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主観を解放するアーティスト、河野ルル - ubies CEO 庄野裕晃のコラム

昨年11月に渋谷ヒカリエで開催した”WE ARE IN THE SAME GAME 2021”エキシビジョンの関連イベントとして、河野ルルさんと、パラスポーツ女子走り幅跳び選手の前川楓さんをゲストに招き、トークセッションを開いた。そこで前川さんのエピソードを聞いて、なぜみんながルルさんの絵に惹かれるのか、その理由がはっきりと分かった。

ubies CONSORTIUM主催による、アートに想いを乗せてアスリートを応援するプロジェクト "WE ARE IN THE SAME GAME" で、ルルさんの作品をスカーフにして前川さんに届けたことをきっかけに2人は出会った。その後、パラリンピックが終わりようやく一息ついた頃、前川さんは、念願の原画を見るために大阪枚方のDERMATOGRAPHで開催されたルルさんの個展を訪ねることに。

その頃、前川さんは全身全霊を傾けた大会が終わって燃え尽きてしまい、次の大会を目指したいのかどうかも分からずにいた。そんな時に会場の壁一面に彩られたルルさんの原画を見て、気持ちが激しく揺さぶられる。そして、その日の夜中に「なぜ、自分がこんなに陸上を頑張ってきたのかがわかった!」と、居ても立っても居られなくなりルルさんにメッセージを送ったそうだ。

ルルさんの WE ARE IN THE SAME GAME 参加作品

義足は個性を表現するファッションアイテムだと、全力で人生を楽しむ前川さんだが、義足になった当初は絶望し、泣いてばかりだった。そんな前川さんが、ルルさんの原画が発するパワーを浴びて気づいたのは「自分が頑張ると、家族を始め、周りの人みんなが喜んでくれる。それが嬉しくて続けているんだ。そうすると、また、みんなが喜んでくれる!」ということ。そして、前川さんは2024年のパリ大会を目指すことを決めたと言う。

ルルさんの作品に触れて希望の光を掴んだのは、前川さんだけではない。ルルさんに会うために大阪から渋谷ヒカリエにいらっしゃったファンの方が、次の様に話してくれた。「仕事を続けるべきか悩んでいる時にルルさんの絵に出会って、好きなことをやってもいいんだと背中を押してもらった気持ちになり、仕事を辞めて本当にやりたいことを選びました。そのおかげで今とても幸せなんです。」

ルルさんと前川楓さんを招いてのトークセッション @渋谷ヒカリエ

ルルさんの絵は、普段は奥深くにある自分の中の何かに届き、もっと好きなことをやろうと気づかせ、そして受け止めてくれる。ubisum by ubiesでは"主観の開放"をテーマに掲げ、"見る人の心をどれだけ動かせたか"が勝敗に大きく影響する仕組みを取り入れたが、前川さんやファンの方のエピソードからも、ルルさんが初代グランプリを獲得した理由がよく分かった。

好きなことを好きなようにできずにいる子どもたちに、笑顔になってもらいたいからと、ルルさんは壁画を描き続ける。その創作活動の様子を記録した映像があるので、ぜひルルさんの思いに触れてほしい。

子どもたちが笑顔になることが自分自身の大きな喜びとなり、幸せの連鎖となっていく。この連鎖こそがアーティストとしての強さにもなり、多くの人を明るく幸せな気持ちにする力となっているのだろう。

📩 このコンテンツは、2月14日配信の ubies Newsletter vol.7 に掲載されたものです。

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