読書メモ:サッカーとは何か①
「サッカー」とは何か(林舞輝 著)
を読みました。とてもいい本でした。
頭の中にインスピレーションが湧くと同時に、このまま放置するのがもったいないと感じるような本でした。
目次要約を通じて、頭の中を一度整理し、この本のことを忘れてもよい状態にしたいと思います。
本の題名
「サッカー」とは何か
副題
戦術的ピリオダイゼーションvsバルセロナ構造主義、
欧州最先端をリードする二大トレーニング理論
目次
はじめに
第一章 戦術的ピリオダイゼーション
生みの親、ヴィクトール・フラーデ教授
「Modelo de jogo」はプレーモデルか、ゲームモデルか
ゲームモデル(試合模型)とは何か?
実践的ゲームモデルの作り方
ゲームモデルを支えるプレー原則
プレー原則=行動規範は自由を奪うのか?
ゲームモデルとプレー原則の具体例
そもそも「戦術的」とは何か。なぜ「ゲームモデル」なのか
「戦術的」になるための諸法則
「ピリオダイゼーション」とは何なのか
「ピリオダイズ」=期分けする
期分けの方法
スポーツにおけるピリオダイゼーションの歴史
従来型ピリオダイゼーションから戦術的ピリオダイゼーションへ
一週間のサイクル:モルフォサイクル
「量が多い」「負荷が高い」「インテンシティが高い」とは、どういうことなのか?
では、「負荷の調節」とは何を指すのだろうか?
筋肉への負荷の種類
モルフォサイクルの詳細
インテグレーテッド・トレーニングとは別物なのか?
◎図解でわかる戦術的ピリオダイゼーション
第二章 構造化トレーニング
パコ・セイルーロとは何者か?
要素還元主義vs構造主義
「デカルト式」への批判
トレーニングの「目的」と「相互作用」というチームスポーツの特異性
「サッカー選手」の自己構造 Self-Structured Footballer
なぜ「能力」ではなく「構造」なのか。「スピード」の一例
「個人」の構造の中身を育てる、とはどういうことか
自己構造化に対する指導の罠
人間の「自己構造化」のキーは、「多様性」と「適応能力」
練習メニューを組む際の4条件
3段階のコンディションレベル
構造化トレーニングのプロセス:構造化マイクロサイクル
構造化マイクロサイクルにおける5種類の負荷
プレシーズンの準備
シーズン(リーグ期間中)のトレーニング
移行期での対応
5種類の構造化マイクロサイクル
FCバルセロナの実例
構造化トレーニングvsジム
パコ・セイルーロとモウリーニョの出会い
◎図解でわかる構造化トレーニング
林舞輝インタビュー「旅の終わり」
最後に
参考文献
ひとまずの雑感
この本は「(ある意味で)特異なアイディア」を丁寧に説明している印象があって、目次だけでは具体的なことが読み取りにくい部分が多いのではないかなあと思う。
もう少し小見出しの内容を丁寧に追って、本の構造をつかんでいきたい。
以下、戦術的ピリオダイゼーションを、「戦ピリ」と表現する。
以下、読書メモ
第一章 戦術的ピリオダイゼーション
生みの親、ヴィクトール・フラーデ教授
戦ピりは、従来のトレーニング方法に大きな疑問提起から始まった、サッカーとトレーニングの革命的な概念と方法論
ヴィクロール・フラーデが提唱。特徴的なのは、人が学ぶ仕組み(脳、中枢神経、運動ニューロンなど)に着目した点。サッカーに限らず、幅広い学問分野からの知見を応用している。
戦ピリの定義
「従来の身体コンディショニングのためのピリオダイゼーションに、さらにチームの戦術的要素(プレー原則・プレーモデル)を組み込んだ、『意思決定』の統一による『チームシンクロ』を目指すトレーニングメソッド」
「Modelo de jogo」はプレーモデルか、ゲームモデルか
ゲームモデル(試合模型)が適切な解釈に近い。
ゲームモデル(試合模型)とは何か?
