引っ越してまず図書館に行って体験した、よかったことの話
遠方へ引っ越して、しばらく経ちました。私はいつも、引っ越したらまず、地域の図書館の利用登録をします。本が好きだし、図書館が好きなのです。
先日初めて図書館に行った時、いいことがありました。この記事は、その記録です。
知らない場所へ
今回の引っ越しは、だいぶ遠くに移動しました。物件探しの際に初めて行ったほどの地域で、親戚も友達もいません。仕事は幸いリモートワークで続けているため、「新しい職場での人間関係」もありません。このままではお籠りまっしぐら。なんとか知り合いを作りたいところです(※)。
※お籠りだと心身に不調を来しそうなので……
※過去10年間に5回引っ越しをしてきましたが、これまではいずれも近くに職場や友人がありました。「近所」という枠で知り合いを作ったことはほとんどありません。SNSで知り合った人が近所住みだったとか、隣人が尋常じゃなく親切な人だったとか、そのくらい。今回、どうしていこうかな……。
初めての図書館で、「知り合い」に出会う
何はともあれ、免許証の住所書き換えが済んですぐ、図書館へ行きました。
その土地の図書館は、広くて、明るくて、本がたくさんありました。嬉しい。
棚をゆっくりと見て回ります。知っている作家の名前や、好きなコンテンツを特集した娯楽誌、以前読んだ本などが目に入ります。
そんな時、まるで旅先で偶然古い知り合いに会ったみたいに、驚き嬉しいのです。
これは、都内で引っ越しをした時には、あまり感じなかった感覚かもしれません。今はまだ、見知らぬ土地に引っ越してきたばかり。人々の言葉のイントネーションの、不安定な船のように思いがけない浮沈にまだ戸惑っている私に、書物は変わらない姿を見せてくれます。それがこんなに心強い、そう知れたのはよかった。
これは「引っ越して図書館に行って嬉しかったこと」、その1。
素敵なレシピ本に出会う
そして、嬉しかったことその2。
レシピ本の棚で、ある本を見つけました。
スープ作家・有賀薫さんの、『365日のめざましスープ』。
(有賀さんについて:刀剣男士にっかり青江が好きな人は、2020年夏にいわゆる「ご自愛砲」でキャベツ畑のイラストが投下された際、ある審神者さんにより「キャベツスープのレシピ」が拡散されていたことをご存知かもしれない。)
こちらも、「知らない土地で知り合いに会った」ような嬉しさで、借りてきました。
有賀さんのnote記事はたまに拝読していたけれど、書籍を手に取るのは初めてでした。読んでみると、写真のスープがおいしそうで、レシピがわかりやすく、試してみたいアイデアがたくさんありました。よいレシピ本です。
でも、私がすごいなと思ったのは、それだけではありません。文章が、うまい。「うまい」というのは礼を失した表現かもしれず、恐縮しつつ、詳しく申し上げようと試みてみますと、洗練されて読みやすい文章であるのはさることながら、中には鮮やかな情景が目に浮かぶような美しい描写があり、さらに全体を通してその温かい心根や明晰な思考がしっかり滲んでいる、という感じを受けました。
「はじめに」で「文才!」と思うレシピ本って初めて見た(特にp11の『毎朝を〜』のくだりの観察と感性と描写にしびれるし、『そうそう、』で「しかも構成が粋! かっこいい!」となる)。
読むことそのものが幸せなレシピ本。なんて素敵なんでしょう。
まだ読み途中ですので、残りもじっくり味わって読みたいと思います。心に浮かぶスープも、文章そのものも。
文章を書くこと、食べ物を作ること
そんな折、先日ご本人が投稿されたnoteに、こんな一節がありました。
こんな素晴らしいことある?
思わず太字にしてしまった。
私が、読んでいて、「読む行為が幸せ」と感じた文章は、まさに、『心満たされる何かであ』るように、と考えられて書かれたものだったのです。
思うに、食事そのものも、生きるために食べるという「実用」の側面もありつつ、五感と心を満たす営みでもあります。言葉に関するこの記載は、その特性を見事に含むようだ、と、思いました。
書いていて気が付きましたが、有賀さんの「スープ作家」という肩書きに、「料理」と「書き物」はすでに併存しているんですね。素敵なありようだなあと感じました。
実用の文章を心して整えることで、実用以上のものを、読み手に届けられる。それは嬉しい気づきでした。
初めての図書館は、知り合いの集まる場所のような安心感だけでなく、素敵な本との出会いもくれたのでした。この土地のことを開拓しながら、今後も、時折図書館に行こうと思います。
ごきげんオタクライフに使わせていただきます🌱