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ゲームの出力部品について思ったこと

最近、ふとボードゲームの出力メカニクスについて思いついたことがあるので仕事仲間と夜な夜な話してるんだけれども、ちょっとメモとして残して置こうと思う。

まだ全然整理が終わってなくて、これがどう役立つか?というのはまだ明確にできていない。しかし、個人的に嬉しい発見だったので共有したい。

当記事は、自身とゲームシステムに一定の理解がある方向けに書いた。用語を未定義のまま使ったりしているので、不明点があったらいつでもコメントしてほしい。

そもそもの前提条件として、ゲームシステムを構成する部品には、
①プレイヤーがゲームに意志を伝えるための「入力のメカニクス」
②入力に対してゲーム内の処理を行い、結果を返す「出力メカニクス」
③出力に対してゲーム内の処理を行い、結果を返す「出力メカニクス」
がある。

この内、①についてはすごく分かりやすいと思う。
ワーカープレイスメントやブースタードラフト、マンカラ、ロンデル、AP、競りなど。細かく見ていくと入力メカニクスは無数にあるが、代表的なのはこんな感じ。
入力メカニクスの特徴は、似た性質を持つものであれば相互に入れ替えが可能であるというところだ。

例えば、スシゴーはブースタードラフトではなく競りにしても成り立つことは容易に想像がつくだろう。
カードを2-3枚出して、なんらかの競りを行い、カードを集めていく。ゲーム終了時にセットコレクションの状況に応じて、点数が出力される。
入力メカニクスと出力メカニクスは思ったよりも結びついていないことが多く、分解してみるととてもおもしろい。

②と③については、今まで感覚的に理解はしていたものの、パッキリとした美しい言語化ができずにいた。
それでも感覚的には理解しており、仕事には特に支障がなかったので、放置していた。

ある夜に、ボードゲームの出力のメカニクスは(僕が主に学習を行っているユーロゲームにおいては)抽象化すれば以下の3つに分けることが出来るのでは?ということを思いついた。

①○を得る。
②△を払って□を得る。
③この状態ならば▲をn個得る。(支払い有無パターン)
(記号には、資源、勝利点、倉庫、権利、能力、収入などが入る。)

ゲームには様々な出力メカニクスがあるわけだが、今まではそのレイヤーが異なっているような気がしていて、KJ法的に後から引用できる形で整理することの難しさを感じていた。
今回のアイデアでは、倉庫や権利、能力など一見異なる「もらえるもの」を同じレイヤーに並べて考えてみた。
上記アイデアがもし正しいのであれば、ゲームを今まで以上に構造的に理解し、その機能を整理・活用できる。

このアイデアによって、現段階では以下のような問題が言語化できた。
Ⅰ. 横並びの特徴のない色違いの資源はなぜ生まれてしまうのか
→その資源を得て、最終成果物に変換されるまでの出力のパーツが同じ、ないし類似しているからだ。
例えば、資源Aは獲得アクションで得ることが出来る。先ほどの分類の①のパターンだ。
その後、②のパターンで勝利点に変換される。
資源Aを3個払えば5点を得る。

資源Aは、3個を払えば5点が得られる、2段階の出力パーツで構成された資源だ。
では、資源Bが全く同様の挙動をする資源であればどうだろうか。または、4個を払えば7点が得られる程度の変更だったら。
この場合、資源AとBはほとんど同じものだと考えて良い。
従って、色違いの面白みのない資源になる。

これを良くするためには、出力のパーツに差をつけてあげれば良い。
例えば、資源Bは10個払えば40点みたいに点数に極端な非線形を持たせてあげるとか、資源AとBの最終成果物をそれぞれ点数ではなくA‘とB’としてあげて、A’とB‘を払えば20点みたいに点数化にどちらも必須にするとか。
あるいは、資源Bは別のアクションにも必須で使うようにするとか。
なんにせよ、出力パーツを足したり変えたりしてあげることで、資源はそれぞれユニークな輝きを持ってくれる。

Ⅱ. シンプルな出力と複雑な出力は何が違うのか?
僕はStefan FeldというデザイナーとUwe Rosenbergというデザイナーがとても好きなのだが、彼らの作風には明確な違いがある。
前者は、入力メカニクスが主体のデザイナーだ。「ゲームにどうやったらうまく意思が伝えられるか」と言う部分にフォーカスしている。
後者は、出力メカニクスが主体のデザイナーだ。「ゲームに完全に意思が伝えられるとするならば、どのような行動を取るのか?」にフォーカスしている。

その作風から、前者はシンプルな出力があり、後者は複雑な出力があると考えていた。
これも、先ほどのアイデアを使って構造化すると言語化できた。
両者は、出力パーツの最終成果物までの距離、ステップ数が異なる。
言葉にしてしまえば当たり前だが、これを構造的にしっかり理解できたのはとても嬉しかった。

他にも、
・人が何に快感を感じやすいのかを言語化できる
・コンセプト以下、ゲーム表象よりは上の機能ベースでゲームを正確に見ることが出来る
等のメリットがあった。

感想

僕のゲームデベロップメントへの取り組み方には、ルイスサリヴァンという建築家の「Form follows function」(=形態は機能に従う)という言葉がベースにある。
ボードゲームにもForm(表象)とFunction(機能)があり、機能に従った表象を持つゲームデザインは美しく、面白い(と感じる)。

なるべく質が高いゲームデベロップメントのために、今まで数年間、表象から切り離してあらゆるゲームメカニクスの機能を見つめ続けてきた。
今回のアイデアによって、より高いレベルで機能を言語化できるようになり、面白いゲームを作る能力が高まったと思う。本当に嬉しかった。

参考文献

スパ帝国 ルールデザインノート

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