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月の壁 ~ミナコの月 2

■記憶のペイジ。


 
 
女性の私から見ても、ユリは可愛い。

 
それも、幼稚な可愛らしさじゃなくて、
なんというか、
 

 
こう、ちゃんと大人なんだけど、
ちょっとした仕草とか、
ふとした表情とか、
まなざしとか、

 
 
人に可愛くみられたい とか、
そういう、したたかな計算じゃなく
自然の可愛らしさ。

 
 
 
それなりにしっかりもしててるけど、
いい感じで抜けてもいる。
 


このバランスが絶妙で、
愛さずにはいられないというか、
自然と誰からも愛されてしまう。


 
 
 
 
そういえば、高校時代、
硬派で通っていたサッカー一筋の
飯田くんも、
唯一、ユリからの告白だけは、即、オッケーして
高校卒業するまで、ずっとつきあってたっけ。


 
 
でも、一方で、
ユリなら仕方ないって、
女子はみんな諦めたんだよね。


 
 
…というか、
そもそもユリに勝てる同級生の女子なんて
一人もいなかったし、


 
少なくとも、私は、
ユリには勝てないって思ってた。


 
 
少なくとも、私は、そう思ってた。
 
 
 


 
「…ナコ?  ミナコ? どうしたの? 」


 
ミナコは、ユリの呼ぶ声に、
ふっと我に返った。
 

 
「ごめん、さっき、私が右腕叩いたの、痛かった?
それとも、本当は、映画に一緒に行けなくなったこと、怒ってる?」
ユリは、ちょっと困惑した顔で、ミナコの顔色をうかがっていた。
 
 

「え? あ? ううん。 大丈夫。 ダイジョウブ。
ユリって、昔っから、相変わらず、可愛いな~って、
ちょっと、オヤジ入ってたかも。」

 
 
ミナコは、たわいもない冗談を言った。

 
 
 
「もぅ、ミナコったら、オヤジ入ったらヤバいって。」
 
ユリも、たわいない冗談で切り返した。

 
 
 
 
 
…そう、そうなんだ。
 
ユリには勝てない。
 


 
 
だから、最初から飯田くんのこと
距離を置いて、醒めた目で見てたんだ。
 
 
 

 
 
ミナコは、すっかり忘れていた
遠い記憶のペイジをめくった。
 


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