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医療業界の市場規模ってどのくらい?「2025年問題」が迫る日本と世界の医療費や統計データをまとめてみた

こんにちは、Ubie PRチームです。医療業界の「いま」と「これから」をお届けする #オープンファクトブック 、第4弾は医療業界の市場規模についてです。

コロナ禍という社会情勢を受け、あらゆるテック領域のなかで急成長中といわれるヘルステック、また今後の動向が注目される医療業界の全体像が掴めるよう、さまざまな統計データをもとに市場規模に迫ります。

国の医療費支出にみる医療サービスの市場規模

医療業界の規模を知るのにまず参考となるのは、国の医療費支出額です。

「医療費」とは、病気やけがをしたときに、医療機関や調剤薬局などで診察・投薬・治療その他必要な医療サービスを受ける際に発生する費用のこと。つまり、医療費=医療サービス費であり、医療サービスを提供する病院・診療所・調剤薬局を対象とした市場規模を示す数字といえます。(※みずほ銀行 産業調査部 参考)

Ubieの売上を構成する「ユビーAI問診」は病院・診療所向けのサービスなので、わたしたちも現状では医療サービス費を市場規模として参照しています。

日本の医療費は右肩上がりで成長し続け、およそ30年で2.2倍増加。 現状の最新データとなる2018年度は43兆3,949億円と過去最高を更新しました

高齢化対策が求められる日本の医療費

医療費が増加する要因には、「医療技術の高度化」や「人口の高齢化」などがあります。

まず医療技術の高度化についてご紹介します。近年だと2016年に医療費が下がったのは、前年度(2015年度)に高額なC型肝炎治療薬が登場し医療費が大きく伸びたため、その反動だとされています。

次に人口の高齢化について。かつて社会の授業で習った方も多いと思いますが、日本の人口は2008年から減少しています。それどころか、2025年には国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上となる、いわゆる「2025年問題」がすぐそこまで迫っています

高齢者は若い人に比べて病気にかかりやすく、医療機関を受診する頻度も高まり、処方される薬の種類や量も多くなる傾向があります。高齢者の医療費の自己負担額は原則1割で、残りは国や自治体の財源=税金によって賄われます。そのため、支出が増え財源が大幅に圧迫されるのでは、と懸念されています。

その対策として「高齢者の医療の確保に関する法律」(1982年制定、2015年改定)第9条で、制度の持続可能な運営を確保するため、6年を1期(※1)として、医療費適正化の基本方針や計画を定め推進することが定められています。2021年現在は医療費適正化計画の第3期にあたります。

※1
第1期(2008~2012年度)、第2期(2013~2017年度)は5年を1期として実施。第3期(2018~2023年度)からは6年を1期としている。

近年の医療費支出は、2〜3%程度の低い伸び率を維持しています。これは上記の医療費適正化計画が進んでいることが影響しているようです。とくに2018年度は、診療報酬改定(※2)や薬価制度抜本改革(※3)で「高齢者における調剤医療費の適正化」が起こったため、過去最高の支出額となったものの、前年度比0.8%増とゆるやかな増加に留まりました。

※2
診療報酬とは、医療機関が患者に施した医療行為や医薬品の処方に対して支払われる医療費のうち、保険者(患者が加入している医療保険)から支払われる料金のこと。医療の進歩や経済状況とかけ離れないよう、通常2年に一度改定される。

※3
保険診療の場合、医師が選ぶ薬剤は、厚生労働省が定める「薬価基準」という価格表の記載範囲内のものとされている。2018年度の「薬価制度の抜本改革」では、この薬価の決め方そのものが大きく更新され、薬価等の1.65%のマイナス改定のほか、改定時期が2年から毎年に変更されるなどが決まった。

では、医療費は今後、どう変化していくでしょうか。

短期目線では、新型コロナウイルスの影響により、2020年度の医療費は「大きく減少した」可能性が高いとされています。手洗い励行やマスク着用などによる衛生面の向上、外出の減少に伴う「外傷の減少」、いわゆる「受診控え」などが関係していると考えられているためです。これは2022年秋に発表される「2020年度国民医療費」で明らかとなります。

ただし、長期的にみると医療費は今後も右肩上がりで増加すると見込まれています。政府の推計では、2040年の医療費は2018年度の約1.7倍の66兆7000億円です。

グローバルの市場規模も拡大、世界の医療費は16年で3倍増へ

他国や世界全体の医療費はどうでしょうか。

まずは各国の医療費を比較してみましょう。下記は各国の医療費支出総額(公的支出分と民間・個人支出分の合計医療費)と国別順位です(※4)。日本は人口の少なさや国土の狭さに反し、第3位にランクインしています

※4
・医療費支出は医療サービスや医薬品への消費支出で、資本的支出(病院の建設費、医療施設・設備の購入など)は含まない
・公的支出分には中央政府、地方政府、地方自治体のほか公的社会保障機関の支出及び企業や個人に義務付けされた民間保険を含む
・個人・民間支出分には医療機関での窓口での支払い分(費用負担分)、民間療法への支出、自発的な民間保険への支出を含む

次に、世界の政府支出に対する医療費支出ランキングです。これは政府の総支出に対する公的医療費支出の割合を国別でランキング化したものです。日本は第2位にランクイン。それだけ日本は国内における医療の重要性が高いことが分かります。

また、世界全体の医療費も、右肩上がりで増加し続けています。世界中の大学や研究所の教授らが参画するGlobal Burden of Disease Health Financing Collaborator Networkによると、全世界の医療費は、2014年の9.21兆ドルから、2040年にはその3倍強の24.24兆ドルに達すると推計されています。

“アフターコロナ”で、世界の医療体制や医療費支出がどう変化してくか、その動向に注目が集まります。

まとめ

世界中で拡大する医療費(医療サービス費)。世界に先駆けて超高齢化社会に突入する日本の医療業界は、今後ますます規模が拡大する見込みです。

「2025年問題」を4年後に控えるいま、どんな改革が進められ、どんなサービスやテクノロジーが普及しているか。これらを把握しておくことで、医療業界の未来が見えてくるかもしれません。

次回は厚生労働省が推進する「地域医療連携」を紹介予定です。ご興味ある方はぜひマガジンをフォローしてくださいね。

参考・出典

「みずほ産業調査Vol.65」
 みずほ銀行 産業調査部(2020年)
「平成30年度 国民医療費の概況」
 厚生労働省(2020年)
「医療費適正化基本方針の改正・医療費適正化計画について」
 厚生労働省(年度不明)
「2018年度国民医療費は43兆3848億円、高齢者の調剤医療費減で伸び率は低い水準に抑えられる―厚労省」
 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(2020年)
「最近の医療費の動向-MEDIAS-(令和2年度)」
 厚生労働省(2020年)
「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」
 内閣府(2018年)
「世界の医療費 国別ランキング」
 GLOBAL NOTE(2019年)
「政府支出に占める医療費割合 国別ランキング」
 GLOBAL NOTE(2018年)
「Future and potential spending on health 2015-40: development assistance for health, and government, prepaid private, and out-of-pocket health spending in 184 countries.」
 THE Lancet(2017年)

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