ゲームモデルは、戦ピリを理解するための重要&根本概念。
すべてのトレーニング・練習メニューは、ゲームモデルに基づいて作成、実行される必要がある。
ゲームモデルは、戦術的地図。あらゆる状況を認識し、考えるための共通の地図。(※個人的には、戦術的コンパスと言い換えたい)
実践的ゲームモデルの作り方
①理想のサッカー(プレーイング・アイディア)を考える
理想のサッカーと、プレーモデルとの差⇔理想と現実との差
理想のサッカーだけを考えていても、現実(既存の環境や、既存の選手)に即していないと、うまくいかない。
②文化と歴史(国やチーム)
周辺環境が要求するスタイルに応える必要がある
③構成要素としての選手
選手に合わせたゲームモデルであること。選手の特性を見抜く力も必要。家でいうと、だれが住むか、を考える。
④システム・フォーメーション
家の間取り。理想をどう実現するかを踏まえて考える。
⑤チームの目標
なんのために、何をゴールにして、プレーするのか。その目標につながるモデルであること。
⑥そのほかの要素
練習環境、対戦相手のレベル(突破したい大会のレベル)
※個別の相手の対策は、「ゲームプラン」で対応する。
ゲームモデルを支えるプレー原則
ゲームモデル(⇔行動規範)・・・選手の理解、表現しやすいようにまとめたもの
無駄なことを思考する必要を削る。プレー原則により「ゲームを自動的に理解し、プレー選択する」
プレー原則の設定には・・・
①4局面で設定する。
②主原則⊃準原則⊃準々原則・・・という、原則のブレイクダウン
シチュエーション化とタスク化・・・どんな状況を、どんな原則で解決するのか
試合の状況を設定(シチュエーション化)し、その中で大切な原則を提示・要求する(タスク化)
プレー原則=行動規範は自由を奪うのか?
自由を奪わない。完全な自由よりも、テーマのある自由を提供する。
ゲームモデルとプレー原則の具体例
(略)
そもそも「戦術的」とは何か。なぜ「ゲームモデル」なのか
戦術的なチーム
「明確なゲームモデルを全選手が理解・浸透しており、全選手がそのゲームモデルのプレー原則に基づいた判断とプレーが適切に行えるチーム」
つまり・・・
明確なゲームモデルがある。
全選手が理解・浸透している。
全選手がプレー原則に基づく判断が適切に行える。
戦術的な選手
「チームのゲームモデルに適応し、そのゲームモデルに基づいたプレー原則を理解したうえで、それに沿ったプレーを適切に選択・判断できる選手」
つまり・・・
チームのモデルに適応できる。
モデルに基づいた原則を理解している。
モデル・原則に沿ったプレーを適切に選択・判断できる。
戦ピリの大きな目的:
全選手が、無意識で、プレー原則を反射的に遂行できるようになること
戦ピリのサッカーの解釈・・・断続的な判断と意思決定が求められるスポーツ
→その判断と意思決定を支えるのが戦術。また、限りなく早い判断が求められる。
→戦術の理解と意思決定力を、無意識レベルにまで向上させるのが"サッカーのトレーニング"
あらゆる状況に慣れ親しむことで、速く効率的なプレーを実現できる。
戦ピリの定義の言い換え
「戦ピリとは、ゲームモデルとプレー原則によりチーム内の無意識での意思統一をする訓練、『シンクロ』させるトレーニング方法。これを、従来のフィジカルトレーニングのぴりおだーゼーションと組み合わせたもの」
モウリーニョ曰く「チームを率いるうえで最も重要なことは、確かなモデルと確かな原則を持つこと、それらをよく理解すること、そしてそれらを適切に選手に落とし込むことだ」
「戦術的」になるための諸法則
方法論的原則(⇔トレーニングの法則)・・・戦ピリにおいて、練習メニューを作る際に心がけること
①特化の法則・・・ゲームモデル・プレー原則に基づいており、かつ、意思決定(認知判断実行)が含まれている練習であること
②傾向の法則・・・改善したいプレーや頻出するプレーを、それ相応の頻度と密度で練習を行うこと
③複雑系の進行とバリエーションの法則・・・同じプレー原則を、異なる練習で学ぶ。「選手の学びは非線形のプロセスで発達する」ということを前提に、多様な練習をすること。
④4局面の法則・・・練習内に4局面が含まれていること。
⑤カオス&フラクタルの法則・・・カオス性とフラクタル性を持つ練習であること。複雑系こそ、サッカーの本質。
フラクタル性:サッカーをサッカーたらしめる要素が欠けていないこと。(パスだけの練習=シュートがない→フラクタル性が欠けている)
カオス性:微細な差が大きな変化につながるような設定であること(1on0ののように、まったく型どおりに進む練習→カオス性が欠けている)
※雑感→個人的に、「フラクタル性を担保するもの」「カオス性を担保するもの」を設定しておいたほうが、この法則を満たしやすいと思う。
⑥組織単位分けの法則・・・フラクタル構造の中で、いったいどこに問題があり焦点を当てるべきかを明確にするための単位分け
チーム:5人
相互関連性の深いポジション別:ガード+センターのPnR
