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【旅の話】急行サハリンの旅③

静寂に包まれた森の中を抜けていく列車の音は、本当に心地の良いものだった。飲酒や騒ぐことを禁止していることもあり、車内も落ち着いた雰囲気に包まれている。停車駅に止まるごとに、車掌さんや乗客が極寒の中でたばこを吸ったり談笑している姿は、小説の一部を見ているようで不思議な気分になった。

残念ながらこの通り窓ガラスはとっても汚れているので星空は見えず。人工光がない区間はすごく綺麗だろうな…

車内は暖かく、日本人女性には十分な寝台スペースに毛布やシーツが用意されている。基本的に乗り物で眠れないのだが、ここまでしっかり寝具が用意してあると安心感さえ得られれば短い睡眠がとれる。今回の旅では他の乗客が同室にいなかったので気兼ねなく過ごすことができた。(ロシア人と親睦を深めようと沢山おやつを用意してきたんだけどね。)

旧日本領、最北のポロナイスクを超えていよいよ北の果てへ向かう。


■3日目

下車する駅が近づくと、車掌さんが起こしに来てくれるのだが、母ちゃん味が強い。(我々は本当に子どもだと思われていたかもしれないけれど。)終点のノグリキ駅は一面美しい雪に覆われていた。列車から降りると、穏やかな日差しに雪がキラキラと反射して思わず声をあげてしまう。車掌さんにスパシーバ!と声をかけて小さな駅舎を抜ける。

そこでまず何を目にしたかというと、犬。めっちゃでかい犬。人懐っこいけどあくまで野犬。刺激しないようそっと逃げた。

夕方の復路列車まで時間はたっぷりあるので、ノグリキの街まで歩いていくことにした。これがかなり遠く、雪道かつバックパックを背負っての道のりだったのでしっかり1時間ほどかかった。(一生懸命歩いていたからか、途中で鼻血がでた。)

ノグリキの街はコンパクトで半日もあれば十分まわれる。とりあえずカフェで休憩して、街のはずれにある唯一の観光スポット(?)であろう郷土博物館へ向かう。市内は循環バスが走っているので、あまり心配せずバス停で待っていれば良い。1番バスが駅⇔博物館を循環する。ただ次のバスまで20~30分ほど待機する必要があるので寒い中待つ場合は要注意。

博物館ではニブフ人らしき女性が展示の案内をしてくれた。わざわざGoogle翻訳を利用しながら一周してくれてありがたい。それにしても「ニェッズナユルスキー(ロシア語分かりません)」とたどたどしい発音でも案外伝わるものだな。

そのまま駅へ向かうバスに乗り、ノグリキの街を後にした。短い滞在を終えて往路と同じ2等列車へ乗り込み、いつかまた訪れる日が来そうだなというほのかな思いを胸にしまった。


ノグリキ:16:53発

ユジノサハリンスク:7:11着

帰りは14時間の列車旅。駅のポスターを見て感慨深くなってしまう。


■4日目

早朝のユジノサハリンスクは多くの人が行きかっていた。とは言っても外はまだ真っ暗。駅周囲には7時頃から空いているカフェがあるので、とりあえず朝食をとりに向かう。特別なにもしていないが、やはり寒い中で過ごすのはそれなりに体力を消耗する。

美しく整然とした街並み。駅周囲の通りはきれいに除雪されている。


帰路の便は14:30だったので、12時すぎに空港へ向かう目途をつけ、バラまき用のお土産を買いにスーパーへ向かう。どこも大きな差はないが、空港近くのcity mallが規模も大きく商品も豊富だった。店員さんに「この商品を箱買いしたいんだけど…」と翻訳画面を見せれば「これは在庫ないんだけどコッチならあるよ」と親切に対応してくれた。ちなみに日本のお菓子も近所のスーパー並みに揃っていたので驚いた。

お土産を鞄にギュウギュウに詰めて、予定通り12時頃空港へ向かう。正面から見ると横に長いつくりになっているが、我々の出国ゲートは一番左端にある小さな入り口なので注意が必要だ。中に入る際セキュリティチェックがあるが、何度でも出入りできるので心配はいらない。なかなかイミグレが開かなかったので、隣接の規模の大きなゲートへ向かいコーヒースタンドで一休みする。

結局、出国手続きが開始されたのは13時をずいぶん過ぎたところで、やることも無いのに無駄に早くきてしまったわけだ。トイプードルみたいな小型の麻薬犬(?)が係員にしっぽを振りながら一応仕事をしていた。入国ほどの時間はかからず出国手続きをし、待合室で20分ほど待機した後、予定時間を少し過ぎて無事にサハリンを出発した。(待合室には簡易カフェがあったので早くここへ辿り着きたかった。)


ユジノサハリンスク 14:30発(現地時間)

新千歳空港  14:00着(日本時間)


出国の際、現地に住む日本人(在留者かな)に、日本人か?限度額以上のお金を持っているから半分持ち出して日本で返してくれ、と頼まれた。金銭のやり取りは問題になりかねないので、しっかり申告してくださいと伝えて断ったが、旅の最後に危うくトラブルに巻き込まれるところだった。勘弁してくれ。というかよくそんなことを堂々と係員の前で言えるな…

晴れた上空から見下ろすサハリンの大地は、とにかく一面森林に覆われていて、日本で失われた固有の自然がここにはまだ残っているのではないかと小さな期待を抱いた。次は絶対に夏に訪れようと決心しサハリンの旅を終える。


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今まで旅行と歴史・文化を結ぶことをしてこなかったことが、私の中にある大きな課題のひとつなので、今回は予備知識を携えようと、こちらの2冊を読んでみた。本当に何も知らないことだらけだったので、ほんの一片でも理解をしてその土地に足を踏み入れられたことは、貴重な経験となった。サハリンと日本との歴史については、引き続き興味関心をもっていたい。


サハリンを忘れない 日本人残留者たちの見果てぬ故郷、永い記憶

ロシア極東 秘境を歩く

⇒サハリンを含むロシア極東の魅力がたくさんつまった本なので、ぜひご一読を!


また、訪露に関する言語の問題は、翻訳アプリが解決してくれたので助かった。それでも下記の言葉くらいは覚えておいて損はないし、役に立つ場面が多くあった。(※発音はこの通りではありません…)

・日本/日本人:Япония(ヤポニヤ)  / японский(ヤポンスキー)

 ヤポネ~って何回も聞いたし言った。

・ありがとう:Спасибо(スパシーバ)

・1/2(旅行者分の数字):один(アジン) / два(ドゥバ)

・私はロシア語が分かりません:Я не понимаю русский(ヤ ニェット ズナユ ルスキー)

・駅:станция(スタンツィヤ)

現地で色々な言葉を見ていると、なんとなく英語(ローマ字)と互換性が見えてきて、この単語はこういう意味かな?と想像するのも楽しかった。


見ごたえのある観光地ではないけれど、「近くて遠いロシアさん」を体験するにはとてもお手軽な場所だと思うので、色々な人におすすめしたい。夏場は山・海ともにアクティビティもあるみたいなので、ぜひ避暑に訪れたいものだ。

早くコロナが落ち着き、すべての国で生きる人々の生活が穏やかなものになりますよう。

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