見出し画像

ホワイトバースデー

駅にもうすぐ着くというので迎えに行くと、娘はすでにいつもの場所に待っていて寒い寒いと車に乗り込む。さっきまで少し雪が降っていたけれど、もうやんでいた。娘が「ホワイトバースデーやな」と自分から言いだす。わたしも先ほど妻に同じことを言っていたと伝える。

今日は友だちと日本橋に遊びに行って専門店のりんご飴を食べたそうだ。帰宅するとそそくさと部屋に上がって、部屋着にしている中学の体操服姿で降りてくる。目の辺りは少し化粧をしているようで、髪の毛もいつになく真っ直ぐになっていた。

誕生日の晩御飯は手巻き寿司が多くて、今日もやっぱり手巻き寿司。妻が選び抜いたブリやサーモンは新鮮でとても美味しいのに、娘は好物のいかオクラばかり食べている。

娘が日本橋で350円で買ったというイヤリングを試しにわたしがつけてみる。少しみんなで盛り上がって、そのままつけていることを忘れて食事をしていたら、食事もかなり進んだ頃に娘がふと気づいたようで激しくむせていた。

誕生日ケーキは近くの店のお気に入りのアップルパイ。妻が毎年買いに行ってくれるが、ちょうどお雛さまの時期なのでアップルパイがなくてお雛さまケーキばかりの年もある。今年は無事に買えたようだ。好きなものばかりで嬉しそうな娘。庶民的に育ってくれてありがたい。

食後にスマホを手にした娘が絵の上手い友人が描いて送ってきたという画像をハイテンションで見せてくれる。私は読んでいないが娘が大好きな人気漫画の登場人物。「絵のうまいとこだけは尊敬する」と楽しそうな娘。きっと、こんなに喜んで褒めてくれる友人がいたら描くほうも楽しいだろう。

「にーわのシャベルがー、いーちにちぬれてー」と突然に娘が歌って「懐かしいなあ」と声をかけてくる。 保育所でみんなで歌っていて、家に帰ってきても歌っていた。

「そういえば、久しぶりにすりかえ仮面を思いだしたのだけど、おぼえてる?」と聞くと「さあ、見たら思いだすかも」と興味なさそうにスマホを見ながら答える。


いろいろなことが記憶に残り、いろいろなことを忘れていく。思い出とは過ぎ去ったことではなく、今でもここに残っていることだと言ったのは誰だったか。


こんな1日も書いておかないとほとんど残らないのだろう。忘れてしまうとさみしいので、ここに記す。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?