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日曜日のクルーメイト #0074 Dekkaido!!

ハロー、クルーメイト! いかがお過ごしでしょうか。
冲方は、でっかいどう、こと北海道の十勝(とかち)に来ております。

東西南北に移動しがちの今夏は、太平洋横断に続き、日本を縦断。
これまで溜め込んでいた取材目標を消化すべく、トランク一つで旅立つ、体力勝負の夏。

そんなわけで今週もでっかく参りましょう。

今週の宣伝! 『マイ・リトル・ジェダイ』

『マイ・リトル・ジェダイ』も、いよいよ終盤へ!
加害者も被害者も巻き込み、チーム作りを成し遂げたノブ。
彼が新たに迎えんとするのは、息子リンが目指す世界大会の王者。
果たして王者は、ノブの呼びかけに応えてくれるのか。
ノブとチームが新たな局面を迎える最新話、ぜひお楽しみ下さい。

ところで。
この作品、書き進めるほどに、それまで物語作りにおいて常套手段としてきた「対立の文脈」が、ことごとく解体されることに、我ながら嬉しい手応えを感じています。

「誰かと誰かが対立し、その加害と被害の連鎖が続く」ことをドラマとせず、むしろ一瞬で和解が成立する。
その上で、みなが一つの目的のために尽力することで、誰もが自分自身を再発見してゆく。
結果、どれほど最悪なことも、いつしか価値ある何かに変わっていく。

どのような作品も、
「これこそ、今、自分が書くべきものである」
という確信をもって書き進めるものですが、本作はとりわけその感覚が強く、この主題に出会えたことに深く感謝しつつ、しっかりと最後の一行までテンション高めで書き通したい所存。

今週の宣伝! 『ばいばい、アース』コミック最終話!

こちらは最終話を迎えました、コミック版『ばいばい、アース』
一巻ラストまで描き切って下さった麻日さんに感謝!

原作執筆から、20数年振りにビジュアル化されたキャラクター達に、新たな愛着を抱きつつ刺激を頂きました。

ぜひコミック版がきっかけで原作に目を向けて下さったという方は、その後のベルの物語をお楽しみ頂き、また別のお知らせをお届けできるよう努めて参ります。

今週のお題! 20年先へタイムスリップ

今週のお題はこちら!
ある人物が、あるとき20年先の未来にタイムスリップしました。
投資していた資産の20年分の利益は自分のものになるのか?
服役するはずだった20年分の刑期はどう扱われるのか?

さっそく結果を見て参りましょう!

「資産を得て、服役する」が最多得票47.1%。
「資産を得ず、服役しない」が次点の21.1%。
「資産を得て、服役しない」という、ある人物にとって最も利益が大きくなるケースは、さらに低く18.5%。
「資産を得ず、服役する」という、ある人物にとって最も利益が少なくなるケースは最小得票となり、トップの三分の一という結果となりました。

各項目ごとにも見てみましょう。
「資産を得る」65.6%が、「資産を得ない」34.3%を大きく上回りました。
「服役する」60.3%が、「服役しない」39.6%を、これまた大きく上回る結果に。

冲方としては、これは「平等」と「公平」について考える上で、良いお題になるのでは、と思っており、今回の投票結果には、いろいろと考えさせられるものがあります。
が、その前にクルーメイトのコメントをご紹介して参りましょう。

森人さんからのコメントです!
今回のお題は、そこら辺の細かいところは、何らかの手段で全てクリアされている、という前提となります。

パラドクスも生じず、ある人物が、急に20年後に飛ばされ、その間は不在という扱いですね。

薔薇肉舶載さんからのコメントです!

そうなのです。法律面では「想定外」であるため、ではどうするかという後付けに理屈によっては、どれでも成り立ってしまうことでしょう。

ある人物が得をすることで、別の人物が損をするケースでは、法律面だけでなく感情面で、どうすれば平等で公平かという議論になるのではないでしょうか。

kei.さんからのコメントです!

