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長女の冒険を仕立てる

7月末から8月頭にかけての一週間程度の期間で小2の長女と私の父娘で沖縄県八重山諸島の旅をしてきた。旅の目的は2つ(+α)。
 
1つ目は近頃「妹ばかり気にかけてずるい」と不満を口にしてきた長女への埋め合わせである。旅のあいだ、妹のことは一切話題にせず長女と向き合おうと決めていた。2つ目は、東京生活が当たり前となり野生感を失いつつある長女を大自然に放り込んで刺激を与えること。今回の滞在先である西表島と鳩間島の大自然を長女にぶつけてみたかった。最後の(+α)は、仕事で鳩間島にご縁ができたので、この機会を利用して実際に島を見てくることであった。
 
・・・というような目論見を持った旅であったが、実際はどうだったか。
まず今回の旅では天候に恵まれたのがよかった。日程が決まっているため、これだけは運任せで祈るしかなかった。
次に地元の良いガイドと出会えたのも幸運だった。話すと私と歳が同じで、さらに近い年齢の娘が2人いることも同じで、互いに相通じるところがあった。彼は神奈川出身のIターン者で、西表島に暮らしてから15年が経つとのこと。プログラム参加者の状況と天候を読むことに長けていて、その場で柔軟にプログラムを組むことができた。ファミリー参加は予定が空いてれば断らないというポリシーも掲げていた。彼との会話を通して、断片的に住民視点での西表島事情も知ることができ大変興味深かった。
 
優秀なガイドお陰で、長女はシュノーケリングでサンゴ礁のイソギンチャクに住むクマノミを観察したり、シーカヤックでウミガメを観察したり、はたまたジャングルにある洞窟を探検したりと想像以上の自然を体験することができた。
海系のアクティビティは十分堪能した長女だが、陸上で濡れたりする経験や虫がいる山系のアクティビティは苦手で、洞窟探検(腰まで水に浸かる)はビビりながら「サイテー・・・」「サイテー・・・」とボソボソ呟いていた。自然体験で刺激を与えたかった私としては”してやったり”と心の中でニンマリである。

* * *
 
期待以上の自然体験を実現できたのだが、じつは今回の旅の一番のハイライトは、長女との"会話"と"ケンカ"であった。
 
長女とは毎晩寝る前によく他愛もない話を沢山した。そのなかで「理想の学校」や「理想の家」なども話題に上がり、日頃彼女が何を思っているのかを垣間見ることができて、とても貴重な機会だった(自意識が強くなってきたせいか、近頃は学校のことを聞いても曖昧な返事ではぐらかされて、様子が分からない状況だった)。
 
そしてケンカ。長女は鳩間島に上陸した際、「私はこんな虫の多いところは嫌だ!ホテルならいいが民宿には絶対に泊まらない!」と宣言し、港の待合室でストライキを始めたもんだから困ってしまった(たしかに島の素泊まり宿は"ホテル"とは比べられない簡素さだったが)。あちこち回りたくてウズウズしていた私もさすがに頭にきて、「こんなエメラルドグリーンの綺麗な海を目の前にして、港の待合室なんかでじっとしてられるか!水を置いておくから好きにしていな!」と叫び、長女を待合室に残したまま島の探索を始めた。心の中では(都会のへなちょこモヤシ野郎なんかに付き合ってられるか!)という叫びを連呼していた。
 
スタスタと私一人で歩き始めたが、ふと後ろを振り返ると、長女が泣きながら追いかけてくる。「何でアタシだけお父さんに一方的に合わせなきゃいけないの・・・」と言いながら半べそをかいている。まだ怒りがおさまらない私は「勝手にしな!」と言って歩き続ける。また長女がトボトボとついてくる。
しばらくしてから「お父さん、歩くの疲れた・・・おんぶして」とボソッと呟いた。「おんぶは両手が使えなくなるからやだけど、肩車ならよいよ」と私。「いいよ・・・」と彼女。そこから、長女を肩に乗せ、約4キロの島一周コースを歩ききった(南国の炎天下で20キロ半ばの人間を担ぐのは大変だった・・・)。島のワイルドなジャングル道を歩いていくと、珍しい蝶や南国のハイビスカスたちと出会う。そのうち自然と会話が生まれ、いつの間にか仲直りしていた。その晩の寝る前に「今日、2人でケンカしたよね」「うん、そうだね」と互いに振り返って1日を終えたのだった。
 
上記は一番のケンカだったが、小さなケンカは他にもいろいろあった。ケンカと仲直りの繰り返し。
ふと、今回の旅は大人目線で長女の挑戦の機会を設計したと思い込んでいたが、本当は子どもだけでなく、大人にとっても挑戦の機会だったのではないかと思い始めた。さらに、本質的な学びとは一方的に影響を与えるものではなく、互いが影響し合い、変化するものなのではないか・・・とも。
 
旅から帰ってきて、長女は以前よりも一回り大きくなり少し饒舌になったように感じるのは気のせいだろうか。
そして、私も何かしら変化したのだろうか。自分自身のことは分からない。

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