にあったタイヤを装着しなければなりません。
60~120の数値で表され、250~1400kgの負荷能力を示します。
乗用車だと通常4本の車輪があるので、1500kgの車重だとすると、最低375kgの負荷能力のあるタイヤが必要です。(前後重量比50:50の場合)
これは多いので一部を抜粋すると以下のような形です。
LI 85 → 515kg
LI 86 → 530kg
LI 87 → 545kg
LI 88 → 560kg
LI 89 → 580kg
LI 90 → 600kg
LI 91 → 615kg
LI 92 → 630kg
LI 93 → 650kg
LI 94 → 670kg
LI 95 → 690kg
LI 96 → 710kg
(LI:ロードインデックス)
例のタイヤはLI 91なので、1本で615kgまで耐えられます。
【速度記号】
タイヤの性能のうち最高速度を表したものです。
アルファベットで記載され、対応した最高速度があります。
こちらも普段意識することはないかと思います。
L 120km/h
N 140km/h
Q 160km/h
S 180km/h
T 190km/h
H 210km/h
V 240km/h
W 270km/h
Y 300km/h
ZR 240km/h超
【製造時期等】
タイヤはゴムでできていて、経年劣化しやすいです。
タイヤの寿命を測るのに製造年月が必要なため、タイヤにモールドされています。
例では「DFJ1210」と記載されています。
初めのアルファベットが製造場所の意味ですが、詳細は不明です。
後ろの4桁の数字は前の2桁が製造週を表し、後ろの2桁が製造年を表します。
例の場合は以下のようになります。
12週→3/14~20頃
10→2010年
スリップサインが出ていなくてもだいたい5年くらいを目安に交換してください。
【溝の役割】
タイヤのパターンは排水を促すためにあります。
車は速く走ります。
雨の日の高速道路を運転する際、タイヤが船のように水面を乗り上げて浮いてしまい、グリップを失うことがあります。
そう。ハイドロプレーニング現象です。
高速走行でなくとも水は路面とタイヤの接触を妨げます。
この現象を防ぐためにはタイヤと路面の間にある水を取り除く必要があり、取り除くために必要な仕組みが溝です。
タイヤに押し付けられた水はタイヤの重さで潰され、出口に向かって移動します。
溝は水の移動方向を決めます。
タイヤのトレッド面から側面の方向に向かって掘られた溝で水を左右に掻き分けます。
回転方向指定のタイヤの中には溝が斜めに掘られたものがあります。
これは速度が速くても素早く水の移動を促します。
路面の凹凸や路面の砂利やアスファルトのカスを溝に追いやり、トレッド面の接地面積を増す役目があります。
【タイヤの部位】
タイヤはゴムの塊のようで、部位と部位に与えられた役割があります。
部位と役割を説明していきます。
〈トレッド〉
地面に触れている部位です。
この部分のゴムの特性がグリップに直結します。
パターンが刻まれ、排水性能を発揮します。
〈ショルダー〉
トレッドとサイドウォールの間の部分です。
トレッド部の発熱を受けて大気中に熱を逃がす役目があります。
〈サイドウォール〉
タイヤが路面から受けた衝撃を変形して、いなす部分。
銘柄やサイズ等の表示がモールドされています。
最近は大径ホイールとサイドウォールの低いタイヤの組み合わせが多いので、この部分のクッション性が低くなっています。
〈ビード〉
ホイールに触れる部分です。
唯一タイヤとホイールをつなぐ部分なため、外れたり滑ったりしないよう、とても丈夫であることを求められますがタイヤをホイールにはめる際にホイールのリムのぶんだけ伸びる必要があります。
チューブレスタイヤでは、この部分が気密をつかさどっています。
【チューブタイヤ/チューブレスタイヤ】
最近の車であれば、チューブレスタイヤが一般的です。
チューブレスタイヤは文字通りチューブがありません。
タイヤの断面がコの字型をしており、もう一辺をホイールで塞ぐことで気密を保っています。
チューブタイヤはタイヤの中に別体のチューブを入れてチューブの中に空気を入れることで気密を保ちます。
自転車のタイヤと同じ構造ですね。
チューブレスタイヤは放熱性とパンク時の空気の抜けにくさが優れています。
【パンク】
釘など鋭くて硬いものが刺さるとパンクします。
通常パンクしても直ちに凹んだり破裂したりはしません。
空気は穴と刺さっているものの隙間からゆっくり抜けるので、パンクに気がつくのは走行中よりも、駐車場で車を見たときか発車したときです。
道路の中でパンクの原因になるものが落ちているのは、みんなが通らない場所が多いです。
みんなが通る場所はすでに踏まれて連れ去られたか、接触した拍子に道路の端っこに向かって転がっていくのでこういうものが落ちている可能性が低くなります。
【修理】
パンクしたタイヤは修理することができます。
