見出し画像

アジアを旅したときの話③

心は言葉の国境を超える。

僕とヴー(ベトナム人クォーター)はすっかり意気投合し、くだらない話や恋愛、今後のバカげた夢物語などをお互い気の済むまで話し合った。

Barの店長に『そろそろそのくらいにしてくれ』と言われ我にかえって辺りを見回すと、窓の隙間から太陽の光がこぼれていた。地下なので気が付かなかったが、時間は朝の7時を回っていた。

『これからどうするんだい?宿はとってあるのか?』

と聞かれ、特に泊まる宛もないことを伝えると、

『うちに来い。家族に紹介したい。』

と彼が言うので、少しの不安と恐怖を感じながらも命までは盗られまいと彼についていくことにした。

ちなみにこの時点で僕はこれから行く先で衝撃の事実を目の当たりにすることをまだ知らない。

浮き世なんざ

Barを出てバスに乗り、そこから約45分ほど走っただろうか。彼の家は南部に位置するとある住宅地。案内されて中に入ると、そこにはスラっとした男性2名とひとりの女性が待っていた。

現地の言葉?だろうか、何やらしばらく話をしているのを待っていると、男の人がこちらにやってきてあいさつされた。そうしているうちに何だかよくわからないまま奥にある小部屋に案内された。

ココデヤスンデイッテクダサイ。

いまいち現状が把握しきれないでいたが、言われるがままにそこで僕は休むことにした。というよりは気がつくとすっかり眠り込んでしまっていた。旅の疲れと朝まで飲み明かしたことで僕の体力はとうに限界を越えていたのだ。

寝返りをうったのだろうか、何かにぶつかり目が覚めた。そこで僕は我にかえった。隣にさっきの女性が眠っていたのだ。

自分の存在に気がついたことを理解すると、彼女はニコッと微笑み、そして僕に優しくキスをした。そして僕は頭の理解が現実に追いついていないながらもそのまま流れに身を任せることになる。

20代前半、若気の至り。
男なんてまぁそんなもんだ笑

そしてそのまま再び眠りにつく。
2時間くらいたった頃だろうか、寝起きの僕に彼女が言った。

エンチョウナサイマスカ?

そこでようやく気がついた。
異国でのこれまでのエキサイティングな経験は、すべて仕組まれた営業そしてサービスだったのだと。
(まぁ途中からなんとなくわかってはいたのだが…)

帰ります。そう答えると女性は部屋から出てゆき、しばらくするとかわりに男性がやってきた。

料金を支払い、僕は『店』を後にした。
幸い手持ちでどうにかなった。しかし、それにしてもなんとも言えない体験だった。

人はストーリーに引き込まれる。
もしかすると僕のマーケターとしての肌感は、このときの実体験をもとに形成されているのかもしれない。

一つ間違えるととんでもないことになっていたのかもしれない。でもだからこそ人生は面白い。今思えばある意味とても貴重な体験をしたなと思う出来事のひとつである。

つづく

ありがとうございます✨デザイナー目指している娘にiPad買ってあげたいと思います✨