ポジション別:ガード、センター、フォワード
グループ:2on2、3on3
個
⑦戦術的疲労の法則・・・頭の疲労、メンタルの疲労、の要素を含むこと。
↑ここまで、「戦術的」に関する解釈
↓ここから、「ピリオダイゼーション」に関する解釈
「ピリオダイゼーション」とは何なのか
スポーツ全般で使われているトレーニング方法の1つ。
「区分け、期間分けをすること」という意味。
「ピリオダイズ」=期分けする
ピリオダイゼーションの定義:
試合の日に合わせて、シーズンをいくつかの期に分け、その期ごとに試合から逆算してトレーニングを組み立てること。
ピリオダイゼーションの目的:
試合から逆算して、量・強度・負荷を設定し、休みを設けることで、トレーニング効果の最大化と、けがや疲労のリスク低減をすること。
期分けの方法
期分けには、単位がある。
マクロサイクル・・・1シーズン。最も大きな全体の期間
メゾサイクル・・・1-2か月。季節などでトレーニング負荷が変わるため、そこに適応するためのもの。
マイクロサイクル・・・1週間。
スポーツにおけるピリオダイゼーションの歴史
(略。ピリオダイゼーション、と名の付くものだけでも、数種類ある。)
従来型ピリオダイゼーションから戦術的ピリオダイゼーションへ
サッカーは、身体と頭は切り離せない
⇔身体のコンディショニングだけでなく、頭も。(⇔判断⇔戦術的)
20分間でどれだけ走れるか<20分間でどれだけ頭と身体を使って走れるか
頭を使う→頭を使ったいいプレーの定義が必要→ゲームモデルが必要
「ゲームモデルに適応しているか、していないか」が大切。
一週間のサイクル:モルフォサイクル
2つの大切なこと
「ゲームモデル、プレー原則の習得」
「パフォーマンスレベルの維持」
パフォーマンスをピークに持ってくる、ではなく、維持、という視点。
なぜなら、一定期間ある長いシーズンで戦い抜く必要があるから。
80%を維持し続ける、が目標。
プレー原則の習得は、文字通り「習得」が目的なので、向上と改善が求められる。
「量が多い」「負荷が高い」「インテンシティが高い」とは、どういうことなのか?
「習得すべきプレー原則の量」
「集中しなければいけない時間の量」
「インテンシティー(密度)の高い練習の量」
重要視されるのは、相対的な最大のインテンシティー(密度)
→何かだけが高い。ではなく、全体を見て、最大となるように試みる
では、「負荷の調節」とは何を指すのだろうか?
"怪我になるギリギリ"と"簡単すぎて向上しない"のはざま。
怪我の防止 × パフォーマンスの最大化 × プレー原則の学習効率の最大化
のすべてを達成しにいく。
筋肉への負荷の種類
持続性=持久系
速さ=コンセントリックな筋発揮
テンション=エキセントリックな筋発揮
(ここはあまり、この用語や考え方をそのまま踏襲したいとは思えない…?あくまで参考に。)
モルフォサイクルの詳細
頭脳面も、体力面も、同様に考える。
どんな練習でも、原則に基づく内容にする。身体性よりも、ゲームモデルの習得に重きを置く。
ゲームモデルを習得する練習を、「コンディショニング向上」につながるように、統合して練り上げていく。
新しい練習・状況は、戦術的負荷が高い。
慣れている練習・状況は、戦術的負荷が低い。
遊び形式の練習は、心理的負荷が低い。
実戦形式(時間、ストレスも含めて)の練習は、心理的負荷が高い。
日曜:試合
月曜:オフ(身体と頭と心のリフレッシュ)
火曜:リカバリー(アクティブレスト)...新しいもの少な目。遊び要素で心理的負担も少なめ
水曜:テンション(エキセントリック)...切り替えを多くする。スモールサイドゲームなどは好適?
木曜:持続性 …試合から一番遠い日。一番試合に近い練習をしてよい日。
ただ、密度を下げすぎないために、時間を分割して、合計時間を試合に近づける、というアプローチもあり
金曜:速さ(コンセントリック)...速さを求める。相手への対応、"ゲームプラン"に基づく練習。
土曜:リカバリー...試合に向けた疲労回復×心身のスイッチを入れる日
日曜:試合
のサイクル。
インテグレーテッド・トレーニングとは別物なのか?
インテグレーテッドトレーニング...あらゆる練習に、ボールを使おう
戦ピリ…サッカーをうまくなろう。サッカーをしよう、
※やっていることは似ているが、目的は少し異なっている。
前半部、まとめ終えて
「戦術的」の解釈、整理は非常に役立つと感じた。
うまくなるってどういうことなのか?という切り口に大きなヒントをくれる内容だと思う。
「ピリオダイゼーション」の部分も、かなりわかりやすい。1週間のサイクル、フレームワークをくれるので、そこから現場の状況に合わせてアレンジしていく参考になる。
後半の構造化トレーニングは、今いろいろまとめているので、
またいずれ文章化したいと思います。
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