人見知りの曲がり角①

先日11月23日に21歳となった。211歳まで生きたら11月23日211歳で1123211の回文になる。「21歳になって、何か変わった?何も変わってないか」と何人かに聞かれたので、それに対して自分なりに考えたことを書こうと思う。

今年は僕の誕生日に合わせて知り合いが泊りに来てくれた。普段一人暮らしの家のことは誇りに思っているが、人が来た時にはその狭さを申し訳なく感じてしまう。ただそんなことも年に数回なので大丈夫。人の心が読めないせいで友達ができないのに「どうせ人来ないだろ」と狭い家を選んだ自分が2年先まで読めていたことに気付き、たまに寂しくなる。
誕生日の日は祝日でポッドキャストの収録日だった。東京に住んでいる伊藤君と電話を繋いで収録する。知り合いにはポッドキャストがあるからと観光に行ってもらった。

束の間の一人時間でダラダラしていたらもう12時45分。13時から電話を繋ぐため、急いで歯磨きをしてパソコンをセットして、コップに水を注いでいざ始まる!その瞬間「ピンポーン」とインターホンが鳴った。大家さんかなと思って外を見るカメラを覗いくと誰もいない。そこで今日は誕生日だと気付き、誰かからプレゼントが届いたんだ!と嬉しくなって玄関まで行った。念のためドアを開ける前に覗き穴を見てみると、誰もいない。おかしい。インターホン押すプロ(なんだよその表現)つまり宅配便の人は絶対に見える位置に立つ。これはもしや素人か?いたずらなのか?と思って出るのをやめた。その瞬間また「ピンポーン」。やはり外には誰もいない。

その日は風が強かったので、風のせいで押されてしまっているのかもしれないと思った。もしくは強盗で姿を見られてはいけないから隠れているのかもしれない。ためしにインターホンの通話をオンにして「はい」「どなたですか?」「もしもし?」と語りかけてみるが、何も起こらない。やはり風だったか、収録に遅刻してしまうと通話を切ろうとした時、カチャカチャカチャカチャと小刻みに音が聞こえた。ドアの近くに行っても聞こえる。カチャカチャカチャカチャ。

怖すぎる!これはもう絶対に出てはいけない。知り合いが鍵を持たずに出ていったので、ドアの鍵は空いている。ヤバい。何回か通話に出て「もしもし?」と言いながら、バレないようにゆっくりと鍵を閉めた。危ない危ない。それにしても何て悪質なやつなんだ。ピンポンダッシュか犯罪か。パニックになりながら、鳴り止まない「ピンポーン」に戸惑って三度ドアを覗くと、アイツが立っていた。

驚いてそこら辺の記憶があまりないのだが、確かドアを開けると伊藤君がなだれ込んできた。一つの迷いも無く、綺麗に澄んだ、明るい笑顔。笑いながら「もう録ってるから(ポッドキャストの録音を開始している)」と連呼していた。あ、そういう企画なのかと思った時には遅く、犯罪者のカチャカチャ音にビビり倒していた僕は、サプライズにあまりよいリアクションを取れていなかった。

ここであることを思い出して僕はさらに真っ青に。ひとまず「部屋片付けるから待ってて」と言い残して、玄関と部屋の仕切りを閉めた。やばい、今日は知り合いが泊りに来ている。まず何も片付けずに出ていったやつの荷物を何とかしなくては。広げられたスーツケースに毛布をかけカモフラージュ。これで一安心。じゃないって!伊藤君のあの明るい表情は、今晩僕の家に泊まれることを確信した笑顔だ。

確かに僕も「京都来たら泊りに来て」と言ったことがある。というか知り合い全員にそう思っている。全然来ないけど。これはかなりマズい状態だ。まず、知り合いと伊藤君と僕の3人が泊まれるほど部屋が広くない。知り合いもそれをよしとするかわからない。泊まれなかった場合、あの一片の陰りもない笑顔に「あのお、今日は外に泊まってくれない?」と言えるわけがない。どうしよう。いや、取り敢えず今は収録だ。録音しながら玄関に付随した台所に置いてあるカップラーメンのゴミなんかを実況されたらたまったものではない。

伊藤君を招き入れ、1つしかない椅子に座ってもらった。2年前のお前よ、予想に反して今年の誕生日は椅子が3つ必要だ。じゃなくて、この事態を説明しなくては。状況を話すと、伊藤君は驚いて顔から表情が消えた後、少しも嫌な顔をせずにすぐ「ホテルを取るよ」と言った。いいやつだ。普段は思っていること駄々洩れなのに、そういう時の気の使い方は異常。それに関しては本当に申し訳なかった。また来てね。

その後すぐに収録。驚きが尾を引いて、終始浮ついていた。だが、僕にはこの収録を何としても成功させなければならない理由があった。   続く。

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