メビウスの罠
暗い夜、真っ白なワンピースを纏う少女の足元は透けていた。
その側では、霊感のある少女が、その肩を抱いてしきりになだめている。
おびえる野次馬たち。
みんなきゃあとかぎゃあとか騒いで
その幽霊が少しでも動こうものなら絶叫してた。
私は人生で初めて見る幽霊におぞましい寒気で全身を震わせながらも、ツカツカと彼女の前に進んで行った。
わからない、足が止まらなかったのだ。
「どうしたの?」
「何か辛いことがあったんでしょう?」
「何か力になれることがあれば教えて欲しい」としきりに声をかける。
幽霊の少女は震えるくちびるで
あ、あ、あ、「...私は助かりたい」
「うん、わかったよ。今すぐには難しいかもしれないけど、一緒に解決していこう。」
そこでパッと目が覚めた。
冷や汗で背中がぐっしょりと濡れていた。
私が少女にかけていた言葉は全て、
私自身が飛び降り自殺をしようとしていたときに、誰かが私にかけてくれた言葉だったのだ。
私は一歩、成長できたのだろうか。
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