【お望月さんの】2022年映画ベスト10
こんにちは! 編集ユニット「お望月さん」です。
我々が2021年にみた映画作品、157本からベスト10を選出。
それぞれホメホメしていく恒例の企画です。
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過去のベスト作品はこちらです。
2021年 『モータルコンバット』
2020年 『メランコリック』
2019年 『スパイダーバース』
2018年 『キラーメイズ』
2022年ベスト10
第1位 ウィリーズ・ワンダーランド(2021)
寒村の寂れた遊園地は殺人アニマトロニクスの根城だった!というありがちなホラー設定でありながら、そこへ訪れたのが寡黙ニコラス・ケイジであったということで事態は一変。アニマトロニクス側がニコラス・ケイジ対策にあたふたし始めるという立場の逆転が痛快な作品である。
8体の殺人アニマトロニクスに対して88分というランタイムながら、ストーリーに過不足はなくスピーディーな残虐ファイトが楽しめる。アニマトロニクスは村人に強くニコラス・ケイジに弱い。ニコラス・ケイジはアニマトロニクスに強く村人に弱い。村人はニコラス・ケイジに強くアニマトロニクスに弱い、という三すくみが成立しており、これにルーチンに固執する異常ニコラス・ケイジという不確定要素が加わることで、スリリングな展開が生まれている。
海外アクション映画の華であるフェイタリティも十分にあり、エンディングには「ウィリーズ・ワンダーランドのうた」まで流れる。サービス精神満点で程よい娯楽を提供してくれた2022年のベスト作品である。
第2位 コレクティブ 国家の嘘(2019)
ルーマニア・ブカレストを舞台にしたドキュメンタリー。すなわち、この映画で報じられている内容は信じられないことに事実である。
序盤に挿入される「不正消毒液の検査をできるの施設が不正の元凶の病院しかない」というエピソードが、そのままクライマックスの国政選挙の結果に反映されるという構図があまりにも劇的すぎる。不正疑惑を取り扱った作品でさんざん扱われる「これで政権がひっくり返るぞ」という言葉は、現実では無力であるということを我々は痛感するだろう。
取材対象者の背景まで透けて見えるような信じられないほど当事者に近いカメラも凄まじい。どうやって撮影できたんだコレ。とにかく未曽有の映画体験である。
第3位 レイジング・ファイア(2021)
ボン(ドニーさん)とンゴウ(ニコラス・ツェー)、正義を貫くためにレッドゾーンに足を踏み入れた二人の刑事が《怒火》に呑み込まれていく悲劇を描いた作品。観客の予想を超える格闘、銃撃、大爆発が繰り広げられる。
哀しみを塗り固めて正義を貫くボン、理性的なナイフ捌きから爆発とハンマーの暴力に堕ちるンゴウ。色彩による感情描写に観客は手に汗を握る。
だが、勢い余って自分で轢いた子供を自分で助けて事故を未然に防いでから車に戻るドニーさんを見た我々はアゴを外し、何かを手放してしまうだろう。すごい。やりすぎだ。でも、すごいものを見たぞ我々は。
第4位 RRR(2022)
もはや『バーフバリ』のラージャマウリ監督ではない。世界のラージャマウリへ雄飛させた作品である。
悪の大英帝国にさらわれた少女を救うために「羊飼い」ビームが立ち上がり、その奪還計画を「警官」ラーマが阻止しようとするが、二人はそれと知らずに親友になってしまう。やがて二人が真相を悟り、激突をする悲劇を描いている。
シンプルなシナリオながら、ラージャマウリ監督のイマジネーションは、大量の人間を「波」として描き、野生動物は空を飛び、機関車は秒速で爆発し、英雄は何度も死に、何度も蘇り、炎と水が組み合わさり最強の力を生み出す説得力に満ち溢れている。
今後は、この作品を見ている前提で話をするので、とりあえず劇場で観れるうちに観ておいてほしい。
第5位 ブレット・トレイン(2022)
東 京 発 京 都 行 の 弾丸列車に乗り合わせた殺し屋たちの一夜の攻防を描いた完全娯楽作品。明日には忘れてしまうほど後味が軽い。この映画を見ると(もう一本くらい見て帰ろうかな)という気持ちになる。胃に優しい作品だ。
音楽劇としての構成も丁寧にパッケージングされており、冒頭からアヴちゃんの「Stayin'Alive」 が流れ始めると「この映画はこのノリです」と宣言され、カルメン・マキの「時には母のない子のように」が流れ始めると空気がウエットに変わり、麻倉未稀の「Holding Out For a Hero」で完全にフィクションラインが決壊して大爆発する。
原作(マリアビートル)を換骨奪胎しながらも、読了時に感じた「映像化の勝算」がそのまま生かされている点にリスペクトを感じる。きかんしゃトーマスくんがオミットされず、きちんと物語のキーとなっているのもよかった。
原作では北へ向かうほど乗客が減り、エントロピーが減少して善悪観念バトルに移行する構成になっているが、映画版では終着駅を大魔都京都に変更することで、西へ向かうほどにエントロピーが増大し物語張力が限界に達した時に真田広之が大爆破する方向に舵を切っている。
マリアビートルが本来持っていた娯楽的ポテンシャルを脚色によって拡大し、ちょっと逸脱して爆発してしまった。2022年度の新幹線大爆破賞をこの作品に捧げたい。
第6位 聖なる犯罪者(2019)
聖職志望の前科者が偶然にも身代わり神父になり村にも受け入れられていき本人も真の聖職者を目指そうとするが……いうありふれたシナリオであるが、信仰の意味を考えさせる徳の高い作品である。実話ベースではないものの、信仰が厚い東欧では犯罪者が聖職者に成りすますことが往々にしてあるらしく必ずしも荒唐無稽ではない、薄皮一枚の現実感がある作品である。
