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アニメ化した望月記者がスーツケースでデビル菅官房長官を殴りつける映画『i-新聞記者ドキュメント-』(2019年の映画)

「小説家は体験したことしか書けない」という見識が話題になっている。残念ながらそれは事実であり、私は実際に体験したことしかこの場に書いていない。当方は完全ノンフィクションアカウントです。この記事で記載するアニメもデビルも実在ノンフィクションです。よろしくお願いします。

では、事実を元に虚構を生み出す「ドキュメンタリー作家」という職業は何を元に創作を生み出しているのだろうか。その答えの一つの到達点が「i-新聞記者ドキュメント-」というドキュメンタリー作品にあるのではないかと思う。

森達也(『A』『FAKE』) VS 望月衣塑子(東京新聞社会部記者)『新聞記者』は序章にすぎなかったー「フィクション」を越えた衝撃の「リアル」!今、あなたに問う。(公式サイトの惹句より)

先日の「新聞記者」のレビューに関しては多くの反響をいただいた。いわゆる政治的な視線を加えず演出的な論点に絞った感想文というものが貴重だったせいもあるのではないかと思う。『新聞記者』という作品自体は、今にして思えば、出演者やカメラワークの質も高く、語り甲斐のある作品ではなかったかと思う。

虚構のその先へ

「i-新聞記者ドキュメント-」という作品は、望月記者に密着しながら彼女のパーソナリティ(家族思いで集団行動がちょっぴり苦手なおっちょこちょい)を掘り下げつつ単純接触効果で好感度を高める作品なのかな?と思いきや、望月記者に対しても一定の距離を取り「社会正義と私憤を混濁させる」「規則よりも怒りが大事」「挑発を繰り返して個人攻撃を引き出す」という、赤裸々な戦術を描いている。

彼女を取り巻く支持者(新聞記者に対する支持者という存在もどうかと思うが)は彼女を完全に特攻兵器(対人地雷)として扱っており、「官房長官に一泡も二泡も吹かせてください!」「オラ警官!望月が来たぞ!質問されてえのか!」という方向の暴力装置として扱われているんですよね。
ペンは剣より強いのでペンで直接殴っても強い。そういう倫理観の界隈で彼女は暮らしているということが赤裸々に報じられているわけです。

アニメ化望月記者がデビル菅官房長官をスーツケースで殴りつける

物語の終盤、望月記者と森達也監督が別行動をします。
望月記者は選挙の応援演説に訪れた菅官房長官に対して憎々しい視線を送り続けます。森監督は首相官邸の前をうろうろして警察官に呼び止められます。

望月は官房長官を睨み続ける。
森は警官を前に騒ぎ続ける。
望月は睨む。森は騒ぐ。
睨む騒ぐ睨む騒ぐ睨む騒ぐ。
カットバックのスピードが加速していく。
EDM的な加速が頂点に達した瞬間、
なぜかスローモーションの菅官房長官が画面を横切り……

突然のアニメ化

マスコミが現実に敗れ膝をついた瞬間、アニメーション作画された望月記者と森監督がドキュメンタリーの枠を超えた願望を行使するのです。

アニメ化望月の挑発に怒り心頭に発し
デビル化する菅官房長官!!
スーツは弾け飛び額からは角!
背中には悪魔の羽が伸びる!!
嗚呼!烈女望月イソコもここまでか!
否!!彼女の額をみよ!!
角だ!!
DEVIL ISOKO……
官房長官の暴力には暴力で対処だ!!
スーツケースで殴りつける!!
CRASAAASH!!

一方、首相官邸前で押し問答を続ける森達也監督!

らちが明かないと感じたのか、こちらもアニメ化!!
怒りのあまりみるみると肉体が巨大化し全裸中年男性化!!
怯える警官隊を前に不敵な表情の映画監督森達也
極限大露出のまま横断歩道を渡る!!無敵だ!!

これは願望なのか?

なんで殴りつけたの?一方的に仕事相手への恨みを募らせてアニメーション化したポンチ絵上で殴りつける。この幼児的な願望の発露は何を意味するのだろう。

特に森監督の方は筋道が通っていないし巨大化して逃げるというドーピングコンソメスープみたいな真似をしている。突然実行される理不尽な暴力こそが、彼女たちが求めるものなのだろうか。

とにかく挑発を繰り返して暴言を引き出し被害者の位置に入り込もうとしているのが本製作チームの手口であることは作中からも明らかになっているのだけれど、実際に表現の暴力を振るった時点で説得力が手のひらからこぼれ出てしまうよ。

物語は、暴力に満ちた「安部ヤメロ」コールを嫌な顔で見つめる望月記者とナチス(またナチス!)の恋人が人民裁判で処された記録をカットバックしながら終わる。

この演出の意図が全く分からなかったんだけど、望月記者を被害者的な立場(さっき菅官房長官を一方的に殴りつけたばかりなのに?)で描写しているのだろうか。それとも政府に対する民衆の人民裁判の愚かさを意味しているのだろうか。

「i-新聞記者ドキュメント-」
とにかく全体的に怒声と不快感に満ちた挑発的なドキュメント。残り8分から急激にアニメ化を開始して鬱憤をアニメで晴らして終わる、という独特な価値観をもったドキュメンタリー作品。ファンなら。

未来へ

それはそれとして、最近はネットフリックスで「ドキュメンタリー映画」を見ていますが、めちゃくちゃおもしろいですね!!「イカロス」に「ザ・ライダー」に「レイダース!」、ドキュメンタリー映画、最高!!

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