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ハゼノキの創り出す灯り③ 江戸落語を再現する

みなさんこんにちは。今回も先週にひきつづき「ハゼノキの創り出す灯り」シリーズ。3回目になります!

先週はご依頼頂いた、「江戸落語の再現」に関して過去の史料を基にどのように寄席の舞台が組まれていたのかを探っていく過程を書いてみました。あまり資料が見つからなかったおかげで寄席だけでなく、歌舞伎や寄席以外の大衆芸能についても色々調べることができまた。それはそれで却って良かったのかもしれないな、と思ったりもした先週の記事はこちら。

さて、今週は実際に山中醤油さんで行った寄席のお話です。江戸時代の寄席。という事で、和蝋燭以外の舞台設計も非常に重要になってくるのですが、実は山中醤油さんはデザインの仕事もされており、今回は山中醤油さん自ら舞台設計を行い、会場づくりを行われました。舞台を整えていただい状態での和蝋燭を使った照明設定でしたので、安心して配置や数量を考えることができました。

山中醤油さんはこちらhttps://www.instagram.com/yamanaka_soysauce/


■山中醤油さんによる舞台設計

今回の落語会は山中醤油さんの3周年記念落語であり、会場も山中醤油さんです。元々倉庫だった場所をリノベーションし、店舗として使われている倉庫を今回の落語用にレイアウトや内装を変更して舞台を設計しました。

イベントに合わせて都度お店の魅せ方を変えていける。これも山中醤油さんの魅力の一つでもあります。そして作り上げていただいた高座がこちらです!(上が昼で無灯火、下が夜和蝋燭を灯火したものです)

山中醤油さんが作られた高座(昼:無灯火)
山中醤油さんが作られた高座(夜:灯火)

江戸時代の寄席の小屋をそのまま再現するのではなく、当時から使われていた襖や欄間をうまく使い、デザイン性を取りいれつつ全体として江戸時代の雰囲気も感じ取れる。とても素晴らしい舞台を作ってくださいました!写真ではわかりづらいのですが、高座の高さや、右手方向にある火鉢に急須。細かな部分まで当時の趣を再現しています。

江戸落語の再現でもありながら、新しさを取り入れる遊び心も忘れない。今と昔が合わさった素晴らしい舞台設計でした。和蝋燭を灯火した夜の雰囲気は息をのむほど素晴らしものになりました!

■噺家。真打桂伸衛門さん

江戸落語の再現と芯打ちに関して、きっかけを作っていただいたのが桂伸衛門さんでした。前回少し書いたのですが、伸衛門さんと山中醤油さんとの話し合いのなかで、「芯打」の話題がで、実際にそれを再現しよう!という流れから私に依頼が入りました。

2020年に真打に昇進された伸衛門さん。真打に昇進にあたってその語源となった「芯打」をやってみたいと想いをもたれており、その想いが今回の江戸落語の再現を行う上で大きな原動力になりました。

和蝋燭の灯りで話す伸衛門さん

お会いしてお話する前は、江戸落語の再現というお話がでるくらいなので、古典落語や歴史的な取り組みが好きなのかな?と思っていましたが、古典を大切にしつつ、ギターと共演して落語を行ったお話がでたりと、伸衛門さんもまた今と昔をうまく調和させた取り組みされていることが分かりました。

山中醤油さんと桂伸衛門さん。このタッグだからこそ今回の寄席が成立するんだなと改めて感じました

桂伸衛門さんのHPとYou Tubeです。(You Tubeで今回の寄席の模様もご覧いただくことができます)

桂伸衛門【しんえもんチャンネル】 - YouTube

■令和に「芯打」を蘇らせるために

そして最後に江戸落語の寄席の再現と併せて、もう1つ大事なのが「芯打」の見せ方でした。

和蝋燭を使うにあたって、前回お話した通り、いくつかの書籍や挿絵を参考に和蝋燭の配置や大きさを検討し使用しました。今回使用した和蝋燭は予備灯を含めて、50匁が4本、20匁が2本、10匁12本、3匁が1本の合計21本でした。50匁と20匁の1本が予備灯です。

配置とそれぞれの和蝋燭の説明はこんな感じです

高座正面と階段部分の照明配置
2階部分、間接光としての照明配置

今回照明演出をするにあったて、重要なポイントが2つありました。1つはもちろん江戸落語の寄席を再現すること、そしてもう1つが

「芯打の後、会場を暗転させること」

でした。江戸時代の寄席は、間接光用の提灯や客席用の蝋燭が残るため、完全に灯りが消えるわけではなかったようですが、今回はこの時代だからできる江戸落語の再現でした。だからこそお客様への芯打ちの印象をより強く残すため、この方法を選択しました。プランニングは以下の通りです。

事前に立てていた照明プラン

18時頃日没だったこともあり、時間の経過とともに自然光がなくなるため、何もしなくても暗さを演出できたのですが、日没後も高座の主照明以外を少し残すことで、明るさを担保して、より芯打ち後の暗転の印象を強くする工夫をしてみました

伸衛門さんの話がおわり、和蝋燭の芯が打たれ、会場に一瞬の暗闇と静寂がおとずれました。少し間をおいて大きな拍手。

今回の江戸落語の再現寄席の映像です。
【江戸時代の寄席を再現】桂伸衛門「文七元結」 (youtube.com)

何とか、照明演出としての役割を果たすことはできました。。。となるはずだったのですが、実はかなり反省点が多く、照明として和蝋燭の灯火を使う場合どうすればよいのか?という点をいろいろと考えさせられました。

という事で、次回は今回の反省点と9月15日次回に向けて!です。

伸衛門さんによる芯打ち

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