伝説って…

あらゆるものはそもそもの始まりは商業芸術であって、それが歳月にやらなんやらにさらされて商業部分が抜けていく中でいわゆる芸術となると信じている。有象無象がこぼれ落ちていく中で、本当の素晴らしいものだけが残るという感じではないだろうか?
もちろん間違っているだろう。
しかし、私の好きな音楽なんかではそうである気がしている。
the beatlesのyesterdayは、もう間違いなく芸術ではないだろうか?
イントロがなくいきなり始まり、しかもとても短い。
なんか無駄がない。
恐ろしいことに、すでに人気がある中で、つまり複数枚のレコーディングを経ているにも関わらず、生み出された曲なのである。
 
多くのロックバンドの名曲、もしくは最も売れた曲と言われるものは、総じて初期に出来上がったものだ。
これは、売れるまでの短くない期間にそれこそ推敲に推敲を重ねて完成された、とても研ぎ澄まされたものだからだと解釈している。
バンドの歴史という時間の中で、そのバンドの芸術となったものだ。

だからキャリアの途中で名曲と言われるものを作ることができるのは、本当の一部の才能だけなのではないか?
あのthe stone rosesも、ファンからすると名曲はsecond comingの中にもあるが、誰もが知る(!?)曲はthe stone rosesの中にしかない。
the kinksだって最も有名な曲はいろんな理由があるにせよyou really got meのはず。
あのthe smithsだって、誰もが知っているのはthis charming manかheaven knows i'm miserable nowだ。これはmorrisseyだってそのインタビューで語っている。

売れるとツアーとかに出て、手持ちの中の曲が切れる頃にはバンドの賞味期限も切れて、あまりパッとしなくなる。
そうしている間に、いろんなことによりバンドは解散してしまう。
それを考えると、続けるというのはとんでもないことで、それだけでthe rolling stonesはすごい。
メンバーが高齢で鬼籍に入ったのにまだ続けている。
しかも、自分たちでも驚いたというが、キャリアの中盤(というか、キャリアが長すぎて、デビューから20年弱経っている時点で前半1/3とか意味不明な状態なのだが)に自身たちの最大のヒット曲のうちの一つであるstart me upなんかを作ったのだから。
でも、それはたまたまの例外で、もちろん代表曲を言われるものはやはりキャリアの前半(しつこいが、この場合は本当の本当に初めの頃)に発表されたものだ。

これは最近話題になったoasisにも当てはまる。
彼らの代表曲はdon't look back in angerで間違いないが、この曲は確かデビューアルバムが完成する前にできていたと、昔noelがインタビューで語っていた。
こんなすごい曲をとっておいたのかと驚いた記憶がある。
今を去ること22年くらい前、日本でサッカーのワールドカップが開かれたとき、運よくenglandとdenmarkのチケットが手に入れることができた。
試合が終わり、バスの中はengland人と思しき人々が溢れていた。
denmarkに快勝したこともあり奴らはご機嫌だった。
そこで歌われた曲はやっぱりdon't look back in angerだった。
もちろんバスに乗り合わせた日本人もほとんどが歌っていた。
アメリカに留学していた時に口ずさんでいたら、ラボメイトに”なんでその曲歌えんの!?”と驚愕された。
そんな曲である。
武道館公演も行った。
アルバムが出る時には即日購入して聴いた。なんならレコード屋さんに予約した。
しかし、手持ち曲がなくなったと思しき3枚目以降は、それほどのインパクトを残した曲は見当たらない。つまり、誰もが歌えるという意味だ。

お金も名声もないから曲を作る以外やることがなくて、ひたすらスターダムを夢に見ながら、ひたすら磨き上げられた傑作。
そのようなものを生み出すだけですごいが、だからといって伝説と言われると、その時代とともに過ごした身としては、なんとなく違うよなと思ったりする。

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