20年も逃げ回っていたとみなすということ自体、ある人物の刑を免除することは不公平だ、という態度になるかと思います。
また、その人物が生活そのものに戸惑うということを、情状酌量とするかどうか、といった不公平を巡る議論になりそう。

その場合、財産面での利益は、たとえ逃げていたとみなされても、「平等」に保障されることになりそう。

夏月さんからのコメントです!

こちらはリプライでのコメントありがとうございます。
なお「#日曜日のクルーメイト」のハッシュタグをつけて頂けると、冲方が見落とししにくくなります。

こちらも、資産については万人と条件が変わらない限り、平等に分配されるという考えが、議論の土台になっております。
ただし刑期について公平に考えるならば、これまた逃げていたとみなされるのではないか、という議論になりそう。

ただ、20年分の社会活動一切を禁じられるという点では、ある人物は存在すらしておらず、「きっちり20年分、社会的なチャンスなどあらゆる経験を奪われた」とも言えるわけです。

が、一般常識的な服役の考え方からすると、「しかし寿命は奪われていないじゃないか」といった観点から、自由にさせるのは不公平とし、改めて服役させるべき、となるのかもしれません。

ラピツティアさんからのコメントです!

そうなのです。ある人物を、客観視するか、主観視するかでも、だいぶ異なります。
そもそも、この人物が、服役という責任を果たしていない、と「感じられる」のはなぜなのでしょうか。

服役に関しては、ある人物は「それ相応の経験(拘束や社会奉仕など)をしなければいけない」という、公平の観点が強まるからでしょう。

その一方で、資産を得ることに関しては、ある人物は投資をしたのだからその後「何もしていなくていい」という、昨今の平等の観点が強まるのだと思います。

結果、これらを同時に成り立たせる回答(資産を得て、服役する)が、最も多くなったのではと感じました。

新条拓那さんからのコメントです!

時効かどうかといった考えは各国の法律により大きく異なるかと思いますが、単純明快な解決として、「20年分の投資資産を用いて、服役を免除される」というのが、とても面白い。
きっちりプラスマイナス・ゼロ。平等であり公平であるという、二つの観点の対消滅的な解決となりそうです。

こうなると、ある人物としては、あえて服役する代わりに財産を得る(さらに20年放置して増やす)という選択をすることもあり得るかも?

さてさて。
今回も、突拍子もないお題に対し、得票およびコメント、ありがとうございます。

お題では「タイムスリップ」としておりますが、これは「もし現実になったらどうするか」という思案の土台となるもの、と冲方は考えております。

たとえば「人間を冬眠させる(ことで延命させる)テクノロジー」が実現した場合、お金持ちの投資家などは遠慮なく、ガンガン使うことでしょう。

なぜなら時間こそ、財産を築くキーワードの一つであり、「数年ごとに目覚めて投資してはまた眠りにつく投資家」は、財産というものの考え方を覆すほどの富を築き続けることでしょう。

他方で、社会的に不都合な存在を眠らせることで、人権に考慮したなんとやら、という方便を、たとえば独裁者などに与えるかもしれません。
その場合、「延々と眠らされ続ける人たち」は、たとえ目覚めても、失われた時間を取り戻し、新たな社会生活に適応するためだけにエネルギーを奪われ、社会的な活躍の機会をまったく失ってしまうかも。

などと、今後書くべき物語の思案に付き合って下さるクルーメイトに感謝しつつ、またぞろ面白げなお題を出したいところ。
投票とコメントを下さったみなさま、改めてありがとうございます!

さてはて。
ここまで書いて、そろそろ取材の準備に戻らねばならなくなりました。

混沌とする世を俯瞰する上でも、ときに未来や架空の世界に想像を膨らませるのも一興。
おかげさまで、今週は冲方もずいぶん楽しくコメントを拝見しました。

気ぜわしい世の中においても、思考を遊ばせる機会を大事にしつつ、健やかで楽しい一週間をお送り下さい。

冲方丁 でした。

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