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自動車のメカニズム(ホイール編)

【はじめに】

ホイールは車という機械の中でも走行という根源的な機能を見た目で表します。

そのことからドレスアップの定番アイテムになっています。


【ホイールの材料】

ホイールの材料は鉄、アルミニウム、マグネシウムが良く使われます。

いずれも強度を高め、耐腐食性を上げるため、合金が使われます。

比重で見ると
鉄が7.9、アルミニウムが2.7、マグネシウムが1.7です。

鉄が圧倒的に重いですね。

比強度(重量あたりの強度)で見ると
鉄(鋼)が5.4
アルミが11.5
マグネシウムが51.8

マグネシウムが圧倒的に優れています。

出典: マグネシウムの基礎知識:特性 日本マグネシウム協会
http://magnesium.or.jp/property/


【鉄ホイールの特徴】

「鉄チン(てっちん)」と呼ばれることも多いこのタイプのホイールですが、製造方法からプレスホイールとも呼ばれます。

アルミやマグネシウムのホイールの多くが鋳造なので、対比的に使われます。

鉄板をプレス機で曲げたディスクとリムを溶接して作られます。

プレスで作る関係と、元が板なので強度と重量のバランスを考えて設計すると意匠的にはあまり自由度が高くありません。

乗用車の多くの鉄ホイールは樹脂製のホイールキャップをかぶせることを前提に、実に事務的な形をしています。

車によっては鉄ホイールにデザイン性の高い意匠を施すこともありますが少数です。
(スズキ ハスラーなど)


【アルミホイール特徴】

金属の比重の違いで軽量に作ることが出来ますが、あまり変わらないのが実情のようです。
(1インチアップでも鉄より重くなる例がほとんど)

これは鉄製がプレスで作り、アルミホイールの多くが鋳造で作ることと関係しています。

プレスという工程は鍛造になります。

鍛造については鍛造ホイールの項を参照してください。

鋳造は型の中に熱して溶かした金属を流し込む工程を踏んで作ります。

プレスよりも自由な意匠で作ることが可能で、さまざまな形のホイールがアフターパーツ市場を形成しています。


【マグネシウムホイールの特徴】

アルミニウムよりもさらに比重の小さい金属で金属を使う事によってより軽量に作ることができます。

マグネシウムホイールは高価なものが多く、見た目もアルミホイールと同じなので、ドレスアップ目的ではなく、性能追求のための高額な実用品です。

F1などの競技車両もマグネシウムホイールを採用しています。


【インチアップとは】

車のドレスアップというと真っ先に思いつくのがホイールのインチアップです。

ホイールのインチアップはタイヤの外径は変えずにホイールの外径を変えます。

そうしないとスピードメーターが狂ってしまい、車検に通りません。

同時にホイールの幅も増やすことが多いです。

このことからタイヤが薄くなり、扁平度が上がります(扁平率が小さくなります)


【大径ホイールのメリット】

〈見た目のメリット〉

大径ホイールのメリットはほぼ見た目です。

車のタイヤハウスとタイヤは両方とも黒いため、ぱっと見同化して見えます。

通常ホイールを大きくしてもタイヤは大きくしませんが、ホイールが大きくなるとタイヤ全体は大きく見えます。

タイヤが大きいことは走行性能の高さを直感的に伝えます。

これは外から見てわかる走行機能がタイヤくらいしかないからです。

ホイールは殆どが黒くないことからも大径化がタイヤを大きく見せる効果を狙っていることが伺えます。


〈機能的なメリット〉

機能的には大きなブレーキを入れることができるというメリットがあります。

しかしブレーキを変えなければならないほどブレーキ容量が不足しているという使い方をする人はほとんどいません。


〈性能的なメリット〉

性能的には扁平タイヤほど荷重が大きい時のμの低下が少ないのでグリップ自体は上がる傾向になります。

詳しくは下記のノートを見てみてください。


〈乗り心地のメリット〉

ホイールが重くなると路面からの衝撃をホイールの重量が受け止める事になり、タイヤ全体としては上下動が小さくなります。

結果的に車体の振動が減る方向になります。


【大径ホイールのデメリット】

〈性能的なデメリット〉

デメリットは何と言っても重量増です。

バネ下重量が増えることで路面への追従性能が低下する他、加速も減速も燃費も悪くなります。


〈乗り心地のデメリット〉

空気量の減少とサイドウォール高の減少によりタイヤのバネ容量が減ってしまいます。

このことから乗り心地はゴツゴツした印象になり、ロードノイズも増える傾向にあります。


〈見た目のデメリット〉

性能的に考えるとデメリットが多いです。

大径化の正当性は大きなブレーキを入れるためという理由です。

このことから、小さなブレーキが大きなホイールの隙間から見えるとカッコ悪く見えます。

特に後ろのブレーキは性能的にも大きなものを入れる必要が無いため、隙間が広く見えて貧相に見えます。


〈経済的なデメリット〉

大径ホイールはそれだけで値段が高いです。
(大きくなるほど値段が高い)

大径ホイールに合わせた扁平タイヤもまた値段が高いです。
(扁平なほど=扁平率が低いほど値段が高い)

その価格からタイヤの交換を渋り、安全性を損なう可能性もあります。


【鍛造ホイール】

鍛造は金属を圧縮して作られます。

鍛造と言うと刀鍛冶が有名で、熱した金属をハンマーで叩く光景がTVなどで見られます。

刀の場合は複数の金属を合わせたりもしますが、ホイールの場合は単一の金属で作られます。

軽合金のペレット(円柱状の塊)を巨大なプレス機で潰して型に沿った形に整形します。

その圧力は9000トンにも及びます。

圧縮する工程が金属成分の結晶化を促し、気泡や不純物の巣が入る余地を減らすので強度が高くなる特徴があります。

強度があるので、同じ強度を想定すると軽く作れるため、鍛造ホイールの多くは同じサイズの鋳造ホイールよりも軽量です。

しかし、プレス金型の設計制約上デザインの自由度は低いです。


【軽合金ホイールの構造】

軽合金ホイールの構造にはいくつかの種類があります。

いくつかのパーツに分かれているのは成型のしやすさの他、パーツごとに材料を分けることが可能で、適切な材料を選ぶことが出来ます。


〈1ピース構造〉

これがいわゆる普通の構造です。

ホイールのすべての部位が一体成型されています。


〈2ピース構造〉

ちょっと凝った構造で、リムとディスク(スポーク)が別体で成型されていてボルトで固定されています。

リムの内側にボルトがずらっと並ぶのが見えています。


〈3ピース構造〉

2ピースのリムがさらに内側と外側に分かれています。

ボルトの並びは2ピースと変わらないので、2ピースなのか3ピースなのかを見た目で区別することは難しいです。


【あとがき】

ホイールはドレスアップの定番ですが、さまざまなデメリットを引き起こすので、それなりに覚悟して臨んでください。

安易な交換は後悔を生みます。


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