最近はスペアタイヤを積まない車も多いので、スペアタイヤの代わりにパンク修理キットが入っています。
ちょっと手順が複雑なので説明書をよく見て修理に臨んでください。
詳しくは下記のノートを参照ください。
カー用品店ではパンク修理剤が売っています。
こちらは作業がとても楽です。
修理可能なのはトレッド面に何か刺さっていた場合のみです。
サイドウォールが切れてしまったり穴が開いてしまった場合は修理不可能なので、新品交換が必要です。
【バースト】
空気圧が低い状態で走行を続けると、タイヤの変形が過度に起きます。
その結果、タイヤが高温になります。
特に高速走行ではスタンディングウェーブ現象というタイヤの表面に波が立ったような変化が起き、限界を超えると破裂し、タイヤの破壊が急激に進みます。
この場合もパンクといえはパンクですが、タイヤは原型を留めないほどバラバラになります。
バーストは高速走行時に起こることが多いので、走行中に急にタイヤが無くなった状態になって大変危険です。
【ラベリング制度】
JATMA(日本自動車タイヤ協会)がラベリング制度を設けて、共通の性能指標となるように定めています。
転がり抵抗をAAA〜C(〜6.5〜12.0[N/kN])とウェットグリップをa〜d(〜155〜124[%])でクラス分けしています。
悩んだら他のメーカーと相対評価することが出来ます。
出典:ラベリング制度とは JATMA
http://www.jatma.or.jp/labeling/outline.html
【窒素ガス充填タイヤのメリット】
全般的にはプラシーボ程度です。
1番影響が大きいのは水分が少ないので温度変化に対して内圧の変化が少ないということです。
(窒素そのものというより、水分管理されているボンベからの注入によるメリットです)
他には以下のコジ付けにも近いメリットがあります。
・酸素が少ないのでタイヤの内側の酸化が起こりにくい。
・窒素の方がゴムを透過しにくいので気体が抜けにくい。
・窒素の方が音の伝わるスピードが遅いのでロードノイズが減る。
デメリットとしては費用がかかることが挙げられます。
個人的にはこれに費用を払うのは馬鹿らしいと思います。
窒素充填を維持しようと考えた場合、補充もそこらのガソリンスタンドで出来なくなるので、タイヤのコンディション維持に悪影響があります。
【ランフラットタイヤ】
パンクしてもある程度走れるようにしたのがランフラットタイヤです。
ある程度走れるのでスペアタイヤの装備を不要にします。
しかしパンク検出機能が必須になる他、タイヤの構造にランフラットのための機構が必要になるためタイヤの重量が重くなります。
ランフラットのための仕組みは様々です。
以下に代表的な仕組みを紹介します。(市販していないモノもあります)
〈タイヤの空気を漏れにくくする〉
タイヤの内側の素材の柔軟性を高くし、釘が刺さっても釘を取り込むようになっています。
まったく漏れないということはないと思いますが、ある程度漏れを防ぎます。
仮に釘が抜けても、内部の柔軟層が気圧で穴を塞ぎ、漏れを防ぎます。
〈タイヤの剛性を高めて変型を少なくする〉
タイヤのショルダー内側に剛性の高い素材を設けています。
パンクで空気が抜けてもショルダー部で支えるため、限界までぺしゃんこにならずにある程度までしか変形しないようになっています。
〈空気の層にフレームを設ける〉
通常のタイヤでいう空気の層の部分(ホイールとトレッドの間)に樹脂や金属で頑丈なフレームを設けています。
フレームがあることでパンクで空気が抜けても限界までぺしゃんこにならずにある程度までしか変形しないようになっています。
〈トゥイール〉
ミシュランが開発しているパンクレスタイヤ。
トレッドとホイールの間を空気のチューブによって支えるのではなく、柔軟性を持ったフレームによって支えています。
見た目的にはホイールのスポークの外側にスポークがあり、スポークが二重構造になった形になっています。
市販化はされていませんが、画期的です。
ただし見た目がとても悪い。
月面探査機でも採用されています。
【スリックタイヤ】
競技用のタイヤです。
F1など、様々なモータースポーツで使われます。
トレッド面に排水用の溝がありません。
競技でもドライ路面でしか使いません。
コンディションの幅が広い公道では使えません。
【リトレッドタイヤ】
タイヤは走ると減りますが、基本的には道路に接地している箇所が減ります。
減った接地面の部分だけを補修して、また使えるようにしたものがリトレッドタイヤです。
乗用車用はまだ見たことがないですが、トラックなど商用車では普及が進んでいるようです。
省資源になります。
【あとがき】
まずはタイヤの基本的な常識をまとめました。
タイヤは車の運動をつかさどる根本を担う装置です。
より細かい構造や性能にかかわる部分については下記のノートで説明します。
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