主演のダニエル(聖なる犯罪者太郎)の表情やビジュアルは、そのままリアル聖犯罪者を抜き出してきたのではないかと見まごうほどで、俺デミー主演男優賞レベルである。終盤に描写される方便としての信仰に背を向けて、メシを食らうダニエルの生命力が美しい。これが聖画だ。
第7位 シャドウ・イン・クラウド(2020)
「グレムリンと美女が爆撃機に!」というZ級のキャッチフレーズから想像できない、完璧な勝算に依って制作された傑作。
序盤の密室怪奇ニューロースリラー的な味付けから一転、物語の中間地点の物理的な上下反転を契機に発生するジャンルの飛躍に痺れてしまった。
この一点からは徹底的に「わからせてやる」ための戦いが始まり、「小西vs時田」のような徹底した決着へ向けて駆け抜けていく。
「ここぞ」という画面で終わるのも気持ちよく、実話ベースであることが仄めかされるエンディングも心地よい。知られざる犠牲者や戦いの姿をフィクションの力で語り直すのは『犬王』や『聖なる犯罪者』にも通ずる何かを感じる。志のある作品だ。
第8位 REVENGE リベンジ 鮮血の狩人(2020)
赤ずきんをモチーフに限界を超えた女性のリベンジを描く、リベンジアクションの秀作。RRRと同じ日に見たのに味で負けなかったので、相当に強い作品である。
原題『Hunted』が作品をよく表現している。誰が誰を狩るのかという謎が終盤まで緊張が持続させるので、リベンジアクション定型優良誤認パッケージは完全に損をしていると思う。
赤ずきん(RedSkin)から魔女(RedHag)への「変心」以降の展開が素晴らしく、変貌以降のヒロインの表情は顔デミー顔面賞であると持ちきりである。今年最大の掘り出し物である。
第9位 ノー・シャーク(2022)
サメ映画の極北。「サメに食われたい」とニューヨークの海岸をさまよう美女の独白で構成されたサメの出てこないサメ映画。
1時間49分、ほぼ「サメに食われたい自意識高めの偏執狂」の独白が続くのだけど、その自意識の高さと「チョロさ」が微笑ましく、だんだんとサメ女に感情移入をいだき始めてしまう。
本作品の「サメ女がもう一人増える」シーンは、俺デミー「悲鳴を上げて笑った」賞の受賞シーンである。おもしろすぎる。彼女の移動ルートをニューヨークの地図と見比べてみるのも面白く「そこにサメはいねーよ!!」と絶叫するまでが鑑賞体験のセット。ぜひ年末年始に楽しんでほしい。
第10位 1秒先の彼女(2020)
何事にもせっかちで「一秒早い」行動をしてしまうアラサー女子をを見つめ続けた「一秒遅い」男性を描いた、なんか粘質なSFラブコメディ作品である。
二人は生命活動のフレーム数がズレているので、メインの二人に接点がほとんどないのがユニーク。彼女視点の前編でふりまかれた伏線が、彼視点の後編で勢い余って余計のものまで巻きこんで回収されていく勢いの良さは心地よいものだ。
近似の傑作である『フローズンタイム(ChashBack)』とは、原題も含めて関連性を感じる。これは両方を見比べてもきっと楽しいよ。
なお、この映画を鑑賞したのが12月30日であり、編集部はベスト10入りを巡って揉めに揉めた。その結果、執筆者お望月さんFとАの責任でランキングを書き直すことになったのがこのランキングである。
押し出された作品は‥‥
もうすぐベスト10だったもの
スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2022)
年末の魔物「1秒先の彼女」にベスト10を奪われた作品。作品単体というよりもキャスティング功労賞でありシリーズへの敬意でありなんかそういう色々の義理許しであったが、最終的に転げ落ちてしまった。
映画鑑賞中の「あのシーン」どよめき。そして、劇場を出た後にシナボンで彼女に熱弁を振るう外国人青年という、観客の反応から栄養をもらうことができた作品である。俺デミーオーディエンス賞。
リョーマ! The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様(2020)
世界でいちばん面白いコミックシリーズである『テニスの王子様』の映画化作品。越前南次郎(リョーマ父)の引退の謎が明らかにされる。
犯行の手口はこうだ。テニスギャングの襲撃を受けたリョーマは撃ち込まれたボールにボールをぶつけて打ち返す。その時ふしぎなことが起こりリョーマは越前南次郎引退の現場へタイムスリップし、親子の対決を経て南次郎はリョーマに未来を見る。
そういうことになった。
犬王(2021)
十分に及第点だが、室町時代の人々が犬王から感じた未来の音楽が我々現代人から見るとコッテコテの古典であるという一点には惜しいものがある。もう一点、観客に対して未知への扉を啓くような展開があれば俺デミーなんらか賞に該当しただろう。
未来へ
今年は停滞の年にしようと決めていたものの、ここまで停滞することになるとは思わなかった。映画本数を順調に減らしてアウトプットも減少させた結果、ベスト映画の発表が12月31日なるという体たらく。それもこれも12月30日に観た映画が面白すぎたのが悪い。来年も停滞したり、さらにぎりぎりまで発表を伸ばしたりできるといいな。できるんじゃないかな。来年もよろしくお願いします。
最後に旧作を含めたスコア順のランキングを発表して終わります。年末年始の過ごし方の参考になれば幸いです。サブスクの作品は少ないから買うか借りるかしようね。えっへん。(2022年 おわり)
2022年映画ランキング(スコア順)
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